第85話 刺さった言葉と刺さらなかった言葉は相手にしか分からない
その後、ゲオ兄さん達から本当にそれで良いのか? とかアンタなんて信用出来ないわ! とか、おパンツおパンツ! とか色々言われたけど、国とか分からないんでパス、俺こっちの方が向いてるからって言って逃げてきました。
でエルメスさんも「リーダーの決定だ、我々はここを離れるから後は頼む」とか言って鬼凛々しい感じで颯爽退席。マジ誰こいつ状態。
まぁそんなこんなで会議とか面倒なのは全部向こうに任せてこっちはこっちでやる事がありますからね。って事で既にその場を離れて移動中。
「で、実際はどうなんだ?」
「実際? 何の事ですかねぇ」
「君は今の事態をどう見る?」
それにしてもエルメスさんに真面目に来られると何か逃げ切れない感じが凄い。まぁでも誤魔化しても仕方ないか。
「……多分、第三勢力が国を乗っ取ってそのまま魔族と戦争させる流れだったと思われ」
「……!? ……成る程、確かに一理ある。なら何が目的だと?」
「それを見抜くのが我々のミッション」
「成る程、そういう事か」
この人は理解も早いから話もしやすいし、この辺りの意思疎通が楽なのは本当に助かる。
ただ戦力としてはやはりパイセンやモモからは一段も二段も劣るから、王子を任せる大役は果たせない。故にこっち組みっていう。
「どれぐらいのタイミングでくると思う?」
「んー、まぁこっちが王子を王に立てる前には終わらせないと向こうも面倒だろうから、多分その辺りが線引きですかね」
「そうなるな。で、今はどこに向かっている?」
「知り合いのトコ」
向こうは向こうで任せて今のうちにやれる事はやっておこう。少しでも情報が欲しい。向こうに対してこっちだけが圧倒的に情報不足。今は俺やモモといった謎戦力のお陰でギリギリイーブンに保てているが、出来る努力を怠る訳にはいかない。命がかかってるから……当然ですよね。
「やっほー、入れてくれませんかね」
「どちら様でしょうか?」
「俺はアンダーソンなんだけど、通って良い?」
「困ります! 誰かの紹介ですか? 或いは予約や約束は……」
「特にないんだけど。カイナス氏に会いたくてですね」
「彼は今凄く忙しくて……」
「あ、これ貰ってたんだった。ほい」
「え、……!? 許可証……しかも署名がゲオルグ様……」
「通って良い?」
「し、失礼しました、どうぞ」
「ありやす」
友達だから良いよってなるかと思ったけど顔パスは無理でした。なので仕方なく念の為用意していたフリーパスを提示。ふはは、我の歩みを止められると思うたか! と心の中で言いながらペコペコと入室。
「おぉ!アンダーソン殿! これはこれは……いかな用ですかな? 拙者こう見えて今は多忙を極めておりまして……」
「あーその辺りで質問にね」
「ほう、この今の多忙に関係有りと?」
「そそ、まぁ大した事でもないんだけどさ。こいつら……どうだった?」
「……今、驚いている所でござる。まさかこの様な事になるとは」
「というと?」
「残り僅かな魔力を調べていたのですが、我々のそれとはどうも質が違いますな」
「質?」
「魔族のそれに似ていますが、やはりやや違う」
「……つまり?」
「そう、アレは反応の……」
「ダァァァァァ結論を教えろし!」
「ふむ、仕方ありませんな。結論から言って、この世界でまだ見た事のないタイプの魔力でござった」
「……それは帝国とかなんかそんなやつ?」
「いやいや、千狐殿のそれを間近で二度と見ましたが、殆ど拙者らのそれと変わらぬ魔力。帝国は無関係でござる」
「なら何なの?」
「……分かりませぬ」
「分からない?」
「新種、或いは……別の世界の……」
「!?」
「いや、飛躍し過ぎましたな。まだ分からぬ事か多いのでござる。そろそろ良いですかな?」
「……あぁ。またよろ」
「こちらも何かあれば情報を頼むでござる」
カイナス氏なら何か分かるかと思ってここまで来たが……まさかこれ程の内容とは。
新種ならまだいい。別の世界……あり得る。だって俺がここにいるのが良い証拠だから。
「なぁカイナス氏」
「何でござるか?」
「俺も調べてみない?」
「アンダーソン殿を?」
「そそ。ぶっちゃけ俺も異世界人なんだよね」
「な!? 何とそれは……! ではすぐにサンプルを……」
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結果、いくつかの新しい事実が判明した。
まず、俺の魔力の形もやはりこの世界の人の物とは少し違うらしい。その上で、新種の魔力のそれとも類似しなかった。
つまり地球人ではないって事。そこはまぁ良かった。
けど問題が……俺の魔力とその新種の魔力はあまり相性が良くないらしい。空間の断裂や空間固定はどうもこの魔力に対してはデフォルトで効かない事が判明。
違和感こそあれど、効果は発現しない。
つまり断裂では倒せない敵、という訳だ。
だが吸収は出来た。あの戦闘時にくらった風の刃っぽい何かは打ち消さずに吸収した。試しにそれをこの魔力にぶつけてみたら、それはダメージとしてちゃんと通った。
つまり、この魔力をもつ相手には空間干渉能力のみが効かない。そしてそれは一人ではなく、このタイプの魔力を保持する全ての存在に効かない様だ。
見た目で判別出来ない上に覚悟を決めて使っても効かないとかマジで心が折れますわ。
厄介過ぎ泣いた。