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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第三章【アーデンバイド王国編】
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第83話 色々諦めるとシンプルに纏まる

「へいへい皆の衆、唯一の接触者である我々の有り難い話を聞いて貰おうか」

「言い方が酷いわね」


 翌日、ひとまず全員で情報を共有しようと関係者に集合を募った。そしてこの場では俺パイセンモモが壇上に立ち、王子、ギルマス、サブマス、カイナス氏、エルメスさん、姉さん、あと国軍の偉い雰囲気の人がチラホラと集まった。


 国軍の偉い人は第三王子付きの人に限っておいた、色々と面倒だから。


「まず君たちは何者なんだ?」

「ふ、名乗る時は聞く側が先に……」

「こら! もうそうやってアンダーソンくんは……ゲオルク殿下に対してまでそんな風に……」

「噂通りの人物だ。構わないんだルナレシア」

「し、しかし……」

「でゅふふ、それ言い出したら俺ってばパイセンにもバリバリの敬語かつ十歩以上下がってハハーみたいな事になりますけど、その辺はどう思います?」

「気持ち悪いわね」

「言い過ぎワロタ」

「仲も良いみたいで何よりだ。私はそれで構わない。話を続けてくれ」


 サラッと器を示しつつも自己紹介はちゃんと俺にさせるあたり、頭の回転の速さが伺える。この人やり手タイプですわ。


「俺は流離(さすらい)のオタク、アンダーソン。つまりただの旅人で我ながら詳細不明。出身地は星よりも遠いところで、むしろ俺が星になった結果が今みたいな……まぁそれは良いとして。パイセンには良くして貰っていたので、ちょっと恩返しなうって感じですね」

「恩返しか、では見返りは要求しないと?」

「強いて言えば全部終わった後、放っておいて欲しいくらいですかねぇ……」

「放って置く?」

「地位も名声も金品もいらないから、普通に過ごせる日常を貰えたらそれで」

「……変わった人だね」

「すみません殿下、この人とても……変わってます」


 呆れ顔で謝るパイセン、いやー不本意ですねぇ。こんな素直な良いオタクなかなかいないと思うんですけどどこがダメだったのか、あはん。まぁいいか。


「そっちは?」

「私はゲオルク、第三王子という立ち位置ではあるがあまり気にしないでくれ。ルナレシアの様に接して、好きに呼んでくれ」

「ほぅ、どうやら貴方は俺と似ているらしい。敬意を込めてオタクの称号を……」

「似てないから」

「どうやらお互い変わり者ではあるみたいだな」

「ならゲオ兄さんで」

「君はアンダーソンだったね、よろしく頼む」

「もう頭が痛いわ……」


 俺とゲオ兄さんのやり取りを隣で聞いて突っ込みをくれるパイセンがうちひしがれている。戦いはまだまだこれからだというのに。


「ただ私の場合、君と違って地位は求めている。この国はもうダメだ」


 そこからゲオ兄さんによって語られたのはこの国の現状だった。


 いつからか国に不穏な分子が紛れ込み、権力者の中でも抱き込まれそうなタイプから次々に籠絡されていった。そしてその代表者が虚しくも長兄であったと。


 その辺りでトチ狂った長兄が次男を秘密裏に暗殺。のほほんと余生を過ごしてなんとなくダンジョンと擦った揉んだしている現国王も状況は危うく。国の勢力は今、ほぼ全て長兄が握っている。


 そんな中、次に邪魔になってくるのがゲオ兄さんだった訳だ。だがしかし兄さんはその手腕で国のギルドを大きく成長させ、また繋がりある貴族との連携でダンジョンに対する大きな象徴となっていた為、手が出しづらかったと。なのでダンジョン絡みで何となく謀殺出来れば超ハッピーみたいな。


 だがしかし、その繋がりある貴族に新戦力が加わった。パイセンだ。これ以上第三王子が力をつけては面倒だと判断した敵対勢力は、遂に実力行使で王子周辺を狙う決断を下したという訳。


 結果、手遅れでゲオ兄さんは既にパイセンにモモという魔王よろしくの戦力に守られており、止む無く街にまで手を出したが、それでも失敗。


 これは政治的に兄と全面戦争っすわ、って段階まできたらしい。マジでカオス。


「ここまで来ては噂もクソもない。俺はルナレシアとの婚約は破棄させてもらう」

「勿論です、元々形だけの繋がりでしたし……」

「すまなかったなルナレシア」

「え?」

「政治的な側面とはいえ、お前の人生に縛りをつくってしまっていた。許せ」

「そんな……そもそも貴族の娘に産まれた時点で、それは命運の様なものなので。むしろ選んで頂いて光栄でした」

「そう言ってもらえると私としても心が救われる。ありがとう」

「とんでもないです……」

「ソレイユ、こちらへ」

「あ、……はい」

「俺は改めて、ソレイユと婚約する。そして……そのまま婚姻の儀まで進めてしまおうと考えている。構わないか?」

「えっ!? いや、その……げ、ゲオルグ様……」

「すまなかった、待たせたなソレイユ。漸く、面と向かってこう言える時が来たというのに、やはりこんなゴタゴタした場面になってしまった。私はこんな男だ。それでも良いのか?」

「昔から……ずっとそうだったので。ふふ、私には……貴方しかいないと考えておりました。ずっと足手纏いな私で申し訳ありませんでした。これからは……」

「みなまで言うな、ありがとう。共に……歩もう」

「……はい!」


 感動的な空気に場が支配され、拍手が誰からとなく起こり、それは大きなうねりと共に爆発的に広がる。部屋の中全てが……二人を祝福する様に。


 俺以外が。


「はーい、じゃあまぁそれは良いとしましてですね」

「ちょ!? アンダーソンくん!?」


 二人の近くに歩みを進め、注目を集める。いやいや、話はここからでしょうに。何ハッピーエンドちゃんちゃん、で終わろうとしてる訳?


 まだスタートラインの手前ですけどこれ。


「ではここで改めて、作戦を確認します。まぁつまりこれはアレですよアレ。なんだかんだあって最終的にゲオ兄さんと姉さんをこの国のトップにしちゃったら丸く収まるんじゃね作戦って事ですよこれ」

「なっ!?」


 そう、もう腐りきった体制を変えるにはこれしかない。


「さーて、そろそろ……この茶番を畳みますか!」

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