第8話 低階層の抜け道を通ったらそこは別世界でした
【B8】
「さて、次行ってみよー」
「ちょっと待ちなさい! 何でラージミノタウロスが倒せてるのよ……あいつは確かレベル50は無いと勝てない魔物の筈よ」
倒れたミノを眺めつつ呆然とするパイセンを置き去りに次へとポンポン進むが、別にパイセンに問題がある訳じゃない。
普通に飯も持たずに来た事に危機感を覚えているだけだ。
まさかそんなね、ダンジョン入ります、なんか迷路がありまして、ボスがいてドカーン、クリアだぜ! みたいな想像してたのに【100階だけど何か文句ある?】みたいなノリで来られたら食料が余裕でもたないっしょ。手ぶらで来たっつーの。
「いい加減教えなさいよ! 貴方何でこんなに強いの!?」
「んー寧ろさ、ちょっと色々聞いていい?」
「……え? な、何よ」
押しに弱いパイセンに逆に質問して封殺する。パイセンマジ単純かわゆす、じゃなくて。今まで何となく流してたけど、結局まだ色々分からない事だらけで収集がついていないんだよね。この際だし一つずつ聞いてみるか。
「あのさ、レベルっていくつまであんの?」
「え? 確か……理屈では999までは伸びるって話だけど……限界の確認は聞いた事ないし、した事もないわね」
「カンスト遠過ぎワロタ」
あれ? そうなるとレベル158ってどんなもんなの? 俺TSUEEEEEテラ最強ぷぎゃぁぁぁとかしてたら「舐めてんの?」って誰かにワンパンで沈められる可能性が微レ存? 寧ろ結構あるの? ヤバくね?
「後は……パイセンが使ってた魔法みたいなのって何?」
「一定の修行を経て、才能があればその属性がつくの。後は敵を倒したりして使っていけばレベルが上がるわ。大抵は一人一つね」
「パイセンのファイヤードリルも?」
「フレイムランスは火属性レベル5で習得出来るわ」
「ふむふむ」
ナチュラルに会話が継続出来るようになってきたのは完全にパイセンが俺に適応してくれているからです本当にありがとうございます。しかし属性とかあるのね、俺も学習出来るのかな?
「因みにパイセンはレベルいくつなの?」
「私? レベル17よ」
「それって世間的にはどんなもん?」
「大体大人の冒険者でレベル30くらいね」
「ならパイセンの年でそれだとめっちゃ強いじゃん」
「……私なんてまだまだよ」
冒険者ってのがまだ謎単語だけど、大人で30の所を17まで既に詰めてるならパイセンは頑張り屋さんなんだな。もう半分超えてんじゃん。
「あ、レベルってどうやったら上がる?」
「そんなの魔物を倒したら上がるじゃない」
「ならパイセンが斬った奴を俺が横取りしたらどうなる?」
「その時は貴方のレベルに反映されるわ」
「共有は出来ない訳?」
「……パーティも知らないの?」
おっとー、この程度の知識も知らない雑魚勢的な奴きちゃいました、危ない危ない。やっぱ質問しだすと新出単語が多いみたい。パイセンから学んでおかないと他で困りそうだな。
「パーティについて説明おねしゃす」
「組みたい相手と握手した状態で【パーティ・オン】って言えば組めるでしょ?」
「パイセン、手」
「え?」
「パーティ・オンザマイケル!」
「何言ってるの?」
パイセンがおもむろに出した手を掴み、そのままパーティ化。こういうのは気付いた時点でガンガン使わないといざって時に困りますからね。ゲーマー的にはじょーしきですしおすし。
「……で、何が変わったんですかね」
「ステータスに表示されてるでしょ?」
「ステータスオープンザマイケル!」
「何言ってるの?」
さて、これでステータスが出て来まして……。
名前:アンダーソン
称号:神に選ばれしオタクガチ勢
レベル:158
HP:8769
MP:2789
筋力:8753
敏捷:8963
耐久:8921
精神:8716
魔力:8073
スキル
【真・物体移動改改】
パーティオン
【ルナレシア:レベル17】
お、この項目か……え? やべ、レベル表記されてんじゃん。いやんパイセンにバレちゃう。
「え、アンダーソンくん?」
というか普通に横から見られてましたテヘペロ。
まぁどうせバレてましたし。
「レベル……158!?」
「ちょっと上がっちゃったのよウッフン」
「待って、受け入れられなくて頭が……」
クラクラするフリをするパイセンを無視して取り敢えず質問を継続する。
「魔物を倒してレベルに反映されるまでの時間って、二人で組んでたら半分になるって認識でいいのか?」
「そ、そうね。本来得られるそれを半分にしたものがそれぞれに反映されるわ」
よーし、ならこれでパイセンを養殖体制に入った訳だ。どーせこれ以上にはなかなか上がらないし、それならパイセンの生存率が上がる方を優先したい。
「そしたら次いきますか。お、階段みーつけた」
「待ちなさいよ! どーしてこんな……あ! ちょっと、置いていかないでよ!」
パタパタと後ろから付いてくるパイセンの気配を背中で感じつつ、俺たちは階段を下った。
______
「ミノが二体に増えててワロタ」
「……瞬殺だったわね」
階段を降りるとそこにはすぐ近くにミノさんが両サイドにスタンバッておられましてですね。あれ初見殺しにも程があるだろ。避けるにはある程度のレベル差がないとここで死ぬだろうな。ダンジョンまじやべぇ。
あ、そうそう。
「ステータスオープンザマイケル!」
名前:アンダーソン
称号:神に選ばれしオタクガチ勢
レベル:158
HP:8769
MP:2789
筋力:8753
敏捷:8963
耐久:8921
精神:8716
魔力:8073
スキル
【真・物体移動改改】
パーティ
【ルナレシア:レベル48】
おぉ、流石養殖。
きっちり上がってて安心したわ。
「なぁパイセン、さっき大人の冒険者でレベル30って言ってたよな?」
「え? あぁ、そうね。それがどうしたの?」
「ここの敵ってどうなの?」
なんか普通にレベル50くらいとか言ってたのが二体とかポンポン出てくるけど、これどうなの?にしては大人でレベル30とか言ってたし。
「……ここは異常ね。最初からゴブリンが十二体いたでしょ?」
「いましたね」
「普通は一体から始まるそうよ」
「……え、つまり難易度十二倍?」
何それ、中途半端すぐる。
「感覚がマヒしてくるけど、どれも本でしか見た事のない魔物ばかりね」
「って事はここがおかしいのか、最高の養殖場じゃん」
「ようしょ……?」
「パイセン、レベル48になってたよおめでとう」
「うっそ!?」
パイセンが慌てて自身のステータスを確認し、本当だ……とか言いながら唖然としておられる。まぁでもこの分だとまだまだ上がるっしょ。……ん?何か進行方向とは別の方向から変な気配が……。
「パイセン、次10階じゃん?」
「え? そ、そうね」
「何か特別なイベントとかあるの?」
「固定階層ボスがいるって聞いているわ、今までのやつより手強いかもしれないわね」
「ふーん。で、別の道とかってあるの?」
「……別の道?」
「そそ。多分ここ真っ直ぐじゃん?」
「そうね、真っ直ぐいけば10階に行けると思うわ」
「でさ、あっちに多分道があるんだけど」
「え?」
そう、左の壁面。一見岩しかないように見えるのだが、気配で辿るとその先何かいるのが分かる。道があるのが分かったというより、何かいるのに気付いた後に道があった、という感じだ。
「本当だ、確かにここも通れそう」
「よーし、こっちだな」
「待ちなさい、ダメよ」
「ワッツ?」
パイセンが俺の服を掴んで離そうとしない。何なんですかパイセン、羽織を引っ張られるとフンドシが見えるんでやめて頂けませんかね。
「こういうイレギュラーにはとんでもないものが待っているのが通説よ」
「そうなの?」
「とは言え、殆ど生還者がいない、という報告しか上がってこないから中に何があるのかは……ちょっと!? 待ちなさいよ!」
「ま、何とかなるっしょ」
折角きたんだし、多分こっちなんじゃね?
よく分かんないけどそんな気がする。
進んでいくとそこには真っ赤な階段が。
しかもなんかギラギラに光ってるんですけど。
ちょっとヤバそうですね。
……うーん、どうしよう。