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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第三章【アーデンバイド王国編】
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第74話 誰だ貴様!? で名乗ったら三流

「さてさて、終わりましたよザーボンさん」

「……もう君が何を言ってるのか理解出来ないよ」

「でゅふふ、俺もよく分かりません」

「まぁいい、兎に角……敵はこれで全滅だね。恐ろしい奴だ、一人で国を落とせるんじゃないのか?」

「損しかしない事して何か意味あんの?」

「なら得を見出さない事を願うよ」


 片手で敵軍を全滅させた俺は悠々と仲間の元へと帰還。ギリギリの戦いだったぜ。


「さて、俺はもうスタミナ的に死にかけなんで、トットとダンジョン蹴散らして帰りましょうか」

「その状態で踏破されては、ダンジョンも形無しだな」

「まぁ元々予定通りで……?」


 ん? なんだ? 妙な気配が……?


「アンダーソン君も気付いた?」

「って事はモモも? パイセンは?」

「感じるわ、何かいるわね」


 うん? 何だこの気配?

 一体どこから……あ。


「あれか。空中だわ」

「空!? 成る程、通りで……」

「みーつけた!」


 見つけた気配に意識を寄せる。……かなり強くね? 何なのあいつ。あ、気付いた事に気付かれた。


「逃げたな」

「逃げたのかな? 街の方に向かったね」

「気味が悪いわね……」

「私も話に混ぜて貰えないか? 状況がまるで分からないんだが……」


 うーん、何だったんだ? 直感がこの件を無視するなとアラートを鳴らす。これはお気楽なままじゃマズいヤツだ。やれやれ、余り頭は使いたくないんだけどな……仕方ない。


 思考を前へと進める。


 この件の関係者? だとしたら……あんな実力者が何を? 決まってる。味方サイドなら名が売れてる筈だ、そうじゃないなら……敵サイドか。


 なら……このスタンピードは意図的な? 理由は?

 国を滅ぼす? 違う、それだと中途半端だ。


 誰かの信用の失墜? ギルド? 王子?

 それとも……貴族、例えばシードレプグルス家?


 仮に国を立て直す側を失墜、だが国は滅ぼさない。

 やや矛盾する。

 クズ王家による緩やかな滅亡を?

 なら……国そのものの乗っ取り?

 他国、組織レベルの介入もあるな。

 人でない可能性すらある。


 成る程、見逃せない。

 あれは放置できないタイプのフラグだ。

 しかも……かなり危険なヤツだな。


 危なかった、俺たちを侮って距離をとって確認しにきたんだろうが、あれがなかったら気付かなかった。どうやら感覚は俺たちの方が優れていたみたいだな。でもそれはもう敵に割れてしまった。


 つまり今の選択肢として。


 暗躍する謎の存在へのレジスタンスと目の前のダンジョン問題、この二つにこの戦力を割かなければならない。


 敵はまだ大きくは動かないだろう、特に今は失敗直後。こういう時は動けば動く程失敗する。あのレベルの敵なら余計な動きはしないだろう。


 なら……護衛で十分か。対象は王子と姉さん。ん? 待てよ……この二人が消えると流れ的にまずい。敵がミスを帳消しにすべく、対処するために移動してたとしたら? ……表立ってた姉さんが危ない。


「やべぇ、ちょっと行ってくるわ。すぐ戻る」

「え? ちょっと、アンダーソ……」

「パイセンは俺と一緒に」

「キャッ! ちょっ……」


 俺は瞬間移動を発動し、すぐさま街へと帰還する。どうせダンジョンは俺がいないと帰りの時間で大きくロスが出る。俺はダンジョン組だ。けどここで先手を取られたら……取り返しがつかない。


 街に戻ったはいいが現在地不明。なので。


「キャッ!? 何!? なんなの!?」


 パイセンをお姫様抱っこ。そしてそのまま屋根を伝って一番高い建物の上へ。


「建物の上に出るからパイセンは姉さん探して!」

「……! 居たわ! あそこ!」

「よし……!? やべぇこれは……ちと姉さん頼むわ、シャッフルゲート!」

「ちょっ!?」


 分かってる、今この技を使ったらパイセンは屋根の上に落とされて尻もち確定だ。しかも姉さんがチェンジされてくる。そうなると……グシャってるだろうなぁ。


 でもまぁさーせん、余裕ねぇんだわ。俺の目の前には既にマントを全身に被った謎の覆面マンがやべぇ状態でスタンバッておられますから。ふぅ、間一髪だったな。


「おや? 貴方はどちら様で? 何故ここに? おかしいですね、見間違いましたか?」

「おパンツ」

「……会話の通じないタイプの方でしたか」

「貴方はどちら様で? 何故ここに?」

「……ふふ、煽るのがお上手な様で」


 乗ってこないか。かなりヤバイなー。うーん、断裂でスパっとやるにしても……人はなぁ……。この期に及んでアレなんですけどね、正直ね。


 ……怖い。殺すのはやっぱ無理っすわ。


「令嬢はどちらに?」

「言うと思ってんの? あんた誰?」

「言うとお思いですか?」


 うーむ、かなりやり手だなぁ。

 とりま捕まえて持ち帰ってから考えるか。


幻夢之檻(ディメンションプリズン)


 敵が……沈黙する。


 これは敵を周りの空間ごと固定して対象の時を止める荒技。ちょっと無茶してるけど、これくらいの相手ならそうも言ってられないし。あとはこれをシャッフルゲートで空間チェンジしながら運ぶしか……!?


「何なのですか今のは?」


 なっ!? 空間固定をレジスト!?


「ん? 何かあった?」

「……惚けても無駄ですよ」


 狐と狸の化かし合いか。


「ととと惚けてねーしバーロー。そっちこそ魔力無効化的な能力? 道具? 良いの持ってるねアンタ」

「何のことですかね」

「バレバレですよオバさん」

「誰がオ……チッ」


 ふーん、女性ね。しかも妙齢か。


「まぁ良いでしょう、今日は引きます。貴方とはまた……会いそうですね」

「ノーセンキュー」

「ではご機嫌よう」


 それだけ言い残すと、そのまま敵は街中へと姿を消してしまった。まさか空間固定がレジストされるとは……ぬかった。


 どうにかして捕まえておくべきだったのに。

 ……何だったんだアレ?

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