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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第三章【アーデンバイド王国編】
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第73話 心の目でしか見えないモノがある

「おぉ! 本当にすぐにまた会ったでござるなアンダーソンどの!」

「お久しぶりーふ」

「そんな殺生な、昨日も会ってたでござる。何やら伝言によりますと拙者に用があるとかなんとか。珍しいですな、間違いないでござるか?」

「そそ、まぁちょっとギブアンドテイクで」

「何をギブして拙者はテイクすれば良いのでござるか?」

「今度ちょっと一緒に来てもらいたい場所があってさ、その協力願い」

「ふむ、アンダーソン殿の頼みとあらばそれもやぶさかではありませぬが、何をギブして頂けるのですかな?」

「実はこの子が帝国時代の生きた化石なんですよね」

『誰が化石やねん』

「!!? なななな何ですと!?? そ、そんな……いや、確かにかの御仁は拙者の召喚魔法に対して、近しいレベルのイレギュラーな力を発揮しておられた……まさか……」

「共に作戦行動中はこの子とお喋りする権利を得る代わりに、ここぞの場面で召喚魔法を借りたい訳」


 これぞテイク&テイクの関係。

 こっちはリスクゼロ。


「願ったり叶ったりでござる。問答の末に、我が身を持って古代魔法に触れられるのなら本望中の本望。拙者に出来る事ならなんなりと」


 そして向こうはギブの二乗。

 完璧な利害関係っすわ。


「オッケー、そしたらスタンピード的なサムシングがタワワになったら東門の外側でこんにちは、って流れでよろしゃす」

「スタンピード中に外側とな。ふむ、不可解ではありますが……しかし古代への興味には代えられませんな。了解でござる」


 カイナス氏の所在はギランさんに聞いていたので訪ねた所、取り次いでもらえてすぐに会える事に。要件も済ませて、これはこれでオッケー。


 パイセンへの説明も済んだ事だし、後はのんびり待ちますか。


「そういやパイセン、カイナス氏の事は知らなかった訳?」

「存在は知ってたの、でも殆ど国にいないって話で顔までは分からなくて。あの人がそうだったのね」

「にゃるぽ」


 まぁ確かにあっちにこっちにプラプラしてますからね。ヤンキーにぶっ飛ばされたり檻に入れられてたり。本当は凄い人とか言われても、今更そんな目線では見れませんわ、無理ぽ。


「よーし、そしたら部屋に戻って寛ぎますか。パイセンはどうすんの?」

「私も行きたい……けど家に帰らないと」

「お家があるなら仕方ないよねー」

「ま、じゃあ騒ぎになったら集合って事で。パイセンの家の前までダッシュで行くから、パイセンはダッシュで出てきてよろしく。あとは姉さんに擦り合わせ頼める?」

「分かった、伝えておくわね」

「よーし、ならこんなものかな」

「ねぇアンダーソンくん、もしこの作戦が上手く終わったら……その後は……」

「ダァァァストップストーーップ!」

「えっ?」


 ヒュー危ねぇ……。

 なんつー爆弾を放り込むのこの子。

 危うくフラグが立つところだったぜ。


「それはまた今度な、別に危険がある話な訳でもないし」

「……そうね、ごめんなさい。目の前の事に集中するわね!」


 何とかフラグを立てずに状況をキープ。

 セフセーフ。



 

 ______





 そしてなんだかんだ数日後。

 のんびり昼飯を食べていた時に、それは遂に街中に鳴り響いた。


「出たぞォォスタンピードだ! 配置につけぇぇ!」


 バタバタと状況が慌ただしくなっていく。

 街並みは途端に滅茶苦茶に。


「きたみたいだな、準備はいいか? リーダー」

「ま、準備もクソもないですからねぇ。仕込みは雑に済ませてますしおすし」

「余裕だな、今回も実に楽しみだ」

「私はどーすればいい?」

「取り敢えず同行で、ここで凍らせたら多分名残りのせいで環境がヤベェ事になりそうだから俺がやりますわ」

『今回は相当広範囲やで? いけんのかいな?』

「まぁなんとかなるっしょ」

「ふふ、こんなワクワクは本当に久しいというのに近頃楽しみばかりだ! さぁ行こうじゃないか!」

「そしたらまずはパイセンのトコか、さてさて回収しに行きますか」


 パイセンの家は前に聞いてるし、それに今回は前まででいいからサッと行ってスッと合流すれば問題ない。あとは姉さんの号令待ちって訳。


「お、いたいた」

「待たせちゃった?」

「俺らも今来たとこだからへーき。準備オケ?」

「いつでもいけるわ!」


 この間の小綺麗な格好ではなく、見慣れた戦闘スタイルで現れたパイセン。うん、やっぱこっちの方がしっくりきますわ。


 次は東門の辺りで……お、いたいた。


「おーい、アンダーソンどのー!」

「取り敢えずはこれで揃ったか、千狐さん相手よろしゃす」

『ワイもそんな覚えとらんで?』

「素晴らしい……まさか当時を生きた存在がこうして目の前に……。どうやって今日まで過ごしたのでござるか? 長生きですなぁ」

『いや、封印されとったんや。800年ほど箱に入れられててな、アンディに見つけられるまでは自力で出れんから、気付いたら今っちゅー訳や」

「封印!? ばば場所はどちらで? はわわこんなにスラスラと未知の情報が手に入るとは……」


 こっちはこんなもんか。後は場所を敵の見える位置に移動しておいて姉さんの号令待ち。敵は……うへぇ、結構多いなぁ。なんか凄い砂煙上がってるわ。奥に向かってどんだけいるのこれ。


「パイセンいつもあれと一人で?」

「あれは流石に私も無理ね、いつもはもっと少なかったわ」

「まぁでもお疲れ様。後は俺らも協力するから、パパッと終わらせましょうぜ」

「……結局こうなっちゃったわね。私が何とかしたかったのに……ごめんなさ」

「マイケルオンザヘッド!」

「あぅ!?」

「パイセンを助けるのとか当たり前じゃん? 飯食ったらうんこ出るっしょ? それと同じ」

「……例えが酷いわね」


 そんな余裕な我々とは裏腹に、遥か彼方からこちらに向かって進む土煙の量に街がとんでもないガヤガヤに包まれている。


 おい、大丈夫なんだろうな!?

 貴様本当にこれでいいのか!?

 どこにいるんだその例の戦力は!?

 おい、責任者は誰だ!?

 おパンツ!!

 あはんもう漏れちゃう!!


 みたいな。偉い人っぽいのが口々にそんな感じで責任転嫁を楽しんでおられる。何ゲームなんですかねアレ、お約束過ぎて見るに耐えませんわ。失敗したら全部ソレイユ姉さんと、それを推した王子のせいっていうね。


 お、姉さんが出てきました!


「待たせたな皆の者! 私はー」


 なんやかんやと演説されておられるけれども割愛。貴族的な奴は別にどうでもいいですからね。さて、ここから話の展開が……。


「この未曾有の危機を防ぐべく、私は長い旅を続けてきました。そう、それは今まさにこの時の為に! 出なさい! 我が配下よ!」


 ふむ、流石に上手く纏めてきましたねぇ。

 成る程それなら上手く話が進みそうだ。


「さて出番だ、行きますか。準備オケ?」

「おー!」

「シャッフルゲート」


 俺たちは東門からある程度離れた、その砂煙が舞う戦場に近い場所へとワープ。俺がこの件に関して、事前にした唯一の準備。それがシャッフルゲートで入れ替える地点の設定と、そこに少しだけ目立つ物を置いておくという事。その目印と場所を入れ替える事で大幅ワープ。


「おぉ……これはまた面妖な。アンダーソン殿の能力でござるか?」

「そそ、んじゃカイナス氏よろぴこ」

「ササ、千狐殿。拙者の肩に!」

『ほな失礼』


 カイナス氏から召喚に関しては事前に話を聞いている。命令式やその可動領域、そういったものを一切指定しない、動かない土人形の作成の場合。更に十倍は同時召喚可能との事。確かに普段の能力を考えれば動かない兵隊(小)が十体作れた所で知れている。


 だが今は……ハッタリにはなりますよね。


『いくで?』

「よ、よろしく頼むでごごごぁぁぁぁキタキタキタァァァァござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」


 とんでもない規模に展開された魔法陣から、人のサイズの砂人形が……千体規模で出現。まるで国を守るかのように陣を敷く。


 遠目にみたら多分急に兵士が出現した様にしか見えませんよねこれ。君のお陰だよカイナス氏。めっちゃピクピクしながら地面に倒れてますけどね。


「後ろが凄い歓声に包まれてるな、流石にこんな光景を見せられては仕方あるまい。私も現場にいてもなお目を疑う光景だ」

「凄いねー! 人形がいっぱい!」

『心持ち控えといたから、まぁあの兄ちゃんはすぐ動ける様になると思うわ』

「控えてこれとは恐れ入る。……とは言えこれは人形だ。パフォーマンスなのだろ?」

「イエス」

「ならアレを倒す手段はどうするんだリーダー」

「あれ? 今回は慌てないんですねエルメスさん」

「ふ、最早その様なことが不毛な事は身を持って体験済みだ。君が私をこんな身体に……」

「やめなさい」

「にしてもどうするんだい?」

『そろそろヤバイでアレ』


 眼前に迫る大量の魔物たち。その数、測定不能。


 でもまぁ、測定する意味もないですしね。


「そしたらみんなちょっと下がってて」

「了解だ、大丈夫なんだろうな?」

「まぁ見てなって」


 今回は凄い規模がアレだからなー、ある程度みんなから離れる様に前に進む。ま、こんなもんか。右手を……静かに魔物の群れへと向ける。


古竜地獄炎(エンシェントヘルフレイム)


 瞬間、あの時吸収した古龍(エンシェントドラゴン)の炎が右手からとんでもない勢いで吹き出した。


「ギャァァァァァァ!!」

「キャァァァァァァ!!」

「うわーすごーい!」

『あー、そういうアレか』


 背中に三者三様の反応を感じながらも、尚止まらない大火炎。


 その炎が尽きた時。


 その場に立っていた魔物は、一匹もいなかった。


「ふ、闇の炎に抱かれて消えろ」



 決まった!(ドヤァ)

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