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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第三章【アーデンバイド王国編】
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第69話 道無き道を進むやつがいる

「姉さんの馬車、めちゃくちゃ滑らかに走っててウケる」

「貴方達の馬車……荷馬車じゃない」

「そうなの? 安かったからさ」

「誰かに相談すれば良かったのに」

「魔王に相談しましたね」

「どういうスケールの話なの? 馬車の話で魔王?」


 ソレイユ姉さんと馬車を走らせながら一路王国を目指すアンダーソン一行。姉さんの馬車は妙に揺れも少なく、乗り心地最高なので乗せてもらっている。因みにこっちの運転手がカイナス氏です。どうも王国を目指してたっぽくて結局同行。


「これはツイてるでござる。よろしくお頼み申す」


 などと言われてしまい、村の護衛生成の折の恩を返すべく、断れず……くっころ。


 あと我らが元々使っていた馬車はエルメスさんが運転しつつ、後ろではモモが千狐さんベットでオヤスミ中。べ、別に気まずくてこっちに逃げて来た訳じゃないんだからね!


「王国ってまだかかります?」

「大分近付いてる筈よ。でもこの先で少し遠回りをするからまだちょっとかかるわね」

「遠回り?」

「どうしてもね。現在地と王国の丁度間に谷があるの」

「ふむふむ」

「橋はかかってるけど、どうしてもそこからしか渡れない上に馬車では危険なのよ。だから少し様子を伺いながら進路をとる予定よ」

「にゃるぽ。結構タイムロス?」

「そうね、それなりに」

「なら進路は何とかするから直進しておいて貰えれば」

「えっ」

「まっすぐ行きましょ、早い方がいいっしょ?」

「え、えぇ……分かったわ」

「王国は大丈夫な訳? 噂では今の所大丈夫っぽいって聞いてるけど」

「大分悪化してるみたいね、最近は時々すごい量の魔物が出てきて、防衛にもかなりの経費を割いてるらしいわ」

「モンスターパレードでしたっけ?」

「スタンピードよ」

「それそれ」


 成る程成る程。もうこれダンジョン早目に何とかした方が良くね? 多分パイセンが動いてるとは思うけどさ。パイセンあんまり広い範囲の戦闘は得意じゃないからなぁ。タイマンなら楽勝なのに。


「因みにダンジョンの位置はどの辺りに?」

「ここから王国を挟んで逆側ね」

「なら道中は問題ないか」


 ここに至るまで、姉さんの昔話を少し聞かせて貰った。どうも貴族的なしがらみと状況の悪化が絡んで、政治的な側面からもかなり危険が多かったらしく、また身を守る術もなくで、姉さんの両親のツテで村長マリアに頼み込み留学という名の避難をしていたと。


 村長マリアの村は特別な村だそうで、魔物が近寄り難く出来ているとかなんとか。でも近くに強大なダンジョンが出現した事で四天王に見つかり、あわや滅びの道を行くかと思ったが、迷子のオタクがそれを解決。あまつさえ妹を魔王よろしくのレベルまで向上させ、それを見て自分がいかに停滞していたかを思い知り、居ても立っても居られなくなったと。


 で、パイセンの帰還を待たずに、自分に出来る事をと出発したとか何とか。


 気持ちは分かるけど無謀と言わざるを得ない。……いや、分かるなんてそんな軽々しくは言えないか。そこは当事者以外は所詮部外者。重みの本当の所には届かないのかもしれない。


 俺ってばそういう重いとか、マジな奴とか、ずっと逃げ続けてきたヘタレですから。何を言う資格もありませんわ。


「ここまでして貰って……本当に申し訳ないわ」

「それは言いっこなしでおねしゃす」

「でも……食事も護衛も、今回は命まで……」

「ならやっとこれで少しは返せましたかねぇ」

「……え?」

「パイセンには命を救って貰った上に、この現状も与えて貰ってるんで。心根のシナシナな俺に、シャキッとしたモノを沢山くれたんすよ。パイセンはどこまでいっても俺の恩人なんで」

「……そっか、そんな風に妹を褒められると嬉しいわね」

「本当の事ですからね」

「アンダーソンどのー、前の様子がおかしいでござる。崖でござる」

「直進で」

「拙者も直進したいのでござるが、どうも道が」

「ん、なら運転代わるわ」

「頼むでござる」


 カイナスから手綱を受け取る俺。様子を伺う姉さんとカイナス。目の前にはそれなりに横幅も深さもある立派な谷が。一応チラッと見てみたが後ろに続く馬車に変化は見られない。エルメスさんは躊躇なく俺を信じてくれている。うむ、問題ない。直進で。


「ねぇ……ど、どうするの?」

「え? 直進で」

「いやいやいや、ダメよ、ほら、もうそこまで来てるのよ!?」

「いやだから直進で」

「出来ないから言ってるのよ!? 道が! あっダメだって!! 落ち……」

「なーい」

「……あれ? 落ちないわね。何なのよもう……」

「これはまた珍妙な……流石アンダーソンどのでごさるなぁ、拙者に負けず劣らずでござる」

「いやいや余裕で負けてますから、カイナス氏に勝つとか困るからやめて貰えませんかね」

「いやー照れるでござる」

「褒めてないから」

「どういう状況なのよコレ……」


 たった一人の良識人が逆に置いてきぼりで申し訳ないんですけど、他の全員は普通とかすっかり忘れてしまってるヤベェメンバーですからココ。


 諦メロン。

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