第68話 厄災は突然訪れる
「作戦だったのね。ふざけてるのかと思ってかなり疑って見てたわ、ごめんなさい」
「一体何をしてたんだい? 敵を挑発していたのは分かったが、そこからがまるで分からない。敵の能力を無効化していた?」
「うーん、まぁそんなとこかな」
自身の中に蓄えられた土魔法を感じるに、多分これだけあれば余裕でいけると判断。さて、みんな助けて帰りますか。
「ちょっと離れてて、今扉作るから」
「え?」
ゴゴゴという音と共に土を動かし、人の気配のある場所に扉を作る。
「君は本当に非常識な男だ。この為だったのか」
「理解が追いつかないわね」
作られた扉の向こうに……光が射し込む。
「ヒィ!? ヤダ……イヤ……来ないで……」
中には……怯えている村人の女性が。そりゃこんな出口のない暗い場所に監禁されたら……怖いよな。
「脅かしてゴメンな。俺さ、村長に頼まれてアンタらを助けに来たんだわ。もう大丈夫だから」
「……え? そ、村長に……?」
「そそ、ゲルティナって言えば信じてくれるって村長に頼まれた」
「!? あぁ……本当に助けに……ありがとうございます……」
「……ごめん、順番に助けるからこの人たちはソレイユ姉さん頼めます?」
「任せて、それくらいは私にも出来るわ。丁度何か手伝いたくてウズウズしてた所よ」
そんなこんなで順調に村人を解放。その途中の牢にモモチコペアも居ましたが。モモさんが倒れて気絶している! まさか!
「うーん、むにゃむにゃ……」
『すまん、普通に寝とるだけや』
だと思った。あり得ませんからね。
むしろこっちの方がよっぽど自然だわ。
そして更に順調に解放し、その人数が十人を超えようという時。奴が現れた。そう、奴が。
「おや、食事でござるか?」
「……」
俺は……静かに穴を塞ぎ、再びそれを封印する。
うむ、何も見なかった。何も見なかったのさ。
「どうしたのでござるか? なぜ閉じるのでござる、拙者そろそろ腹ペコでござる」
やべぇ……これ絶対アレだわ。
何でこんなトコにいるんだよ……。
______
「お久しぶりでござるアンダーソン殿。連れられている女性がまるで変わっておられますな。好色で何よりです」
「何ハワユみたいな勢いでディスってんの? 何してんの? 趣味? 趣味なの? 埋まりたいならまた埋めるけど?」
「拙者もよく分からないのでござる。とある村に立ち寄って、気がついたら暗闇。取り敢えず人の声もするので食事を待つ事早二日。そろそろ空腹でごさる」
「他に危機感ない訳? えっと……名前は……マインクラッシャーさんでしたっけ?」
「カイナスでござる、惜しいですな」
「カインクラッシャーさんはこの後どちらへ?」
「お腹が空いたでござる」
「ふむ、では埋めましょうか」
「この二人の会話がまるで理解出来ないわね……」
取り敢えず村人は気配の限り全て解放。なんとか土魔法がストックされてるうちに済ませる事が出来たので難なくクリア。
その後現れた自称盗賊の頭さんはモモに下半身を氷漬けにされた上で森に捨てられた。哀れなり。
「さて、帰りますか。忘れ物ない?」
「ピクニックじゃあるまいしある訳ないでしょ?」
「ならソレイユ姉さんはその人たちよろしこ」
「任せなさい、最後まで責任を持ってやらせて貰うわ」
どうしていいか分からないカイナスもひとまず同行して村へと帰還する。
まぁ……とりま何事もなく済んで良かったかな。
______
「ま、まさか……そんな……!?」
「村長!!」
「お主ら……良かった……本当に良かった……」
村人たちは村長と無事に再開。この場でやり残した事も特にない。気がかりなのは……盗賊の再犯くらいか。こればかりは……な。ここにずっといる訳にもいかないし。
「ねーねー終わったらもう行くの?」
「ま、ここでの用は済みましたし、ソレイユ姉さんも救えましたし、ミッションコンプリート。そう言えば姉さんに付き人とかは居なかった訳?」
「護衛は雇ったけど……」
「まぁ、仕方ないか。それが仕事といえば仕事な訳で、それ込みで護衛ですからね」
「私が軽率だったせいで……」
「……その後は?」
「残念だけど、もう何かに食べられてると思うわ」
「なら墓だけでもこの地に作っていきますか。それくらいしか出来る事ないっしょ?」
「……そうね、ありがと」
「世話は村長に頼むか、まがいなりにも村の恩人な訳だし」
「そうね、私から頼んでおくわ」
まぁ護衛は……多分死んだのだろう。厳しいようだけど、やっぱ護衛は守ってこその護衛。任務遂行しきれなかった形になってるけどさ、この通りソレイユ姉さんはピンピンしてるから。名も知らぬ護衛さん、仲間の姉さんを助けてくれてありがとう、後は俺が代わるから安心して眠ってくれ。
「あとは……この村が気がかかりね」
「まぁ関わっちゃいましたからねぇ。とは言ってもこればかりは……」
「酷なようだが、どこもそんなものだ」
「ですよね」
盗賊の奴らが再犯に及ぶ可能性は高い。遅かれ早かれ、いつかまた来るだろう。そうなったら……今度こそこの村は終わりだ。やりきれないが……手段もない。
「何か忘れ物でござるか?」
「忘れ物ってか、この村がさ。また盗賊に狙われたらって考えるとちょっとね」
「何とかすればいいでござる」
「無理だっつの。出来たら苦労……ん? まさか……何とか出来る訳?」
「この村を守る者がいれば良いのでござろう?」
まさかこいつ……村に残る気か!
「さっさと済ませて立とうではありませんか」
「行っちゃうのかよ。何なの? 自らを持ち上げて落とすスタイルなの? 何がしたい訳?」
「拙者の魔の力は少し変わっているのでござる。ではご覧あれ……!!」
まさかこいつ……これは!! 地面に謎の魔法陣が現れ、そこから……土の召喚獣が!!
「召喚師……だと?」
「ふ、拙者、それしか能がありません故」
「何この人テライケメン」
「いでよ、ガーディアン!!」
そしてそこより産まれて出たのは……!! 千狐さんより小さいミニマム兵隊さんでした。ちっせぇ……。いや、まだね、可能性はね。
「もしやこいつ強いの?」
「野犬くらいなら時間稼ぎにはなるでしょう」
「馬鹿なの死ぬの? これがここにあって何の意味がある訳?」
「拙者、これしか能がありません故」
「イケメンどこいったよイケメン」
「拙者に出来る限りをさせて頂いた次第にござる。因みに命令すれば遂行してくれる機能もあるのでござる」
いや、気持ちは嬉しいよ? とはいえ、野犬に負ける兵隊人形の存在意義よ。なくね?
『なんや懐かし気配やな、昔こんな能力を持ったやつがおった様な……はて、ワイも記憶がなんやあやふややわ』
「どしたの千狐さん」
『まぁええわ、よっと』
「わわ、何でござるか?」
千狐さんがカイナスの肩に?
何すんの千狐さん。
『ワイは土の能力やと、少量を生み出し操る事と、能力者自身の力を引き出す事が出来るんや』
「ん? 引き出す? まさか千狐さん、カイナスの能力を……」
『せや、底上げする。それならいけるんちゃうか? カイナスっちゅーたか? さっきのヤツ、もっかいやってみてくれへんか?』
「……? よく分からないでござるが、了解でござる」
そう言って、カイナスは再び魔法陣を展開す……いやいや。魔法陣大きすぎますから。
「ここここれは!?」
バチバチと辺りに魔力風が巻き起こり、明らかにさっきとは異質の雰囲気を醸し出す魔法陣。あー、これきっとヤベェやつだ。
「ご、ござるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
天を仰ぎ発狂するカイナス、青白く輝く千狐さん。
そして地面からは……馬に乗った黒砂の暗黒騎士が召喚された。サイズ感は……俺の倍以上のサイズ。
「驚いたな……この召喚獣、私と互角くらいじゃないのか?」
そう呟くのはエルメスさん。村の護衛にエルメスさん級が残る? それならまぁ……村は大丈夫ですかね。
カイナスは白目向きながら凄い格好でヒクヒクしておられるが、まぁ大丈夫だろう。
『ま、こんなもんやろ』
えげつないですね千狐さん、でも超助かりました。
これで気兼ねなく出発できそうだわ。
良かった良かった。
ござる氏の説明クドくしたくないのでカットカット&カットしてたら謎の存在に。
・カイナス(♂)
中性的な見た目、声をしているが普通に男。
・土魔法系召喚術
兵隊(Lv2)を作り出す
作り出した兵隊はその場に残り、以降命令が無ければ消える事なく与えられた命令を守り続ける。
・千狐さんとペア時
最大値Lv100を分散する兵隊を作り出す。
(Lv1を100体〜Lv100を1体まで)
千狐さんは能力を引き出すだけなので、カイナス氏が潜在的に能力を持っていたが持ち腐れていた状態。つまり皆に同じ事が出来るわけではない。魔力全快に十日かかる。
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そして、もしもよろしければ!
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