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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第ニ章【ほのぼのダンジョンライフ】
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第64話 磁石はS極もN極も持っている

「おやエルメスさん、帰って……」

「寄るな下郎!? さては貴様この鞄の中身が……」

「もちつけ」

「おっとそうだった、いやすまない。ちょっと今殺気立っててね、遠慮してくれないか?」

「……みたいだね、失礼するよ」


 その後、あまり変な噂が立つのもアレかと思って瞬間移動にて三十階のコカトリス階へと帰還。勿論その時もエルメスさんは、


「なっ!? 移動した!? ここは……三十階か? そんな馬鹿な……君は一体……」


 とか言って返答を欲しそうにしてましたけど無視しました。でも仮に俺が無視したとしても「君は本当にいつも私を焦らすね……」とか言いながら都合良く解釈してくれるのでもうなんかどんどん適当な扱いになっていくけど多分仕方ない。


 そしてそのままダンジョンを抜けて通常ルートで帰還する。前と違って今回はエルメスさんがいたからショートカットし過ぎるのもアレかなという判断だ。


 因みに行きに瞬間移動を使わなかったのは、言わずもがなエルメスさんの為だ。なんかこのダンジョンに対してめちゃくちゃ努力してたみたいだし、エンシェントどーんだけでは余りにも酷いかなと。


「さて、無事に帰還できた訳だが……まずは一言、言わせてくれ。本っっっ当にありがとう!!」


 そしてエルメスさんの所有する家に無事に帰還し、荷物を置いてやれやれという段階。


「まぁ別にこれくらい……な?」

「だねー、私たちも楽しかったよ! それにお肉も楽しみなんだよ!」

「それなんだよそれ!!」


 そう食い気味に話すエルメスさんは自身の鞄から(エンシェント)お肉を取り出す。明るい所で見たらめちゃくちゃ綺麗なお肉。うーん、でもなんか妙に赤身が少な過ぎる様な……。


「これは多分……血管や筋肉の質のせいか。ここは恐らく赤身に近い部分だと思うんだが、白いな。ちょっとここを良く見ててくれ」

「ん?」


 そう言って肉を食べやすいブロックサイズに切り分ける。うーん、つまりどういう事?


「分かるだろ? この白い部分は、恐らく脂身ではない。なんて良質な肉なんだ……」


 終始落ち着いている様に見えるエルメスさんだが見れば分かる。100%目がイッてる。これはもうヤバイ奴ですわ……。身構えておこう、巻き込まれるのは勘弁ですから。


「さぁ……焼くぞ……」

「焼こー!」


 熱された鉄板の上に並べられる四枚の肉。その一つ一つが殆ど煙も上げる事なく、脂を撒き散らす事もせず、ただ色を付けた。こんがりとした綺麗な焼き色を。クッソ美味そう。


「こ、こんな匂い……ハァ……ハァ……」


 あぁ……もうあれはヤバイやつだ。多分ヤバイやつだアレ。気が気じゃなさすぎてあまり肉の印象が入ってこない。肉よりエルメスさんがヤバイ。もう怖い。


「これで良いだろう……各自皿に取ってくれ」


 一見、落ち着いている。

 けど……多分あれは……。


「さぁ……食べるぞ……ゴクリ……」

「食べよー!」


 まずはモモと千狐さんが躊躇わずに肉を口へと運ぶ。


「美味しーー! 何これーー!」

『うっま、あかんやんこれ……』

「ハァ……ハァ……」


 そしていつもの素敵な笑顔を披露、だがそれも入ってこない。こっちが気になり過ぎて……。


「ハァ……食べるぞ……ハァハァ、よし、食べるぞ……」


 意を決した様に、肉をゆっくりと持ち上げ、まずは匂いをクンクンする。ゾクゾクとした恍惚の表情を見せるも、肉を持つ手は決して緩めない。そして遂に肉を口に……入れた。


「……ッッッ!?!!?!!!!?!!!」


 瞬間、悲鳴にもならない様な奇声を放ちながら凡ゆる場所から液体を撒き散らし、エルメスさんはその場に沈んだ。これは……死んだな。乙。


 ……ふぅ、よし。大丈夫だったな。

 部屋を移して俺も食べるか。




 ______





「さて、肉も食ったしそろそろ行きますか」

「だねー、次はどこに行こっか?」

『適当には行きたないからな、どうする?』

「パイセンのいる王国の方面をのんびり目指しますか」

「そうだね、それなら何かあっても駆けつけられるし! そうしよっか!」


 特に大きな荷物もない俺たちは、部屋を静かに移動して食を楽しみ、そしてそのまま部屋を後にした。


 多分あの家には危険な変死態が存在しているだろうけど、まぁ大丈夫だろう。タイミング的にも丁度いいし。



 あいつはもうダメだ、捨てていこう。



 エルメス亭を出て、ひとまず宿に預けていた馬を回収すべく宿を目指す。そして世話代を支払い、馬車を用意。


 さて出発だ。目指すは……ん?

 どこだっけ?


「どこ目指すんだっけ?」

「んー分かんない!」

『アーデンバイド王国や、何で忘れとんねん』

「ナイス千狐さん! 俺たちが忘れちまってる事を平然と覚えてる、そこに痺れる憧れるぅぅぅ」

『因みに確か八岐大蛇ダンジョンの町からの方が近い筈や、そこまで移動するか?』

「ん、そうしよっか。あんま無駄な時間使うのもアレだし。そしたらまずは……」

「ちょっと待ったァァァァ!!」


 んなっ!?

 ま、まさかこの声は……!!?


「置いていこうったってそうはいかないよ!」


 速い……!? なんて速さだ、読み誤った……!


「あ、向こうになんか謎肉落ちてましたよ?」

「ふ、その手は食わん! どうせ妙な移動術ですぐに消える魂胆なのだろうけど、その前に私をパーティに入れて貰うぞ!!」

「ノーセンキュー」

「こ、この場面でもまだ……、な、なら……」

「家畜も要りませんから」

「ぐっ……」


 良いぞ、もう一押しだ!


「分かったなら諦めて下さい、ではアディオスグッバイ」

「……ふふ」

「!?」

「……君がそこまで言うなら私にも考えがある」

「えぇ……一体何を……」

「ふふ、ハハハハハハハハハ馬車馬よ! そこを代われぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「うわぁぁぁぁ分かったから!! おいマジで馬を逃がそうとすんなし! ちょ、分かったから!! 本当にヤバ……あ、馬ァァァァァァァァ」


 こうして我がパーティにとんでもない美食エルフが加わってしまいました。


 うん、折を見てどこかに捨てよう。

 素直に危険すぐる。

くっそ……どうやっても捨てれるイメージがわかなかった……。2章を1話延長させられた……。

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