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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第ニ章【ほのぼのダンジョンライフ】
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第60話 自分の価値を自分で語り出したら終わり

「もう少し舐めさせて貰ってもいいかな?」

「ダメ絶対」

「頼む、何なら君にも得がある様にきも……」

「やめなさい」


 恍惚の表情を浮かべながら尚もせまりくるエルメスさんを宥めつつ肉を鞄に収納していく。


「そういえばさっき別ルートみたいな事言ってましたけど、あれって割とあるものなんですか?」

「あぁ、ダンジョンの話だね。指と交換で教えよう」

「なら結構です、これにて失礼」

「別ルートはどこのダンジョンにも存在するとされているが、いかんせん発見が困難で見つからないケースが殆どだ。グルメダンジョンなど特に力を入れて調べてある。私は全ての階の壁を調べたが、百階までの部屋にそれらしき場所は見当たらなかった。あるとすればダンジョンボスの部屋くらいか……まさか!?」

「いや、多分あれ三十か四十くらいだったよな?」

「あまり覚えてないよねー」

「なんかニワトリみたいなトカゲの……」

「コカトリスか! 三十階の階層ボスだ! そこに一体何が……」

「これ以上は何かと交換でなければ話せませんねぇ」

「ぐっ、余計な駆け引きを持ち掛けてすまない……」

「あれは普通には無理だよな? モモ」

「無理だねー、あんな事普通しないよねー」


 モモさんマジ鬼がかってましたから。


「私が君たちに差出せるとしたら金か……或いは……いや、里は流石に売れない。だが他は……最早私の身体如きでは追いつかない……」

「そんなスケールの話でしたっけ?」


 この人の中でこの話の重要度どんだけなの?


「ど、どうすれば……」

「まず部屋凍らせたんだよな」

「だねー」

「部屋を凍らせ……? 部屋?」

「そうそう、階層ごと全部」

「どうやって?」

「この子が一発で」

「私がやりました!」

「い、一発で? どんな規模で放てばそんな……」

「テオラゾーマでドーン」

「テオラゾーマ!? 第六界級だと? 君が?」

「そうだよ!」


 目を見開いて口を半開きのままフリーズするエルメスさん。やっぱあれおかしい技だったんですね。みんなポンポン使うから基準が分かりませんから。


「で、その後地面に向けて熱を加えたら、地面が砕けましてですね」

「そんな特性が!? どうりで見落とす訳だ」


 まぁ普通に行ったらあんな事にはなりませんよね。


「そ、その先にはどんな……」

「オルトロスとか120レベル以上の魔物がウヨウヨしてる感じの」

「何だって!? ボスは……ボスはどうしたんだい?」

「え? ボスは残して来ましたけど?」

「え? 何故ボスを……強かったのかい? いや、まさかあの言い伝えが?」

「え? 倒すとダンジョンって消えるんでそ?」

「正規ルートだとそうだね。けどそれ以外のルートは倒してもダンジョンには影響しないから問題ないはずだ」

「デジマ?」


 あれ? そうなの? ならあのまま倒しても良かったって事か。あーついでにバコンとやっちゃえば良かったな。


「流石に君たちでも難しかったか……」

「えっと、まぁそんな感じで。何かご存知っぽい?」

「この街にある古い言い伝えさ」

「言い伝え?」

「あぁ、こんなやつさ。【かのダンジョンには(いきにえ)のドラゴンが眠り、その凶暴な炎は全てを焼き払い、いかな屈強な者であってもその場に存在する事を許されない】とね」

「何それ怖い」

「まぁただのお伽話さ。ここじゃ言う事を聞かない子供は怖い竜に食べられるぞ、と叱って学ばせる習わしすらあるんだ」

「成る程納得」


 まぁまだ居ると決まった訳じゃないですしね。それにもうどーでもいいし。肉も最低限切ってもらって、塩焼きで良いならまぁ出来るし。そろそろこの場をお暇させて貰いますか。


「さて、俺たちは用も済んだし……」

「待ってくれ」


 ガシっと、エルメスさんに掴まれる。いやん。


「私も同行……」

「ノーセンキュー」

「くぅ……何て事だ……まさか二度も断られるなんて……」


 何頬を赤らめてんの? 馬鹿なの?

 馬鹿でしたね。


「いやいや、エルメスさんなら他にもパーティ組みたい放題っしょ? そっち行けば良いじゃないですか」

「どこに行っても軟弱な奴らばかりでね、多少マシなのもこの街にはいるが、あまり好きになれなくてさ」

「へー、エルメスさんが食よりも優先する程に?」

「いやいや、そもそもこれくらいのダンジョンなら一人でも危険は少ない。それ以上に、雌として危険を覚える奴らでね。私とてそう安く売っている訳ではないのだよ」


 いやいや、ゲロ安売りしまくっておいてそれはちょっと通りませんねぇ。というか強い奴いるんじゃん。


「エルメスさんでも敵わないような奴らがこの街にいるんでそ? それでいいじゃん」

「一対一なら負けないさ、でも向こうは男で三人組だからね。組み伏せられると流石に私も抵抗むなしく慰みモノさ」

「ならそいつらと是非裏ルートを……」

「待ってくれ」


 ガシっと、エルメスさんに逆の腕も掴まれる。あ、これ知ってる。無限ループパターンのやつですね分かります。


「君ほどの男に蹂躙されるなら私も本望だ」

「何言ってんのこの人馬鹿なの死ぬの?」

「だがあの程度の徒党を組まねば雌一匹御せない様な軟弱どもにくれてやる様な安い身体ではない」

「もしもしもっこり、聞いてんのこの人?」

「それに話を聞くに、恐らく裏ルートに入れば奴らは役に立つまい」

「あ、そうなんですね。では俺みたいな軟弱オタクはこれにてドロンさせて頂き……」

「逃がさないよ?」


 あ、ダメだこれ、獲物を捕食する肉食獣の目だ。テレビで見た事あるサバンナの奴だわこれ。


 どうするのインパランダーソン。食べられるの?

 予定調和で食べられちゃうの?

 無理無理、走りますから命の限り。

 命のインパラダッシュ見せますから。


「頼む、私と一緒にダンジョンに潜って貰えないか?」


 エルメスさんは俺から両手を離すと華麗に土下座を決めた。くっ……そうきたか……。


「君たちしか居ないんだ、私一人じゃ無理なんだ……。金でも何でも、私に用意できるモノなら全て差し出す。だから今回だけ、頼む……」


 はいインパラ死にました。そうきます? もう勘弁してくれよ……これ一番避けにくいタイプの攻め方ですから。くっ……無理だ。これ系は断るのは……。


「私を家畜としてダンジョンに連れて行ってはくれないか!?」

「普通に行きましょう」


 はい、ダンジョン再突入決定。

 なんなのこれ。

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