第52話 さよならは夕日と共にがお約束
その後も探索を続け、ひとまず当面の食料を確保。一体から出てくる肉塊のサイズが明らかに一食分ではないので、そこまでの滞在は必要なかったのは幸いだった。
多分これ一つだけでめちゃくちゃ保ちますから。何キロあるの? ってやつから20キロ超えてるんじゃね? みたいなものまでドロップし、食料としては十分に確保したと判断出来たので帰還する事に。
「妾は半分持った状態で一旦離脱するが、それで構わぬか?」
「また合流出来る証って事で! ルムちゃんが戻るの待ってるよ!」
「ふふ、ならば遠慮なく持ち帰らせて貰おう」
「さーて、そしたら取り敢えず……パイセンのいた村に戻るけど、それでオケ?」
「良いのかしら、私は助かるけど……」
「妾はどこからでも問題ない」
「私たちはまたアンダーソンくんに運んで貰えば良いだけだから問題ないよ!」
「……そうね、ならお願いしてもいい?」
「ん、了解」
その後の探索で階層ボスらしき存在もいたので、そこから九階層を攻略し、次のステージを確認に行ったルムたんが、【ここまでかの】と判断を下したのでダンジョン探索は無事に終了。
攻略するとまた戦犯扱いにされるので、ここでキッチリ終えておこう。
「忘れ物はないかね皆の衆?」
「……まるで旅行のようじゃな」
「まぁ似たようなもんじゃね?」
「やれやれ、このメンバーには常識は通用せんか」
「ルムたんがそれ言っちゃう?」
全員の合意を得た時点で俺はスキルを発動させた。
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「本当に特異な能力じゃのう。何故ダンジョン探索の最深部から目的地までがものの数秒なのじゃ」
「いつもの事ですしおすし」
着いた先はいつもの村、……名前も知らないけどまぁ多分マリア村的なサムシング。
「さて、全員で村長んとこ行く?」
「……いいえ、私だけで大丈夫よ」
軽く俯きながらパイセンがそう言葉を放った。どこか決意にも似た何かを感じる言葉に、全員が黙って紡がれる次の言葉を待った。
「でないと、決心が鈍りそうなの。みんなには十分甘えさせて貰ったわ。私……頑張るから。みんなも気をつけてね?」
「そっか! ルナちゃんも気を付けて! いつでも頼っていいんだよ?」
「スキル的には一度行ったところにしか飛べないからさ、一応行き先だけ聞いておいて大丈夫?」
「そうね、行き先は【アーデンバイド王国】。多分誰かに聞けば場所はすぐに分かると思うわ」
「ん、了解」
全員がその名を心に刻んだ所でパイセンはパーティを離れた……と見せかけて戻ってきた。あ、これお約束のアレか。パイセンが……抱き着いてきました。はい。
「アンダーソンくん……、ありがとね」
「……、こちらこそ。最初に会えたのがパイセンじゃなかったら俺多分すぐ死んでたと思うし。少しは恩は返せたっぽい?」
「十分よ、それどころか……私の方が貰い過ぎね。力も自信も、迷わない心も、ちょっと馬鹿っぽい所も」
「最後ディスりませんでした?」
「全部含めて、私には足りてなかった。考え過ぎて結局行動しないのが私だったから」
「ま、俺は考えなしに動いてたかんね」
「そうね、驚く事ばかりだったわ。でも……こんなに変われた。全部貴方のお陰よ?」
「そりゃ言い過ぎっすよパイセン」
「ふふ、ありがと……アンダーソンくん」
ギュッとする腕に力を込めたかと思うと、すぐに脱力し、俺からスッと離れるパイセン。ちょっと泣いてる? 気のせいかな。
「じゃあね、みんな!」
そう言ってパイセンはパーティから離脱した。うーん、やっぱ寂しいね。パイセンとはずっと一緒だったからなぁ。でもあの子にはあの子のやるべき事があって、お呼びでないなら出しゃばる訳にもいかない。
まぁ、また会えるさ。ご縁が……あれば。