第48話 文化祭の準備中、二人で居残りになっただけで恋に落ちる男の単純さについて
【?階】
「うわー、顔が二つあるね!」
「オルトロスね、あれも適正は120くらいだっだと思うわ」
「もう面倒じゃ、アンダーソン」
「ん、断裂」
階をひとつずつ進め、その度にドロップされる食材をカバンへと詰め込んでいく。もうこれ夢のカバンですから。食材の宝石箱やぁ……ってこれマジでどうすんのってレベルの肉だらけ。正直ここまでくると俺もかなり楽しみになっている。
何せあの時のお祭り会場みたいなトコで食べたのが低階層の食材で、あの美味さ。ならこいつなら……ゴクリ。みたいなね。超楽しみ。
「相変わらずエゲツない技じゃのう」
「うわー真っ二つだね」
因みにオルトロスさんは俺の断裂によって縦に二つに分けられている。右と左にそれぞれワントロス。恐らく視認すらせずに逝かれましたわ。マジさーせん。
「消えよったな……うむ、これがオルトロスの肉か。赤身系じゃな。これもまた美味そうな……」
「早く食べてみたいね!」
そう、このパーティには実は料理担当がいない。こういう時さり気なく料理が出来る主人公スキルが発動するのがこういう流れの鉄板なのだが、俺はガチオタなのでマジで筋肉を愛でる事しか出来ない。
「ルナ……そろそろ代わろうよ?」
「も、もうちょっと……」
あれからパイセンは俺に抱っこされっぱなしだ。大人しくて暴れたりしないからスキルも使えるけど、圧倒的に俺とパイセンの口数が少ない。
理由は簡単、バクバクだから。無理。
「ねぇルナ?」
「あと五分……」
そんな寝起きじゃないんですから。まだ起きたくないよーと言わんばかりに俺に抱きつく腕の力を少し強めてくるパイセン。ギュッとされている。
「これ凄く落ち着くの……」
「本当? なら次は私もそれにしようかな!」
待って、何でこうなった?
この流れいつまで続くの?
「はーい、交代ね!」
「うぅ、仕方ないわね。ありがと、アンダーソンくん」
「あ、や、どういたしまして」
「私のばーん!」
「どわっ!? ちょっと危ないからモモ!」
「あはは! だってその方がしっかり受け止めてくれるじゃん!」
「……え?」
ゆっくりライドオンしてくれたパイセンの時は丁寧にポジションを取る事に成功したのだが……。
今俺の手はモモの腰の辺りを……!?
「うわぁぁちちちゃうねんこれあれやねんわいやないねんわいは無実やねんうわぁぁぁ!?」
『誰のマネやねん……』
「もーアンダーソンくんのエッチ」
「ここここれは不可抗力だから寧ろなんか狙われてましたから無実ですからぁぁぁ」
は、ハメられた! なんという巧妙な罠。
アンダーソン、一撃粉砕。
というかもう全壊全壊&全壊でナウだから逆にタフネスっていうか、もう流れに身を任せてるっていうか。
オタクに耐え得る状況じゃないですからこれ。
「アンダーソンくんの顔が近い!」
「え……あ……あの……」
「目の前だね! えへっ」
「え、えへっ?」
抱っこで向かい合う俺とモモ。多分俺の笑顔だけ引きつっててキモい事になってる事間違いなし。
あれ、これってもしかしてファンタジーなの?
ギャグカテから恋愛カテに移籍出来ちゃうの?
いや無理ですから、恋愛にキレられるわ。
さーせん。