第44話 先人の言葉は為になる
こちらアンダーソン。現在落下中。
真っ暗なのでいつ地面が来てもおかしくない環境にヒヤヒヤしつつも順調に落下しております。
「ルムたん大丈夫か!」
「大丈夫じゃ、妾は赤くなどなっとらん!」
「え、そこ?」
流石魔王、ピンチ時のタフネスも一級品ですわ。でもこれ自分を空間固定したりしてもどうせ落下は免れないから、地面を作る気持ちで固定するか? 瓦礫が危ないか……。
「余計な事を言うでないわ! 妾は赤くなどなっとらん! 良く見るのじゃ!」
「ちょ、落ちてるから! それやってる場合じゃないから!」
「やかましい! 話を逸らすでない!」
「逸らしてるのルムたんですからぁぁぁ!!」
まさかの味方の裏切り。やべぇルムたんに詰め寄られて落下中で固定も出来ないってこれヤバイから!
取り敢えず……!!
「ルムたん分かったから話聞くからちょっとじっとして!」
「漸く聞く気に……待て待て!」
「これで良し」
「何のつもりじゃ!」
ふぅ、何とかルムたんをお姫様抱っこ。これなら地面の気配を感じてからの対応でも間に合いますよね。
「で、何の話だったっけ?」
「わ、妾は……あ、赤くなど……」
なってますから、現在進行形で。
「な、なぜこのような……」
「危ないじゃん?」
「魔王を庇う馬鹿がどこにおるのじゃ……」
「ここにいますけど?」
「……お主はいつもそれじゃのぅ」
魔王魔王っていうけど、こういう場面で肩書きとか関係なくね? むしろ馬鹿な魔王のお茶目でこうなってるんですけどね。
「もう諦めるとするかの、着地は任せたぞアンダーソン」
「ん、了解」
そして二人は順調に落下する。
……順調すぎませんか?
_____
「……そろそろか」
「じゃのう、割と長かった様に思うが」
「相当長かったでしょコレ」
落下中でかなり意識が集中しているので正確に過ぎた時間は分からないが、かなり落ちている気がする。いやどう考えても落ちてますわ。
「よっと、ルムたん無事?」
「妾は何ともない、魔王を気遣い過ぎじゃ」
「え、魔王とか気遣ってませんけど?」
「……失礼なやつじゃな」
「ルムたんを気遣ってるんですけど?」
「……!!? そ、そういうのをじゃな……いや、その……」
やべぇルムたんの扱いが段々と分かって来たコレ。見てこのモジモジしながら頬を赤らめて、我が腕の中で俯く200歳のロリババアを。マジ至高なんですけど。
「えぇい! いい加減下ろさんか!」
「おっと、そいつはさーせん」
「それよりさっきから気になっておったのじゃが」
「あー、それは任せて」
落下して辿り着いた先のこのフロアにいた敵は既に断裂済み。割と距離が近かったから念の為ね。
「こいつら何なのか分かる?」
「……すまんあまり詳しくないのじゃ」
「パイセンがいないと辛いか」
ぱっと見だが、かなり強くなっている様に思う。どれくらい落とされたんだ?
一体どうやってパイセンたちと合流すれば……!?
「キャァァァァァ!!」
すわぁーん、みたいな、間抜けな着地音と共に……パイセンとモモが落ちて来ましたね。馬鹿なの? 因みに着地音が間抜けだったのは千狐さんの砂をクッションにノーダメージ着地をかなり早い段階から試みていた様で、砂塗れではあるが怪我はなさそう。千狐さんマジ万能。
『何しとんねんな二人とも、こないな所ではぐれたら危ないやろ?』
「ルムたん怒られてますよ?」
「……面目ないのじゃ」
「んもー気をつけろし」
『何で素知らぬふりで人事を装ってるんやアンディ』
「ぐぇぇ……なんで俺だけ首絞め……」
『あんな魔法発動中の場面でルムを煽ってからに、半分は誰のせいや?』
「あ、アンダーソンでごさいます」
『ホンマに危なかったんやからな、普通のパーティやったら全滅案件やでこれ。みんな強いからって油断して、何かあってからでは遅いで?』
「……まぁ確かに。意識は相当低かったか……ありがとな千狐さん」
『まぁ分かって貰えればそれで十分や。それより今はこれからの事やな』
千狐さんの年の功で有難いお言葉を賜った所で改めて周りを見渡す。
普通にフロアを数回層飛ばして進行した感じなのですかね。さて、まずは……パイセンとモモさんに謝りに行きますか。
やっちまったぜ。