第43話 ストーリーを飛ばして進行すると、前のイベントは意外としょぼい
「で、これが噂のダンジョン? どの辺りがダンジョン?」
「全てダンジョンじゃ」
「そう言う意味じゃありませんからねルムたん」
辿り着いたグルメダンジョン、その入り口。そこは禍々しくも凶悪な雰囲気を……一切はなっていない何とも言えない場所でした。
そう、商店が整列してる。
帰ってきた冒険者から食材を仕入れるべく待ち構える商人によって、ダンジョンの出入り口がめちゃくちゃ賑やかな事にされてしまっている。もうこれダンジョンっていうか、お祭りのアトラクションですから。
「おや! 兄ちゃん達も挑戦者かい?」
「え、あー、そっすね」
「なら帰ってきたらあそこのあっちの店に来てくれないか? 高く買わせて貰うぜ?」
「え、あ、ざーっす」
「兄ちゃん! こっちこっち! 帰りはうちに頼むな!」
「ざーっす」
「おーい兄ちゃん!」
「ーっす!」
「兄ちゃーん!」
「すぅー!」
「おーい兄……」
「ダァァァもうアンタみたいな弟知らねーよ! なんなの? 俺はいつの間にここの兄貴的存在に昇格した訳?」
「「「兄ちゃーん!」」」
これ何なんだよマジで。何人声かけて来るの? ってくらいの勢いで滅茶苦茶声をかけられるんですけどマジ勘弁。新規だ参加者から早目に囲えってか? テラ面倒。どっかに抜け道とかない訳?
……ん? なんか向こうが賑やかだな。
と言うかめっちゃ騒がしいな。
何あれ、何かいんの?
「ま、まさかこんな所で!?」
「美食ハンターのエルメスさんだ!」
「うぉぉこりゃ明日の帰還時は戦争だな!」
「遂に彼女がこの街にも来てくれたのか! ワシは始めてだ!」
「まさか彼女のいる日に居合わせるなんて……なんてついてるんだ!」
「しかしどうもダンジョンには潜らないらしい」
「コネクションだけでも十分だ!」
誰かいるっぽい? よし顔を……とはなりませんからね。イベントさんどんまい、余裕でスルーっすわ。こちとら基本コミュ障でこのメンバー以外とかノーセンキューですから。むしろ逆にこれチャンスと捉えてさっさと行ってシマウマ。放置安定。
「何かあっちが目立ってるから今のうちにに行かない? 俺ちょっとお兄ちゃん卒業するわ」
「そうじゃな、さっさと行くとするか」
「美食ハンターって何なのかしら?」
「美味しそうな人だね!」
「その人は食べれませんからね?」
「ぶー食べたりしないよ! 食べてるのをシェアするんだよ!」
「ぶんどっててワロタ」
向こうが騒がしいうちにこれ幸いとダンジョンへと滑り込む我ら魔王一行。それにしてもうちのパーティの見た感じの弱さ半端ないっすね。何この雑魚軍団。もやしみたいなオタクを筆頭に幼女二人と小動物連れた女の子とか、誰も興味ないっしょ。
何か向こうが騒がしいのも手伝って、スムーズにダンジョンインっすわ。やれやれ、今回くらいはのんびりダンジョン攻略といきたいところ。
グルメダンジョンか、こりゃ楽しみだ。
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【B1】
「めちゃくちゃ混雑しててワロタ」
「これは……まぁ仕方ないんじゃろな」
入り口を抜けて最初のエンカウントポイント。そこには湧き待ち軍団が大量に居座っておられました。そしてそれらは暫く自重する事なく、順調に進んでしまいあっと言う間に二十階へ到達。
しかしそこにもまだ先客が。
「まこと、人気のダンジョンじゃのう」
「水さえあれば自給自足も可能なんでしょうね」
「そっか、そのままいたければ一部食べちゃえば往復の時間を短縮出来るんだ!」
「あの街があの勢いでご飯を売っている影にはこんな涙ぐましい努力があったという訳か、これを見ると有り難みすら感じてしまうのぉ」
いや本当に。これどれくらいの周期で湧いてんだろ、割に合っているのかね。たむろするおっさん達の横を通ると【サッサと消えろ】的な【横取りすんな】感満載の視線で睨みつけられる。
勤勉な皆様の邪魔はしたくないしね。俺たちは俺たちの目当ての食材でも探しにちょい急ぎ目に潜りますか。
それにこんなおっさんまみれの場所じゃこ 休むに休めないからね、マジ勘弁。とは言え一日でこんなに進めたの初めてだけど、エンカウント無しで全員ステータスもあるとなると、やっぱテンポ早いっすわ。
流石魔王が四人いるパーティ。