第40話 箱の中に一つだけレアな模様が入ってるよ! とかいうとんでもない仲間はずれボックスへの感情移入について。
「さて、何から食べましょうかね」
「アレ!」
「めちゃくちゃ即決ワロタ」
モモさんの指刺す先には牛串焼きと書かれた看板の出店が。か、完璧すぐる……。そう、まさにあんな奴を食べたくて食べたくて震えていた訳で。
「すみませーん、二つ下さい!」
二人分を素早く注文、そして手元にやってくる牛串。もう俺に食われる為だけにここに存在するといっても過言ではない存在に些かの興奮を覚えるのは仕方のない事、涎の濁流が口中に押し寄せている。
いざ……!!?
白玉ぜんざいを食べた事で口の中に蓄積していた甘さが……アクセントに!?
牛肉特有の肉汁感、そこに合わさる濃厚なタレは直接口に入るにはやや濃すぎなのだが……
「おいしー!」
「いやほんと」
うん、美味しいでいいよね。何クドクド考えてんだろ。クッソ美味いわ。最高。
「次は何にする?」
「うーん、モモさんは何系がいい?」
「むっ」
俺がモモさんにそう問いかけると……モモさんは何故か俺を睨みつけ始めた。えっ、一体何が……。
「ねぇアンダーソンくん」
「……はい、すみませんでした」
「何で謝るの?」
「えっと……」
待って、何この尋問。
何で始まったの、助けてドラ◯もん。
「あのさ、何で私だけモモさんなの?」
「……え?」
「ルムちゃんもルナちゃんもニックネームなのに、何で私だけ他人行儀なの?」
「あー、そこ?」
「ねぇ何で?」
ははーん、成る程。そういうあれでしたか。なんだなんだ、仲間外れやめてよ的なサムシングですか。それなら明確じゃん。
「800歳くらい年上なんだから敬うくない?」
「そういう感じだったんだ……」
いや、だってさ。千狐さんと同列って事でしょ? ならそのままモモさんっすわ。パイセンサイドじゃなくて千狐さんサイドに寄ったらそりゃね。
「ねぇ、私もニックネームで呼んで!」
「雑な難題ワロタ」
んもー急なんだから。俺に何期待してんのこの子。
「ならモっさんで」
「やだ」
「もーやん」
「やだ」
「桃太郎」
「……何それ? 女の子のニックネームなの?」
「鬼退治専門男子」
「……やだ」
テラ我儘なんですけど。あれーモモさんってこんな感じだったっけ? んーあんまり喋らなかったからなー。
「モモさんでいいじゃん」
「やだ」
「だぁぁぁもう知らん! いっそモモで良くね?」
「え?」
「モモでいいっしょ、モジらなくて良くね?」
「……呼び捨て?」
「呼び捨て」
「……じゃあそれがいい」
少しイタズラに笑って見せるモモさんはどこか年齢よりも805歳ほど幼く見えて……年上なのに年下の様なお茶目な雰囲気を醸し出す。
俺がそれだけ幼く見えたら鎌倉幕府でもやっていけるわ、裏山しいっす。
「ほら、次どこにすんのさモモ」
「えーっと、次は……あっちに行こ!」
まぁ今はもう暫く、幼くあったっていいよね。モモ、明るく振舞ってますけど、彼女そこそこの経歴ですからね。出来るなら笑ってて欲しいと思う。
だからさ、こういう息抜き系のイベントは良いと思うんだ。
「よーし、次ジャンケンで勝った方が食べたい奴を選べる感じで!」
「ジャンケン分かんないから私の勝ち!」
「テラ理不尽ワロタ」