第38話 ファンタジーでも馬は喋らない
「見えてきたのぉ」
「え、どこどこ?」
「ダンジョン自体はまだじゃが、ここらはその影響で飯屋の多い大きな街が形成されておってな。ほれ、さそこじゃ」
「お、確かに向こうが賑やか」
馬車に揺られる事まる三日、遂に目的地に到着。結構遠かったよね。多分方角的に双頭竜の町を越えていく感じだったからスタートからちょい戻ってたのが痛かったのかも。まぁ仕方ないっちゃ仕方ない。
「やべぇ……クッソいい匂いがしてる」
「本当、お腹がなっちゃいそうね」
「うわー、超いい匂いだね!」
「確か店舗も出店多数あるからの、色々試してみるのもいいやもせんのぉ」
馬車の中での窮屈な状況に辟易としていたので、これには一同テンションうなぎ登り。ダンジョン目指す前に、まずはここで腹ごしらえするのも悪くないかも。というか我慢とか無理っすわ。既に涎がナイアガラの如し。
「私もうお腹ペコペコよ」
『ワイもや、こうえぇ匂いしとったら腹の虫もなくっちゅーねん』
「妾も我慢の限界じゃ、どこで食べようかのぉ」
いやいや気持ちは分かるよ? だけどまずは馬車をですね、預ける宿を探すのが第一ですよコレ。馬どーすんの馬。まずはそこを確保しつつダンジョンの情報をですね……。
「ルムちゃんは何がいい?」
「妾は肉かのぉ」
『肉えぇな、肉や肉』
あーもう目が逝ってますわ、こりゃ無理だな。
「なら俺は宿を探して、まずは馬車を預けきマッスル」
『ほぅ、たまには気の利いた事するやん』
「食欲魔人に言われる筋合いありませんから、いいからはよ何か食って来いし」
「それならば遠慮なく行かせて貰おうかのぉ」
「ありがとねアンダーソンくん!」
元気良く飛び出していくチーム食欲魔人。まぁこう匂いに溢れてて、ストレスの溜まる馬車生活三日目に我慢しろってのも無理な話ですからね。
多少はね、寂しけど。まぁ馬も可愛そうだし。
「早く行こ?」
「!?」
なっ……馬車が喋った……だと?
「何してるの?」
ひょっこり顔を出したのは青い髪のモモさんでした。ふぅ、何だ急にゴーイン◯メリー号よろしくの目覚め方をしたのかとばかり。
いつから誰もいないと錯覚していた?(ドヤァ)
「アンダーソンくん?」
「あーゴメンゴメン、オタクって突然頭の中で話し始めるからたまにフリーズしてるけど気にしないでよろしこ」
「ふーん、変なの」
誰も居なくなったと思っていた馬車で図らずもモモさんと二人っきり。ぼっち回避してくれただけでもマジ感謝っすわ。さ、宿屋を探しますか。