第37話 豚もおだてりゃ空を飛ぶ
まさかの全員衣装チェンジという謎イベントを挟み、購入したばかりの馬車に乗り込んでダンジョンを目指す。
さーて、馬車でのんびり……と思っていたら、これがもうね、揺れるのなんのってガッタンゴットンですわ。完全に二回目ですよね、超忘れてました。
「あぁー脳が震えるー」
「えぇぃ情け無いのぉ、馬車とはこういうものじゃろうて」
「ふふ、確かアンダーソンくん、前もこんな事言ってたよね?」
「あの時は確か千狐さんがパイセンにだけクッション……はっ!?」
そこまで言った所でハッと、気がつく。待てよ、と。みんなやけに涼しい顔をしてると思ったら……やっぱそうじゃん!
「そりゃねーぜ千狐さん、何でみんなにはクッション提供していて俺だけ振動クラッシュ?」
『ワイは気配察知も出来ん無能やから三人分のクッションで限界なんや、すまんな』
「根に持ち過ぎワロタ。というか増えてるからそれ増えてますから。毎回増えてますから」
『はて、何の事やろか』
「ぐぬぬ……だがしかし! 今の俺は一味違うぜ!」
『な、何や?』
「ふぉぉぉ空間固定、発動!」
俺は道行く馬車の足元を空間固定。それにより平な足場を得た馬車は突然振動フリー。ふ、これこそ神に選ばれしオタクの真骨頂。
「うわぁー揺れがなくなった……」
「逆に気持ち悪いのぉ」
『何やヌルヌルしとるような……きっしょ』
「厳しすぎワロタ」
突然のスマートな移動に皆が絶賛! とか思っていたけどキモいきしょいの嵐にアンダーソンは気付いた。これはダメージ10000食らいましたわ。残りは僅かに15000、テラタフネス俺。
「ねぇアンダーソンくん」
「ん? 何かありましたかモモさんや」
「ううん、ちょっと思ったんだけどね」
「うん? どしたの?」
「これさ、もしかして空も飛べるって事?」
『「「「!?」」」』
一瞬、場が沈黙する。
「た、確かに、可能じゃな」
「そりゃ確かに……。固定するのを少しずつ登りの坂道にさえしてしまえば……そのうち空中歩行っすわ。固定されてるからか普通に摩擦もありますし」
「摩擦?」
「あぁこっちの話」
摩擦というか……何なの? なんせ踏み込んで踏み出せるだけの感触はあるっぽい。なかったら空間固定の上は滑りっぱなしって事になりますもんね。
「お主変わった事に気がつくのぉ」
「えへへ、そうかな?」
「まぁ俺の魔力も増えてるから、暫くはこのままでもいけそうだしヌルヌル進みませう」
『しかしきしょいなー、慣れんわコレ』
「キショい言うなし」
目的地までは確か数日かかるんだったかな? 時折は降りたり休憩もするだろうからちょっとかかりそう。でもまぁ、それも込み込みで楽しけりゃ無問題。
そして到着さえすれば、いよいよグルメダンジョン攻略開始。やれやれ、次は何が待ち構えているのやら。折角だし、楽しみにしておこう。