第36話 魔王にも衣装。
「もうさ、普通に可愛い。というか鬼可愛い。むしろ魔王可愛い」
「何を言っとるんじゃ……。妾としてはこのようなラフな格好は些か不安が……」
黒とか赤のゴテゴテした服を脱ぎ捨てて、紫を基調とした白と合わせた服装をチョイス。ルムたんは綺麗な金髪なので服装のカラーは基本問わない。が、やはり魔王という素体を活かすのであれば、紫とかかなと……ね。これがまたハマってて……素晴らしい。
「エクセレント」
「何を言っとるんじゃ……。服装はこれで良いのか?」
「んにゃ、後は髪をこのリボンで結んで……」
俺は見繕っておいた赤いリボンをルムたんへ進呈。
「で手首にこれ」
手首には金色の腕輪を。やべぇなんというか……魔王幼女感がやんわり残りつつも……美少女ですわ。やっぱあのゴテゴテの服はアイデンティティではあってもベストではないな。
「お主なぜこの様なセンスが……意外な技術じゃの」
「ふ、俺が何人の女魔王や女戦士、はたまた獣人乙女の事を妄想していたと思っている。舐められては困る」
「酷い自信じゃのぉ……まぁ良い。それよりそろそろ例の店に向かわんか?」
「ん、そだね。それサッと買っていきますか」
ルムたんのイメチェンを成功させた所ですぐに会計を済ませて馬車を取り扱う店を探す。まぁこんな世界だからなのか、意外とあるもんなんだね。
「さて、これで馬車も済んだ。後はまったりと過ごして出発は明日かな」
「そうじゃな、ルナレシアは姉との事もあるじゃろう」
「いつでも戻れるんですけどね」
「おっとそうじゃった。お主やはりデタラメな力を持っておるのぉ」
「まぁオタクですから」
「オタクって何なのじゃ」
何だかんだと話をしながら村長の家へと帰還。俺は馬を隣につけてから家に入ろうとすると、家の中から凄い声が聞こえてきた。
いやいや、何なの? もう今はちょっとイベントもノーセンキュー。
「ルムちゃん可愛いぃぃ!! どうしたのその服!?」
「え、あ、いや……その、アンダーソンに買って貰ったのじゃ」
「髪の毛も素敵に括られてて可愛い……ルムちゃん絶対こっちの方がいいよ!」
「いや……でも妾は魔王としての……」
「そのイメージを変えたいんじゃないの?」
「うっ……確かに」
「あーもールムちゃんばっかりズルイ! アンダーソンくん!」
え?
「いやいや、ルムたんはちょっと目立つからさ……」
「こやつ自称ファッションマスターらしいぞ」
「ルムたんそれは盛り過ぎてませんかね」
「私とモモちゃんもちゃんと見繕って! 分かった?」
「いや、ほら、もうアレがアレなんで……」
「金はあるらしいぞ?」
「ルムたんマジ容赦ないっすね」
結局さっきの店にとんぼ返りして、二人分の新たな服を買う羽目に。解せぬ……。