第35話 勢い系の人は実は結構後悔している。
「あの……本当に度々ゴメンなさい。私ルナレシアの事になるとつい……」
「いや、まぁあれは絵面的には完全にアウトでしたから、ギルティーにはジャッジメントをですわ」
「……ありがとう」
ひとまず泣いちゃったパイセンはお姉様にお任せして、俺たちで今後の方針を改めて考えないと、っていうね。双頭龍の町は今後行けなくなったかもしれないけど、ぶっちゃけどうでもいいよね。町民の皆様さーせん、まぁ使ってない方なんでそこはね、うん。
「さて、お主としてはどう思うのじゃ?」
「んー別に顔が売れてるんなら変装するなり隠れるなりでいいと思うんだけど、そんなに気にしなくていいと思う」
「妾も同意見じゃ」
「なら……予定通りグルメダンジョンで良い?」
「構わん」
『ワイらも異論はないで』
「んーなら準備物は……」
「妾も四次元系の入れ物は持っておるから、二人いれば何とでもなるじゃろう」
「んじゃもう出発するだけか。せめて馬車とか……欲しくない? どう思うルムたん?」
「馬車は悪くないの、今のうちに用意しておくか」
『ほなワイらはここで出発の準備進めとくわ』
「ん。モモさんは千狐さんが、パイセンはお姉様に。よーし、行きますかルムたんや」
「そうじゃの、早いに越した事はあるまい」
何だかんだで冷静に考えると今のところ一切の不都合はない。なので問題なくグルメダンジョンを目指す流れとなった。やれやれ一時はどうなるかと。【助かっている】とかいう格言があるけど、あれってこういう事なんですかね。
「何をしとるのじゃ、はようせんか!」
「へーい」
普通にルムたんと並んで買い物に向かうと、この子が魔王である事が一瞬で抜けてしまう。どこからどう見ても魔王には見えない。今はまだちょっとだけ服装が……!?
「ルムたんや」
「何じゃ? 何かあったのか?」
「その魔王もどきみたいな格好、やめません?」
「もどきって……傷付くのぉ」
「それはゴメン。でもさ、平生からそれだと目立つじゃん?」
「そうかのぉ、遠征する時は比較的抑え目の物を選んでおるのじゃが……」
「抑え目魔王ファッションとかいう新感覚単語の破壊力について」
「ん?」
「あーいや、そうだな……服買わない? 折角だし」
「そうは言ってもお主、金はあるのか? 妾は人の金にはあまり強くないでの」
「金庫直結のルート抑えてますんで」
「……なら良いのか? ……まぁ良い」
「ほら、そこに御誂え向きの店があるではありませんか。入ろうぜ、ほらほら」
「ちょ、まっ、押すでないわ! 自分で歩け……ちょっ!?」
微妙に足取り重そうなルムたんを無理やり服屋へと押し込める。いくら魔王もどきっても、やっぱね、面倒は避けたいし。