第34話 一歩踏み出すってマジで大変。
「成る程のぉ、ルナは王家の婚約者。そしてあのダンジョンは町の収益源。それを無くしてしまった事をコソコソ見張っておった連中が金や思惑通りになればと情報を売り、町中に拡散されておった訳か」
「そこまで言ってないのに理解早すぎて助かりますわ」
「ルナレシアちゃん、もう無理しなくていいのよ?」
「……そうね、本当は自分から言いたかったけど……ごめんなさい」
そっとパイセンの肩に手を置く村長。やはり村長はその辺りを理解した上での協力者だったらしい。まぁそりゃそうだよね。
「モモちゃんには難しいかもしれないのだけど、少し私の話をさせてね?」
「うん、私もルナの話聞きたいよ?」
「……ありがと」
モモさんもみんな見守りモード。良い人だらけなのに気を使うとはパイセンは底抜けの良い人ですね。
「私、元々は王国で貴族の娘として産まれたの。だけど特に地位の高い家柄だった訳じゃないから……色々大変でね」
「うーむ、そなたにはどことなく高貴な物を感じておった。今更驚きはせん」
デジマ? ルムたんマジ優秀なんですけど。
「でも、何でか分からないのだけど、王族の一人が私の事を気に入っちゃって。それが周りにいた他の貴族のプライドを傷つけちゃったみたいでね」
「テラ面倒臭す」
「……そうね。だからきっと私、これからもみんなに迷惑かけちゃうと思うから……。少し考えたんだけど、ここに残ろうと思うの」
「あれ? パイセン残るの?」
「考えてみたらついていく理由もないの、私だけね」
……おや? パイセンそんな事気にしてたの? これは気づきませんでしたわ、これだからオタクって奴は本当無能。いや全国のオタクの皆様失礼しました、無能なのはアンダーソンです。謹んでお詫びテヘペロ。
「パイセン、落ち着いて周り見てみそ」
「……何?」
「謎の生物、千狐大先生。闇の化身、ルムたん。そして神に選ばれしオタクガチ勢、俺。逃亡貴族、パイセン。マッチしてると思いません?」
『「おい」』
方々からクレームが来ましたがシャットアウト。すみませんが事実ですので悪しからず。
「……でも」
「パイセンは来たくない訳?」
「行きたいわよ!」
「ならそれで良くね?」
「!?」
「ルナ、諦めい。こやつはそういう男じゃ。多少の事では諦めてくれんぞ?」
「……そうね、アンダーソンくん、優しいから。私も……ついていって大丈夫なのかな?」
「そりゃもう、当たり前じゃないですか」
「ふ、ふぇぇん……」
あちゃー可愛いらしくパイセンが泣き始めちゃいましたね。ここはひとつ、オタクとしての引け目を脱却して抱擁を……。
「帰ってたのルナレシア!?……ルナレシア!?」
バァンと、扉を開けて登場するお姉様。
泣きじゃくるパイセン。
襲い掛かる野獣。
つまり答えは簡単。
「アナタ……!!」
パシーンと。
全米を震撼させる一撃が放たれる。
そして予定調和の如く全俺が号泣。
ふぇぇ、出しゃばり過ぎたょぅ。。。