第33話 問いかけに正解があるとは限らない。
「取り敢えず全員と合流してそれから考えるでFA?」
「……ごめんなさい、ごめんなさい」
「いやいや、大丈夫だから。俺のせいですから」
「……ごめんなさい、ごめんなさい」
こりゃダメだ。パイセンのライフが激減してるっぽい。ダンジョンへの因縁、そこそこの地位、そして何らかの理由によるその地位からの避難、ここまでは何となく察してはいたけど、王家の婚約者ときましたか。まぁそうだとしてもだから何? なんなんですけどね。
「パイセン、取り敢えず戻ろ?」
「……ご、ごめんなさい、ごめんなさい」
「マイケル・オンザヘッド!」
「ごめ……痛っ!!」
俺はパイセンの頭頂部に手刀系秘技マイケル・オンザヘッドを放った。つまりただのチョップ。
「パイセン、俺を見ろ。そして考えろ。パイセンの知る俺は些細な事を気にする残念な男だったか? それともノーパンでパンツを要求するイケメンだったか? さぁどっちだ」
「……答え難いわね」
「正解!!」
よし、パイセンは冷静になった。流石としか言いようがない。
「さっきのあの話が本当だったとして、この街にまだ居たい系? 居たくない系?」
「……居たくない」
「よし、帰ろう」
「キャッ! ちょっと、アンダーソンくん!?」
俺はさっとパイセンをお姫様抱っこして人混みの中を縫うように高速移動で宿屋へ帰還。レベル400オーバー舐めんなし。
「おや、随分と早かったのぉ。目的は達っしたのか?」
「んにゃ、予定変更。取り敢えず休憩地点を知り合いの家に変えるから支払い済ませてくるわ。詳しくはWEBで」
「……後で聞かせて貰おうかの」
ルムたんが他のメンバーに準備を促してくれていたので俺はその場にパイセンを降ろしてすぐにチェックアウト。
どうあれこの人数で移動しては目立つのは免れない、ここは怪しまれるのを覚悟で行くしかないと判断し、そのまま部屋から瞬間移動を発動した。
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「あら、数日ぶりね。まさかこんなに早く帰って来るなんて思わなかったわよ? ほら、お帰りのキスは?」
「いやした事ありませんから。その日常の流れでしょみたいな雰囲気やめてくれメンス」
移動先は最初の村。そう、強力な村長の治る例の四天王殺しで有名な村、嘘です俺がやりましたテヘペロ。その例の村に移動し、村長にヘルプを求めに来たという訳だ。
「どうしたのよ? 何かあったのかしら」
「ちょっと事情が変わりましてですね。簡潔に言うとパイセンの出自と我々の行動がダメなハイブリッドをイノベーションしましてですね」
「簡潔どころか全然分からないわよ」
「でも伝わりました?」
「……そうね、言いたい事は分かったわ。ひとまず上がりなさい」
村長は理解を示し、全員を家の中へと入れてくれた。
この人本当いい人で助かる。
さて、本当の問題はこれから解決せねばですね。
やれやれ。