第31話 しつこい汚れはマジで取れない。
翌朝、これからの方針とひとまず全員で行動する旨をパイセンとモモさんにもお伝えする。だがしかしモモさんはふーんくらいでパイセンに至っては当たり前でしょ? みたいな反応しか返ってこなかった。まぁ確かにそうですよね。
どこに向かうのかの話も済ませてひとまず減った食料の買い出しに出かけ様としたが、何故かお目付役にパイセンを付けられてしまった。解せぬ……。
「私も流石にアレはないと思うから、グルメダンジョンって何か良いわよね!」
二人で買い物に出かけている訳なのだが、今日は何故か妙にテンションが高いパイセン。武器も置いてきているので二人ともかなり身軽な見た目となっている。というか最早武器とか飾りでしかないんですけど。
街並みはと言えばすこぶる綺麗に輝いていて、やはり相変わらずの活気だなと言わざるを得ない街の雰囲気。人がしっかり往来に溢れており出店も良い勢いで商売に勤しんでいる。なんだか凄く騒がしい。
こんな街をぷらぷら歩くってのも悪くないよなぁと、隣にパイセンを侍らせるインキャ卒業間近なアンダーソン、キラッ☆ 因みに本日はご飯調達隊長。
「グルメと言えば俺、俺と言えば干物、つまりグルメ=干物とかっていう方程式を発明した世界的大天才、アンダーソン氏にかかれば飯の準備とか楽勝過ぎて安定の干物」
「それにアナタといると、もうずっと小さな事でクヨクヨしてた自分が馬鹿みたいに思えるわ」
小粋なトークも弾んでいて正に俺の陽キャデビューも目前か!? みたいな空気感からのよく考えたら微妙にディスられているという現実。ほぎゃぁ。
油断したらこれだよ、ふぅ危ない危ない。インキャを卒業するにはまず鋼メンタルから備えろってね。
「さり気なくディスってません?」
「なんかね、久しぶりに顔を上げた気がするの」
文脈をぶった斬る清々しい顔のパイセン。パイセンにはパイセンの事情がおありの様で。深掘りは俺みたいな干物には不釣り合い、流れに任せるチキンスタイルなアンダーソン。干されたチキンとかそれってもはやただの干し肉、干し肉アンダーソン。
「パイセンってば出会った初期の頃はなんか殺伐とした趣きがそこはかとなくアレしてましたからね」
「……良く分からないけど悪気はないの。本当にね、ずっと下ばかりみてたから」
まぁ今となっては下向いても仕方ないですからね、我々にワンパン出来ない奴とかほぼいませんから。そりゃ自然と顔も上がりますわ。ワンパン出来ないやつがいるとしたら多分それは魔王的なサムシング。むしろルムシング的な魔王、つまりルムたん。
「アナタにはまだ話せてない事が色々とあるから、少しずつ話せるといいのだけれど……」
「無理しなくても俺は消えませんし死にませんし、つか殺せませんし。焦らなくてもへーきへーき」
「そう……なのかな」
「ギャグ枠は基本不死身ですから」
「……良く分かんないけどありがと」
ま、それいいとして買い物買い物。町の食品街を目指して歩こうとしたのだが、宿を出た時点で冷静に考えたら既に空気がおかしかった。何? 賑わってるにしてもちょっと賑やか過ぎない? お祭りでもやってんの?
「……? 今日は妙に騒がしいわね」
「んーお祭りとか?」
「それなら出発前に噂程度でも耳に入る筈だと思うの
」
「まぁそりゃそうだ」
お祭りというより騒然としているというか何というか。ガヤガヤしてて落ち着きがない雰囲気。せめて現状くらい把握しておくかと状況の中心を探して移動していると、何やら人々が口々に何かを囁き合っているような。あれ……なのか? にしては妙に規模が大きい。
「なんでも八岐大蛇のダンジョンが死……」
「やったのは王家の婚約者のシード……」
比較的声の大きい人に耳を傾けてみるに……それでも聞こえづらいな。ダンジョンが? 王家? ……何なんだろ。
「え、嘘でしょ……」
と、ここで隣のパイセンが何故か小さく何かを零す。まだ声しか聞こえないんですけど既に何かに気付いたんですかね。俺はまだ正直良く分からない。
「アンダーソンくん、行きましょ、早く!」
「WHY?」
え? どゆ事?