第29話 世界を取れる戦力。
元いた町に戻って、同じ宿にチェックイン。ここ何だかんだで干渉もしてこなかったし、今の俺たちには過ごしやすい環境に思えたのでそこに決めた。
そして宿に入ってモモさんにもう少しだけ説明、でも記憶がないのなら今から学べばいいんだから結局同じよね! って前向きなパイセンに引っ張られて、モモさんも段々と笑う様になってきた。
そして今日は疲れているだろうからと早い目に就寝する事に。そこで気がつく。あれ? 俺男……。と意識してからは寝る事が一気に困難に。この部屋いい匂いするんですよ。ドキがムネムネしますわ。
「さて、我々のミーティングの時間かのぉ」
『せやな、アンディもそのつもりで待っとってくれたんやろ? すまんな』
「あ、いや、そ、そうなんだよね」
『何や寝つけんかっただけかいな、これやから童貞は』
「どどど童貞ちゃうわ!」
「その辺にしておけ、話を進めたいのじゃ」
『せやな、すまんすまん』
そんなこんなで夜中のミーティングが始まった。命題は単純明快、これからどうすんの? って話。俺も何だかんだでコレが夢じゃなくて、こういうものだって事で受け入れ始めている。
それならそれで、やりたい事もやる事もない。どうせなら行動理由があった方が過ごしやすいし、みんなにも助けて貰ってますから。返せるなら返したいし。
「ルムたんは確かダンジョンの様子見に来てたっていってたっけ?」
「妾は異常をきたしたダンジョンや場、或いは物や生物を探しながら駆逐しておった。魔族という存在の立場の悪さはそういった所から始まっておる気がしてな」
「あー成る程。そういうアレだったのね」
涙ぐましいストーリーではありませんか。魔族、引いては魔王という存在への偏見を無くす為にコツコツとって事か。些かコツコツ過ぎて誰も見てない気もしますけど。
「そこでじゃ、結論から言おう。お主らに同行しようと考えておる」
「デジマ? 何で?」
「古代の帝国の遺産などこれまで殆ど見た事もなかったにも関わらず、ここにまず千狐、そしてモモが。まさかの当事者までおる始末」
「つまり?」
「歪みや変化、そういった今まで妾が気付けなかった細やかな機微にもここでなら或いは、と思っての」
「……成る程」
まぁ確かに既にかなりの意味不な混沌メンバーですものね。それは分からなくもない。
「それに……」
「ん? まだあるの?」
「わ、妾も楽しかったのじゃ」
「……んん?」
なんか頬を赤らめて……何これ。
「産まれてこの方、ここまで対等な立場で共闘したのも始めての事。それに初見で魔王と明かしても物怖じされなかったのも。その後、特別扱いされなかったのも」
「だってルムたん頑張ってくれたじゃん」
「……そういう所なのじゃ。妾はこういう繋がりが欲しくて行動を続けていて……身を結ぶ事など殆どなかった」
「まぁ……分かりにくい慈善活動ですものね」
「だからの、アンダーソン。妾も……その、同行しても構わんか? 無理にとは言わんのじゃが……」
「いいよ」
「本当か!?」
いいもなにも、何で俺が上から目線なんですかね。魔王が同行許可求めて俺がそれを良しとする。俺ってつまりなんなんですかね。
これはでもアレか、魔王が仲間になりましたって事か。アレ? このパーティで既に世界も取れんじゃね?
いや取らないけどさ、面倒だから。