第3話 チャンスは掴むものとか言われてもまずは実態を用意してから出直しこいと思う件について。
「見えて来たわ、あそこが私の村よ」
森でパンツを燃やされてから歩く事一時間。ルナパイセンが指で示す先にあったのは崖の上の村でした。崖下は湖? ビジュアルから既に不安過ぎる。 どう見ても崩壊フラグですお疲れ様でした。
というか股間が寒い。そして落ち着かない。
「時にパイセン、ちょっと服貸して貰えませんかね」
「嫌よ」
「燃やしたのに?」
「嫌よ、絶対嫌」
冷た過ぎて凍えそう。何なの? 信頼関係築く気ゼロなの? アブソリュートゼロってこういう事なの?
「あら? ルナレシア? 今出たばかりなのにどうして戻って来たの?」
「えっと……」
崖の上の村、その入り口まで来ると、どうやら知り合いっぽい人がパイセンをお出迎え。何だかんだとありましたがここに来て漸く生存フラグ立ちましたわ。あー生きた心地がする、と言うかはよ夢から覚めろし。
「あら、後ろのそいつ……!? 誰!? 離れなさい、動くと斬るわよ!」
生存フラグが秒でバキバキ。フラグ先生さっきの今でもう息してないんですけど。
え? どうするの?
「何とか言いなさい!」
動くな、でも喋れとか難易度高過ぎるんですけど。俺の事テレパシストか何かと勘違いされておられるの? 無理ですから只のオタクですから。
もうヤダ、早く夢から覚めてよ……。
「……喋らないと斬るわ」
無茶苦茶すぐるんですけど待って、え? 安全ルートから一気に死亡フラグまで振り切るの? 振れ幅大き過ぎませんかね北極から南極なんですけど。圧倒的に温かみが足りない。
具体的には赤道キボンヌ。
「あの、ソレイユ姉……その人、迷子だったの」
「え?」
とここで漸くパイセンのフォロー。いやいや遅過ぎじゃね? マジで斬られる五秒前まで粘る? なんでコントみたいに引っ張るんですかね張り切り過ぎではありませんかね?
「この人レベルも1だったし、ステータスもほぼ1だったから多分大丈夫だと思う」
「レベル1の……迷子? こんな所で?」
漸く状況が伝わり始めましたか。やれやれ、今なら喋っても斬られない? ……むしろもういいか、どうせ夢だし。あーあーもう何か全部どーにでもなーれ!
「おっす、オラアンダーソン! 自分でも訳が分からないうちに森に放り込まれたレベル1の無害っ子だ! よろしくな!」
「自分で無害とか言われても信じられないわ」
「ステータス、オープンザマイケル!」
「……は?」
何度でも刮目するがいい、清々しいがまでの我がステータスを!
「嘘、私でもレベル20あるのに……レベル1?」
「ぼく、無害、アンダースタン?」
「……分かったわ、そこはひとまず信じてあげる」
やれやれ、モヤシがモヤシである事をノーパン丸腰で主張してるのに何を疑って……はっ!?
ま、まさか……。
「でもそんな格好で信じろって言われてもね」
「ですよね」
「何でそんな格好してるのよ」
「……さてソレイユ姉さん、貴女の妹様に衣服を燃やされた件について話があるのですが」
「え!?」
こうして俺は何とか最低限の信頼を得る事に成功した。やっぱ友達作るならノーパンに限る。
ノーパンマジおススメ。
______
「で、あんたこれからどうするのよ?」
「むしろ俺が聞きたいんですけど」
「……行く宛はないのね?」
「皆無」
「知り合いはいないのね?」
「皆無」
「腕っ節は……」
「皆無」
「良く今まで生きていられたわね……」
今までというより正に今始まったんですけどね、アンダーソン君の大冒険的なね。前途多難というか既に前途に難しかないんですけど。ねぇこれどうするの?
無理じゃね? 詰みゲー感はんぱない。
「村長に話を聞いてみるしかないわね」
村長! なんか助けてくれそうな善人な響きだ。遂に俺は得たのだ、協力者と言う名のライフセーバーを!
「でもマリアさん、アンダーソン君の事好きそう」
なん……だと? 村長イコールマリア? そんな村長マリアにいきなりモテ展開? 何それ一気にイージーモードキタコレみたいな?
皆さん聞きました? 村長ルートにゲットインですよ。あー成る程ね、これが噂のハッピーライフって奴ですかヒヤヒヤさせやがって。楽勝過ぎワロタ。
「そう言えばあの人男好きだったわね」
もうこの際浮気とかどうでもいいから。他の男と一緒に俺を囲ってくれる美女的な村長ルートとか逆に萌える展開じゃね? こちとら元より非モテルート、贅沢とか言いませんから。
いやすまんね諸君、これが勝ち組ってやつよ。
HAHAHAHAHAHA!
「マリアさん男なのにね」
嫌ァァァァ!!!
待ってそれはナイ、ナイナイ、ナイから。
何で、どゆこと?
このファンタジー設定おかしくない?
「取り敢えず連れて行きましょうか」
あー終わった。
拙者の人生、これにて終わりもんす。
詰んだわ、完全に詰み。
何なのこのファンタジー。
せ、せめて優しくして下さい……。
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「あら貴方、どうしたの?」
「いいいや、あああのでですね」
「しっかりしなさいよ! あのね村長、この人森で迷子になってたレベル1のコなんだけど、どうにも行く宛がないらしくて。意見を聞きに来たの」
「んふぅ、あら、良い男じゃない」
「ああありりりゃす」
村長のビジュアルが予想の遥か上を行ったもうダメぽ。ガタイ最強の筋骨隆々系のマッチョ完全形態キタコレ。スーパーゴリラモードのトラ◯クス君よりムキムキなんですけど。もうお前が魔王倒せし。
「それでその子どうするの? うちで預かれば良いのかしら?」
「お願い出来ますか? 村長にしか頼めなくて……」
俺の意思は完全に無視ですか。成る程、もうこのルートからは逃れられないと。これどういうクソゲーな訳? あれ? ファンタジーって何だっけ?
「仕方ないわね、ひとまず今日は預かってあげるわ」
「ありがと村長!」
はい死んだ。
テッテレー、バッドエーンド。
いやー無事に終わりましたね。
何だったんだろ。
神?
あぁクソじじい?
いましたねそんな奴。
あそこで良いようにやられて上手くここに飛ばされてあれよあれよと気が付いたらオスゴリラとわっしょいわっしょいですよこれ。どんなスピード展開なの? もうバッドエンド目前じゃね? グッバイフリーダムライフ。
「キャァァァァ!!!」
何何? 何のイベントなの? 急に悲鳴が響き渡ったんですけど。というか今もめっちゃ悲鳴聞こえるんですけど何なんですかね。アタシもうお腹いっぱいなんですけどこの上何があるってんですかね。
「あらヤダ何かしら、嫌な予感がするわ」
そして輪をかける様に目の前のゴリラが余計なフラグを建設。おいおい勘弁してくれよ、これを放置するのは流石に危険過ぐる。ここはオタクとして、きっちりへし折っておくしかないな。
俺は落ち着いて、自身が今言うべき言葉をその場すぐに叫んだ。
「よし、ここは俺に任せてお前達は先に行け!」
「早く貴方もいらっしゃい!」
「いやぁぁぁぁぁぁ」
【悲報】フラグクラッシュならず。