第28話 見た目は幼女で中身が魔王で見た目が世間に広まっていないなら最早ただの幼女。
「あれ? ここは……痛たた」
『お嬢!? ワイや、千狐や! 良かった……ホンマ良かったで……お嬢大丈夫なんか? どこが痛いんや? 大丈夫なんか?』
「モチツケ」
モモさんの隣でアタフタする千狐さんを抱き抱え、そのままパイセンにパスする。落ち着けって言ったって無理なのは分かってるからね、でもまぁ落ち着けとしか。
「頭が……。私何してたんだっけ……」
「無事か? 場所はともかく、自身の事ははっきりしとるか?」
「え? 私の事? ……あれ?」
「デジマ?」
おやおや? どうも様子がおかしいですね。うーん、まさかこれは……。
「私は……誰?」
『お、お嬢……』
あぁーやっぱそうきちゃうか。うーん流石にそういうのはレベルとか体力とかそういう問題じゃないからね。それにその辺りには詳しくないし。
「ルムたん、こういうの何とか出来たりする?」
「……妾の配下に洗脳や精神作用的な能力者が一人おるが、妾自身には難しいかの。すまぬ」
「あの……」
今は寝かせた所からルムたんが支える形で地面に座っているモモさん。千狐さんはちょっとションボリモード。まぁこれは……ねぇ。
「私、何かしてたんですか?」
「大丈夫大丈夫、今話しても平気?」
「多分……」
「ん、なら簡単に纏めるからヨロ」
「よろ……?」
「貴女はこちらの千狐さんと同郷で、この地にて囚われの身でした。そしてそれを助けに来たのが俺たち三人って訳。俺らは面識ないから、初めましてモモさん。俺はアンダーソン」
「あ、初めまして」
手を握る、つまり握手。冷たい。ずっと一人だったからか手が異常に冷たい。その冷たさは青い髪と呼応する様な冷気を孕んでいる気さえする。
「えっと、私は……名前……」
『モモや、お嬢の名前はモモや。忘れてもーたんならワイがゆっくり思い出させたる。無事でいてくれて、ありがとーな。それだけで感謝や』
「……モモ?」
『せや、モモ・ビスカリアって言うのがお嬢の名前なんや』
「……モモ……です。初めまして、アンダーソンくん」
キョトンとしながらもすぐにニッコリ笑うモモさんはそれはそれは可愛いらしく、パイセンのそれとはまたちがった路線の可愛いさを放っている。
この子は……多分同い年くらいなのかな。
「ひとまず長話もアレじゃ、移動せんか?」
「んー、大丈夫なの?」
「大丈夫? 言葉の理由はなんじゃ?」
「ルムたん……どこに移動しても同行できないじゃん」
「魔王が故という事なら、妾は意外と顔が売れとらんからな。素知らぬ振りをすれば案外とどこでもいけるからの」
「ならまぁいいか。ここってこれ以上奥はないの?」
「ない筈じゃ、気配も何も感じんからの」
「……なら。まずは町に戻りますかね」
「やれやれ、こう深いダンジョンだと戻るのも……」
「スキル【瞬間移動】」
こうして俺たちはダンジョンを後にする事になった。