第25話 SSS級の威力を発揮した俺のスキル
「シャッフルゲート」
思えば、真面目に考えようとはしていなかった。この世界にも、そこに生きる人たちにも、手に入れたスキルも。
だが手元にあるのはどう考えてもチート。控え目に言っても規格外の能力。そして目の前には恩人、救いを求める小さな友、そして信じてくれた戦友。
これだけ全てここに揃っていて何が不服なんだよ。いつまで異世界ごっこしてるつもりなんだよ俺は、馬鹿なの死ぬの? 今は目の前にある全てに集中しろ。
そこに、答えは全て揃っている。
俺は全員をこの場に集結させた。
「おっと、お主まこと変わった能力をしとるが、流石に慣れんのぉ」
「キャッ! あ、危なかった……」
『……何やアンディ、どないしたんや?』
「ん?」
『えらい神妙な顔しとるやないか、何かあったんか?』
流石空気の読める千狐さん。マジ心読んできますね。けどまぁ……ふざけてるのもここまでだ。さて、始めるか。
「悪い、ちょっと攻略法考えててさ。全員集合、耳貸して」
「何じゃ何か思いついたのか?」
「取り敢えずルムたんは魔法まだいける?」
「妾を誰だと思っとる、まだ余裕でいけるのじゃ」
「よし、ならパイセン!」
「えっ、ちょっ、な、何よ……」
俺はパイセンの両肩に手を置いた。向かい合い、真剣な意を伝える。パイセンに頼む内容が……一番危険だからな。
「俺を信じられるか?」
「え?」
「パイセンにしか頼めない危険な事がある。下手すれば千狐さんでもどうにもならないかもしれない」
「……何か気づいたの?」
「だが危険は危険だ」
「……でもチャンスはあるのね?」
パイセンは真剣な顔でこちらを見つめ返す。美少女だなんだと言っていたが、やはりこの子は真剣な顔が一番映えるな。ちょっとグッとくるわ。
「頼めるか?」
「任せて。それに貴方の事はもうとっくに信用してるわよ。じゃなかったらこんな所に二人で来たり……ううん、今はそれより作戦ね!」
八岐大蛇は見失った二つのターゲットを再び捕捉。こちらに向けて動きを始めている。
「単純な作戦だ、そもそも最初からこれでいきゃ良かったんだよ。俺たちにミミッちい攻撃なんて必要ない」
俺は三人に、作戦を伝えた。
「俺たちはチート持ち、ならやる事は単純だ」
作戦が始まった。
_______
「パイセンは俺の側に、千狐さんは魔力を全開にしておいてくれ!」
「私はどうすればいい?」
「構えてろよ、目の前にそれがきたら迷わずぶった斬れ」
「単純ね、任せなさい!」
「ルムたん!」
「妾はどうする?」
「ルムたんも魔力全開。連続射出可能で強力な技、あるよな?」
「無論じゃ、しかしこう密集しておっては意味を成さんから控えておったのじゃが……」
「任せろ、俺が移動させる」
「……!? 成る程のぉ、妾は撃つだけという訳か」
「ん、頼むぜルムたん!」
「ハァァァァ……」
魔力の充填を始めるルムたん、そして眼前に迫る数多の首。俺は視野範囲の中の最も安全な場所を確認する。
「シャッフルゲート」
音もなく移動する俺たちに首は動作を鈍らせる事を禁じ得ない。それだけの隙がありゃ、本来なんだって出来た筈なんだ。
「まずは俺が粉微塵にする、あとは頼むぜ?」
集中するルムたんに声をかけると、俺も魔力に意識を向けるする。空間の断絶は面の攻撃。グランドクロスは二面の攻撃。だが……もしこれが無数に出せたらどうなるのか。
「喰らいな首々マン、絶断界!」
空間を埋め尽くす無数の断絶。三面四面どころではない、百面レベルの逃げ場なき断絶の空間支配。その発動と共に、その場に存在する全ての首が瓦礫と化した。音を立てて崩れる八岐大蛇。だが……その残骸はどうなっていた?
「ルムたん!」
「ハァァァァ!! テオラゾーマ・バーストバレット・オン!!」
明らかに異質な魔力を見せるルムたんの手から幾多もの弾丸が射出される。そしてそれらは着弾と共に大爆発。だがこの位置からでは当てにくい位置が存在する。その存在を無にするのが俺の役目だ。
「そのまま続けろ! シャッフルゲート!」
瞬間、ルムたんが技の放出のそのままに移動する。先程は届かなかった箇所のある位置に。移動して秒でその照準のズレを修正するルムたん。俺は更に作戦を続けた。
「シャッフルゲート、シャッフルゲート、シャッフルゲート、シャッフルゲート」
神出鬼没なルムたんの攻撃は既にゴミクズになっていた八岐大蛇に効率的に直撃していく。八岐大蛇が崩れている事で立体感を失い、直撃面積が激増しているからだ。
そして……恐らく無限の魔力にみえた八岐大蛇のそれは、リサイクルによるものだと思われる。アレだけの戦闘にも関わらず場にある瓦礫の数は余りに少なかった。恐らく再吸収する事で再生速度を急激に高めていたのだろう。
やはり……再生が遅れている。この刹那で……パイセンが割って入る!
「いくぞパイセン!」
「任せなさい!」
「シャッフルゲート!」
最も奥にある瓦礫とパイセンの位置を交換する。眼前に広がるは魔法無効の水晶体。だが……物理攻撃はどうかな?
「マズイ、奥の首の再生が始まっておるぞ!」
ルムたんは攻撃をやめて俺の隣に移動していた。この提言、予想の範囲内だ。
『その為のワイやろが!』
最大級の砂の壁を両サイドに出現させる千狐さん。恐らくアレが今出し得る限界の技。バリア二面とか流石ナイスですわ千狐さん。予想通り、予想以上の働きをしてくれますね。
これで邪魔は入らない。
「ルムたん、今日一番をパイセンの位置に十五秒後に撃ち込んで!」
「了解じゃ、信じるぞアンダーソン!」
「ヤァァァァ!!!」
眼前のクリスタルを打ち砕くパイセン。多過ぎる首が千狐さんの砂のシールドを越えてくるも、ついでの様に全て切断しながらクリスタルを砕き進むパイセン。
「……見えたわ!」
『よっしゃ!』
対象を発見すると同時に千狐さんが砂で合図を出す。
「頼むな、ルムたん」
「気をつけての」
「……シャッフルゲート」
俺は、パイセンとその位置を交換した。