第22話 とりあえずサイボーグ化したら良いとか言うメタル◯ーラーの法則。
【B49】
「まぁルムたんが既に通ってるんだからこうなりますよね」
「……何もいないわね」
「再生されるのには時間が掛かるからの、今日の今日では戻るまいて」
「さて、なら今日はここで休んで、明日は……ぶっつけ本番って事でオケ?」
「それしかないものね」
「ほい、これルムたんの分のご飯ね」
「おぉすまんの。妾はこのまま帰るつもりじゃったから手持ちが無くての、助かるのじゃ」
「食べ物は私たちと同じなの?」
「そうじゃな、殆ど変わらん」
「……魔王って何なのかしら」
「魔を統べるものではあるが必ずしも統率を取っているとは限らない、という訳なのじゃが分かるかの」
「にゃるぽ。つまりダンジョンとか魔物って自然生成されてて、実は魔王の管轄ではないって事?」
「左様」
「……人間の敵として魔王や魔族と一括りにしてたけど、違うの?」
「奴らは我々を襲わん、故にそれを利用する事は出来るかもしれんが、本質は違うのじゃ」
「アレでしょ? 人にとって犬猫は同種ではないけど関係性次第では上手くやれる。魔族にとってはそれが魔物って事なんじゃねーの?」
「まぁそういう認識で間違ってはおらん」
「……魔王が生み出している訳じゃなかったのね」
「妾にその様な力はない。通常より強い力は持っておるが、あくまでそれだけじゃ」
話をすればするほどパイセンの態度が軟化していく。そりゃ得体の知れない危険人物が隣にいたら落ち着かないだろうけど、同じ様な悩める女の子だと分かってしまえば警戒も薄くなりますわ。
魔王側の情勢なんて普通にしてたら分かる訳ないですしね、そこはしゃーない。
「さーて、そろそろ寝ますか。取り敢えず休んで明日だから、各自ちゃんと寝るように」
「問題ないわ、千狐ちゃんのお陰ね」
「ほぅ……これは大した物じゃ」
見れば二人分の気持ち良さそうなフカフカベッドが千狐さんによって準備されていた。
あれ? 二つ目は作れないとかか言ってましたよね?
『すまんな、ワイは先の気配も読まれてへん無能やからベッドとか二台までしか無理やわ』
「根に持ち過ぎワロタ。改竄すんなし」
余裕を見せる千狐さんだが、やはり落ち着きはなくなってきているようにも見える。
いよいよだからなぁ。
仕方ない。
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【B50】
「うへぇ……やべぇのがいる」
「アレの事だったのね」
「左様、見れば分かるじゃろう」
『お嬢の力を僅かに感じる、あかん方のパターンやな。かなり強化されてるかもしらんから気をつけてや』
「言われなくても流石に油断は無理っすわ」
「……そうね」
そこにいたのは紛れもなく元八岐大蛇だった、が。聞いていた通り様子がかなりおかしい。というかぶっちぎりでおかしい。
「あれは……なんなの?」
「サイボーグ化してた訳ですか」
そう、八岐大蛇は八岐大蛇ではなく。ネオサイボーグヤマタノオロチに進化していた。ヤバ過ぎ。
『一番奥の壁にあるクリスタル、あそこにお嬢がおるみたいなやな』
「あー、アレ。うーん……いきなりの救助は無理みたいですね」
「そうじゃな、ひとまず他を何とかせんとな」
最も奥の壁面に埋め込まれたクリスタル、そこから伸びる脈打つ機械化された細胞。そしてそれと一体化してしまっている八岐大蛇。
「八岐大蛇ってそもそもレベルどうなの?」
「……単体でもレベル120はあった筈ね」
「ルムたんの見立てではどんな感じ?」
「……凡そで450は超えておるな」
「そりゃヤベェですって」
首は八本がキッチリ健在しているが、これらも歪にサイボーグ化されておりもう見た目は凶悪そのもの。むしろこいつが魔王じゃね? ってレベルの邪悪な風貌。
『ワイと同じ箱みたいな装置に寝とった筈や、つまりその装置と中身のお嬢ごと吸収してしもたって事なんやろな』
「技術があり過ぎるのも考え物パターンですね分かります」
『せやから、滅んだんやろなぁ』
確かに、ふとした拍子にこんなイレギュラーを度々起こされていたらたまったもんじゃないですものね。
いやーぶっちゃけさ。
空間の断絶でスパッとやってドーンと思ってたんだけど、ちょっと難しいそうですよねこれ。
っていうのも、実は既にちょっと消費は勿体ないけどさ、クリスタルと八岐大蛇さんを分断してみたんだけと普通に再生してすぐにくっついちゃったんですよね。
つまり直接助けるか、ヤマタノオロチを黙らせるか、或いは……戦いながら考えるか。
「さーて全員、スタンバイオケ?」
「問題ないわ」
「こちらも問題ない」
『ワイもいけるで』
「そしたら敵は再生能力付きのネオ八岐大蛇。ミッションはこれの討伐とお嬢の救出。そして全員無事に帰還する事」
「もう私も戦える、前の様にはいかないわ」
「妾は隙をみて首を取りにいこう」
『細かいサポートは任しとき』
「オーライ、そしたら始めますか。ヤマタノオロチ討伐戦!」
こうして、激戦の幕が上がった。