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オタクアンダーソン-神の手違いで異世界へ-  作者: 生くっぱ
第一章【ダンジョン攻略と過去の遺物】
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第12話 お金ってあった方がいいけど、無い方が楽しい時もある、けどやっぱりあった方が良い。

「これと、これと、これと、これと、これと……」

「おいおい兄ちゃん、選ぶのはいいけど冷やかしはだな……」

「あ、前払いしとくわ。これでお釣り貰える?」

「なっ!? ここ、これは……」


 宝物庫から持ち運びやすそうな一部のコインっぽい奴だけを適当にポケットに入れて来ていたので、それを使って衣服を購入。


「それ使えんの?」

「……これ一枚でその商品の倍は買える価値があるよ。何で価値も分からずにこんな物持ってるの?」

「いやーちょっとそこで拾ってさ」

「拾えるの!? どこで!?」


 気さくな服屋の店主とご機嫌なやり取りをすませ、俺は遂に普通の服をゲットした。


 真っ黒のズボンに、青いベルト代わりになりそうなバンド。あと初期装備の白ティー。後は何かカッコつけたくて白マント。白に青いワンポイントのマント、最高としか言いようが無い。厨二感満載で即決だったわ。


 あとの装備だけど、剣とか盾はいらないっぽいからマリアナイフだけ腰にさして準備完了後は非常食入れの鞄っぽいのを探していて、旅人っぽいボクサーバッグが売られていたのでそれに決めた。


 ヤバイくらい旅人でウケる。


『なぁアンディ、昨日のスキルなんやねん』

「ひ・み・つ」

『クッサ、そういうのは男がやったら台無しやで』

「酷すぎワロタ」


 買い物をしている最中も千狐さんは俺の肩にのって尻尾をクルンと首に巻いてマフラーにしてくれている。一見暑そうに見えるが、その実ヒンヤリしている。そしてモフモフ。もうね、すっげーモフモフ。特に首の周りのね、モフモフがヤバイ。昨日の晩にモフり倒してやったぜ。


『何ニヤニヤしとんねんキモいやっちゃな』

「いやー昨日の事思い出していてね」

『……それはもう言わん約束やろ』

「昨日は……最高だったぜ?」

『……あんな辱めないわホンマ』


 そう、俺は千狐さんを脅迫していた。

 ここで言う通りにしなければ俺は着いていかねーぜ? ふふ、分かってるな? なーに、じっとしてりゃーすぐ済むからよ。ほら、力抜けって。


 モフモフ……。

 モフモフモフモフ……。

 あぁ^~心がぴょんぴょんするんじゃぁ^~


 っていうね。


『あんなサービス最初で最後やからな』

「まぁこうやってマフラーしてくれてるだけでもモフれてるから」

『ワイはこうしてんのが落ち着くんや』

「利害の一致って素晴らしいじゃない?」


 旅用の食料屋を探し出し、さっきのお釣りでそれも購入。改めて思うけど、お金って本当便利。これがないだけで白フンに羽織でダンジョンに行くハメになりますからね。マジ大切っすわ。


「さて、マリアさんのトコに寄ってからパイセン回収しに行きますか」

『なんやそんなサッパリな出発でええんか?』

「え、友達少ないんで……」


 イチイチえぐらないでくれませんかね? べ、別にファッションだけですごい目で見られてて、親が子供にさ、あれなにー? コラッ、見ちゃいけません。とかしてたのも全然気にしてませんから。


 ストレートにキモーいとか言われてたけど気にしてませんから。本当に気にしてないんだからね!


 そもそもノーパンからあんな服装に変わったら変態がネオ変態にジョブチェンジした様なもんだからね。そりゃ避けますって。俺も秒で50メートルは距離を取りますから。


『ワイはあのスタイルも嫌いやなかったで』

「千狐さんさァァァァァん」

『まっ、ちょ、鼻水はやめーや、あかんて!』


 グスン、優しさが首に沁みるぜ……。




 ______




 リアルな話、一応考えはした。

 突然放り出され、あれよあれよでパワーアップ。それが神の思惑通りか否かは分からないが、それに関しては結果オーライ。そしてそこにしかフラグが立っていないが故に行かざるを得なかったダンジョン。


 ダンジョンに用意された露骨なフラグ。それを回収したら見事に次のフラグが。しかも回避しやすいフラグを好奇心で選んでからの不可避のフラグ。


 話が出来過ぎてる。


 とは言え、やはり今取れる選択肢はそれ程多くない。少なくともここでパイセンと千狐さんをダブルで失う理由もない。若干、大切にする理由もまだ薄いっちゃ薄いがパイセンには恩がある。今はそこに素直になるのが一番かなという結論だ。


 この能力を得てから木に登って辺りを見回したりもしてみたが、明らかに日本の雰囲気どころか、同じ地球である気配すらない。


 これが夢なら覚めるの待ちなんだけどな。

 うーん、なかなか判断が難しいところ。

 ガチなら本当は情報収集と能力把握からの修行がセオリーだけど、夢オチされるならそんな気にもなれない。


 とは言えだ、今の段階であまり悩み過ぎても仕方ない。能力値的にいきなり即死って事も無くなった事だし、暫くは成り行きに任せてみようと思う。



 ___________




 さて、そんなこんなでマリアさんへの挨拶は完了。普通にガチ泣きで焦るわ本当。気をつけて行くのよとか、困ったらすぐ戻っていらっしゃい、とかね。筋骨隆々なオカマ口調の超絶マッチョなんだぜ? 見た目で判断するのが愚かだと痛感しましたわ本当。初見の時は完全に詰んだと思ってたのに分からないもんですよコレ。


 まぁそうあれこうあれ準備も整ったので一先ず昨日パイセンと別れた場所を目指して歩みを進める。多分そこからあっちに進んで行ったから向こうだとは思うんだけど……お。どうやらお二人さんも今ご到着の様子。ナイスタイミング。


「おーい、パイセン……とソルティー姉さん」

「……ソレイユよ」


 どこか諦めた様にため息をつきながらそう答える姉さん。何というか、むしろ何とも言えない表情をしておられる。


「言いたい事は色々あるけど、妹は既に決心してる上に私の子守なんて必要ないレベルになってるわ。そこはもう貴方に任せる」

「え、別に任せなくてもパイセンは俺の命の恩人ですしおすし。気にしなくてもちゃんと大切にしますんでその辺は全然オッケー」


 そう、パイセンはどこまでいっても俺をブルンブルンのオークから守ってくれた大恩がありますから。そこは良いんだけど、まだ何か燻っているご様子。スリーサイズなら教えてませんよ?


「それはどうでも良いわ」


 な、心の声が読まれた……だと?


『何が心の声やねん。普通に漏れとるわ』

「デジマ? さーせん」


 成る程、漏れてましたか。まぁ漏らすのは得意だからしゃーない。とは言えちゃんと気をつけてないと俺の極秘情報であるスリーサイズが……。


「ねぇ……これだけ聞いて良いかしら」


 どうもスリーサイズはどうでも良いっぽいな。ならば何が聞きたいのですかね。


「何ぞい?」

「貴方、何者なの?」


 またストレートに答え辛い質問を……。これってさ、ちゃんと答えてもなお信じて貰えないパターンすらあり得るやつじゃん。うーん……よし。ここはもう適当にはぐらかすか。


「オッスオラアンダーソン! オタクガチ勢だ、よろしくな!」

「そういう事じゃないのよ、分かってるでしょ?」

「ならば姉さんがそもそも自身の立場を隠している件についてはどう思います?」


 ウッ、と。姉さんは表情を曇らせる。パイセンが他所者な以上姉さんもそりゃね。それにこんな身なりの綺麗な姉妹がいくら国のピンチとはいえ単独で逃されますかね。どんなポジションならそうなる訳? その上なんか二人ともその辺りを意図的に隠してる節もありますし。もうね、そこは両成敗で落とせませんかね。


「……そうね。お互い様……か。お互い、いつか気兼ねなく言い合える様になれると良いわね」


 ふぅ、何とかイーブンに持ち込んだぜ。向こうの話には興味ない上にこっちの話には中身がありませんので、分かり合える時とか来るのかな? うーむ、謎は深まるばかり。中身スッカラカンでマジ申し訳ない。神さまの凡ミスでオタクがウェーイとか信じれます? これで全部なんだから話す価値ないってマジで。因みに俺はまだ半信半疑です。


「まーパイセンが何とかしてくれますって」

「それも強ち、夢じゃなくなって来ててちょっと笑っちゃう。……頼むわね、アンダーソンくん」

「言われなくともその辺りは安心してちょ」

「……ありがとう」


 まだ少し信用しきれていない赴きな訳だがこれはもう仕方ない。と、ここで漸く姉さんの陰に隠れていたパイセンがひょっこり顔を出した。パイセンは今日もちっちゃくて可愛らしい……ん?


「あら? パイセン今日はあの戦士スタイルじゃないんすか?」

「……本当は不本意だったの、もう無理する必要もないでしょ?」

「そりゃそーだ」


 胸当てとも言えない様な軽い防具とズボンが同じカラーで、色味は黒をベースにしているが部分的に赤いラインが入っている。腰にはポーチみたいな、少しだけ容量も加味された雰囲気の荷物入れ。


 肩からは白とピンクの丈の短いコートを着ておられる。コートは長袖なのだが、丈の短さは胸元くらいまで。へそ周りが完全にフリー。


 装備は……二刀流なのかな。二本の剣が背中でクロスしておられる。パイセンはこういうのが好きだった訳ですか。


「……どう?」

「超かわいい」

「べ、別にあなたに褒めて貰いたくてコレを選んだ訳じゃないんだから……勘違いしないでよね」


 フン、と。プイッと顔をそらして向こうを見てしまった。どうやらパイセンは今日も元気にツンツンしておられるらしい。やれやれ、このツンデレ感が素晴らしいからこれはこれでもう放っておこう。


 なんで本人はそこに萌えられてる事に気付かないんですかね? そういう仕様なの?

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