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もしかすれば、私が今、ここに居る事が世界へ何かしら影響を与えたのかもしれないと思った。
それだけ私は特殊で、普遍である世界となじめていないと自覚している。
『こわ…い。』
真っ赤になっていく空を私はじっと見つめていた。
むしろ、恐怖に支配された私は恐怖の原因から目を逸らす事が出来なかった。
そして自然と言葉が漏れた。
『綺麗…。』
『え…。』
私は自分の言葉にも恐怖した。
紅い空を見て綺麗と漏らしたのだから当然だろう。
ここから私の思考が悪い方向へ、悪い方向へと進んでいく
あの空から、私の知る世界が終焉をもたらされるのだ。
それを回避する、逃げる術は存在しない。
『拓真は怖くないのかな。』
ふと意識があの少年、拓真へ向いた。
あの体の小さな少年は今、どこで、どう思っているのか。
『面白かった、かな。』
いろんな色を知った。
いろんな人を見た。
いろんな匂いを嗅いだ。
『いろんな…。』
今まで私が知った事はとても興味深いものばかりだった。
もし可能なら、許されるのであれば、私はもっとそれを知りたい。
それを願って、私は再び上を見る。
――すると紅から黒へと様子が変わっていた。
その光景を見たとき、私は世界の崩壊を悟った。
これから私の『私』という自我が崩壊する。
『私』という存在が消え、『拓真』の存在も消える。『あの人』も消えてしまうのだろう。
『――。』