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私の世界  作者: 友菊
第一章 今日・明日・昨日
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『けど、明日があるみたいな言い方してたし…。』


 私の中で思考が交差する。

 美咲は『明日、おーぷん』だと言った。

 オープンというのは私には分からない。でも何かをするのだろう。

 何かをするのなら、明日という存在が必要になる。


 そして今のこの状況、昨日と何も変わらず空が紅くなる。

 それは明日があるから同じ状況が生み出されているのではないかと私は考える。

 短絡的に物事を考えすぎた。

 あの人の言葉を素直に受け止めすぎた。

 『明日、おーぷん』が明日の存在を意味しているなんて。

 事実、こうして世界が終わるまでを眺めているような今が最も恐い。


「今日も終わりかな。」


 その時に美咲の声がした

 昨日の通りなら作業を終え、もうすぐどこかへ行ってしまうのだろう。


『どこかへ行かないで…。』


 私はこの時、私の本心が出たことを悟った。

 終末を私一人で過ごさないために、あの人を巻き添えにしようとした。


『いや…。』


 私の中で悲しい感情が溢れる。

 私に罪悪感を残し、暗い絶望のふちに落ちていく。

 そんな気がした。


「うーんと、終わってないしなぁ。泊まるか。」

『泊まる…?』

「ここで寝るとこあったかなー。」


 美咲はそんな風に言いながらまた奥へと行ってしまう。

 そんな何気ない発言でも、私に美咲に救われた。

 というよりも、欲望の通りに彼女が動いてくれたというべきだろうか。


『私ってだめね。』


 そんな私の強欲さに嫌気がさす。

 それほど私にとって今の世界というのは重要で、尊い。


「カーテン閉めないと。」


 美咲が昨日の通り、私の前にある透明な板から世界を遮断するために布を伸ばす。

 カーテンと呼ばれるそれは板の向こう側の世界と、こちらの世界を分断するのにちょうど良いものだった。


『あの丸いの、見たかったな。』


 唯一、昨日との相違点があった。

 カーテンとカーテンの隙間が無い事だ。

 私は昨日見た、丸く輝くものをもう一度見たかった。

 しかし、閉じてしまった今では見ることが出来ない。


「じゃ、バイバイ。」


 私の横から美咲の声がする。

 カチっとあの音も鳴り店の、私の空間が暗くなるはずだった。


『ちょっと、明るい?』


 昨日はもっと暗かった。

 だから今日もそれくらい暗くなるものだと覚悟していた。

 しかし、それは良い意味で裏切られた。

 その裏切りを私は何度でも受け止める。


『なんだか、優しい色。』


 しかも、店の中の色が全体的にオレンジかかっているのが分かる。

 そこまで明るくないものの、色味のせいかとても優しく感じる。

 私はこの色が好きだ。すぐに分かった。


『でも、あれが無いとなぁ。』


 しかし、空が見えない。

 昨日ならば布と布の隙間があったのに、今は無い。

 それは世界の結末を見れないも同義だ。

 どこかしら怯えている私も居れば、知らないことを知れるという事に興奮している私が居た。


『でも恐いなぁ。』


 美咲の言葉を信じないわけではない。

 しかし…。しかしなのだ。


 ゆっくりとした空気が空間を漂う。

 それが永遠に続き、私の緊張も徐々に高まる。

 静まり返った空間で私一人。

 否、美咲と二人。

 そこに少しではあるが安心する。


 ゆっくりと流れ、流れ、流れ。


 漆黒の世界から赤い色が溢れる。


『眩しい。』


 私が昨日感じた以上に眩しい光をカーテン越しに感じる。

 初めて感じるその光は、目に入るととても痛い。

 しかし、その光の輝きが漆黒を凌駕し、明日という存在を現実のものにしてくれる。


『明日が、来た。』


 私はその光ですぐ分かった。

 あれほどに待った、『明日』が来たことを。

 私は静かに歓喜に震えた。

 今、この瞬間に存在出来ているこの幸せに。


「やるぞぉ!おーー!」


 その光をカーテン越しに浴びている時、美咲も奥から出てくるのが分かった。

 そして、初めて嗅いだ花――チューリップの香りに似た匂いを感じた。


『花…?それもたくさん?』


 そして次第にその香りは強くなる。

 知らない匂いが店に溢れ、違う空間に今の私は居るのではないかと錯覚させる。


「今日は忙しくなりそうだぁ。」


 その香りが私の横に沢山集まり、一部が私の空間から出た。

 カラカラと音を立てて、花が外に置かれたのだ。

 そして美咲がカーテンを開いた時、眩しい光が差し込む。

 すると、私の周りの光景がはっきりと見えた。

 私の周りにも、そして板の向こう側にも花で溢れていたのだ。。

 赤や黄、青い花もどんな色も探せば見つかる。

 それほど色鮮やかに彩られている。

 そしてそれらが意味するのは『おーぷん』だという事も私には分かった。


『特別、なんだ。』


 昨日と昨日の昨日、それらでも一切無かった光景だ。

 だからこそ、私は今日を大切にしようと思った。


「えっと、十時からだから…。」

『十時?』


 よくわからない単語だが、おそらくその時に『おーぷん』するのだと思う。

 私は花に囲まれて、その時間を静かに待った。


『え!?何、何があったの!』


 私が再び、目の前を見た瞬間の事だった。

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