旅たちの前、あるいは少女の願いと嘆き
彼にはいろんなことを教えてもらった。世間知らずどころか何も知らなかったわたしに、彼は色んなものをくれた。
いつの間にかそこにいて、気が付いたらわたしの心に住み着いていたあの人。
小さくて生意気で、それなのに離れたくない人。
ずっとずっと、一緒にいられると思っていて。
だけど、頭の中ではいつか別れなきゃいけないこともわかっていて。
わたしは今から旅立たないといけないから。こんなところで、くよくよしてはいられない。
いつかもう一度彼と再会するために。
げんやくんという、わたしの初恋を手に入れるために。
最初で最後の恋を叶えるために。
もう一度あなたと、一緒に生きるために。
わたしは、行かないといけない。
そしていつか、君と出会ったときは、また一緒に楽しいことをたくさんしたいな。
だから、わたし頑張るから……
……でも、
でも、……やっぱり、怖いよ。
だって、きっとわたしは、君のことを忘れてしまうんだもん。
覚悟を決めないといけない。
そんなことは、わかってる。
でも、だけど――
忘れたくない。
忘れたく、ないよ。
忘れたくない、嫌だ。嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない忘れたくない――――っ!
忘れたくな――――――――…………………………………………………………………………