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問、あなたの見ている世界は現実である――真か偽か。
結局のところ、これからあなたを待っている娯楽はこんな陳腐な一文で表されるものでしかない。
世界を救えるか、少女を守れるか、強大な敵に打ち勝てるか、組織の陰謀を止められるか。
そんな難しい話はしていない。ただ、目の前に広がっているものが現実なのか、夢なのか。真実なのか、虚構なのか。存在するのかしないのか。
――……くしろ! 血が…………いッ、
地球表面を覆うように張り巡らされた、電磁波と宇宙線の組み合わせによって作り出された異なる位相、異世界とも呼ぶべき、それ――共有夢たる『冥界』。
ああ、仮想空間とは少し違うよ? 見た目とか機能とか、そういうのはとても似ているけどね。ここはあくまでも夢の世界。データではなく人の心が歩く世界だ。
具体的にはオゾン層を抜けて降り注ぐごく微量な宇宙線に、特定の波長の電磁波を数種類当てることで、人間の脳内を行き来する電磁パルスが介入しやすいように調整されている一種の『界』ということになっているね。睡眠状態の脳と極めて近い波長で形成されたその不可視の世界には、脳波を少しいじくって同調させることで、意識と無意識を含めた全ての『自分』が入ることができる。便利で楽しそうだよね? でも、勘違いしたら駄目。
――……ッ、何とか……そう……ッ! ………ら!
非公式で隠された社会の裏側。そう――文字通り、表の現実からは隔絶された、裏の世界。その実態は戦場だ。2050年には、こうして夢の世界が戦場になっているんだよ。
時代は変わった。今は鉛玉なんて古い。奪うものは命ではなく精神。制圧するのは領土ではなく思想。
表では仲良しこよしをやっているように見えるけど、大衆から見えず、物理的な死の存在しない冥界では相も変わらず、人と人は争い合っている。殺し合っている。何を? ――心を。
でもあなたは、そんな戦場を新しい玩具に指定した。
人生を彩る娯楽として選んだ。夢の世界を。
――電気……ックを、……く! ……じ……ぶだ! よし、よし……!
というか、彼らうるさいね。静かにしていてもらおうか。……うん、これで大丈夫。
話が逸れたね、戻そう。
とにかく、だ。あなたはこれからそういうものに巻き込まれる。でも心配はいらない。これもあなたが好きな冥界の事件の一つに過ぎないだろうから。
さあ――人生最後のゲームを楽しんでね?