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歩み続けば  作者: 満足気
3/4

はじまりのこと その三

 詰所に着くと、先生はすぐさま門番へ話しかけていた。

 しかしどうやら、簡単には入れてもらえなそうだ。

 まあ薬売りの僧侶なんて身元も確かじゃないのだから当たり前。

 何より、先生は身なりが怪しさのかたまりだし。頭はほとんど禿げ上がっている割に、髭が濃いは、目が仁王のようにぎょろと出ているはで、怪しくないところはなかった。

 「いいから小川先生に話をとりついで頂けないか!」

 先生の声も、だんだん怒鳴り声に近づいてきていた。

 こめかみのあたりもひくひくとしている。

 助け船を出したほうがいいかな。

「先生、十部衛さまからのお手紙がありやしたよね?」

 そう言い言い、先生の薬箱を開けにかかった。

 怒る寸前の先生だったが、私の意見をお聞きするとけろりと神妙になり、薬箱を下ろして下さる。

 手紙は…下から二段目だったかな。

「下から三段目じゃ。」

先生が教えてくださったが、無視して下から二段目を開けた。

 あった。やはり先生の記憶はあてにならん。

「これに御座いますね?」

 先生が手紙を私の手から取り上げ、中身をご覧になる。

 これじゃこれじゃ、と言って門番に見せた。しかし、まだ門番は怪しんでいるらしい。

 どうやら十部衛さまとやらは、結構な商家みたいね。

 お上がこうしてさまざま取り調べているみたいだし、それに手紙を見ても簡単に納得はしないようだ。

「御親族の方がいらっしゃれば、お見せできませんでしょうか?」

 訊いてみると、門番はもうひとりの門番に耳打ちしてから中へ入っていった。

 耳打ちは多分、私たちが怪しい動きをしたら引っ捕らえろ、そんなとこだろう。

「ったく、何だってこんなに疑うんだ。」

 声を低めて先生が私に話しかけてきた。

 いや、私たちを見て怪しまないひとなんておらんでしょ。

 でも、しかし…

「十部衛さまって、如何な御方にございますか?」

 お上がどうも躍起になっているように思えます、と付け加えて、門番をちらと見る。

 私たちを(じっ)と見ていた。こころなしか、目も険しい。

「そうさな、まぁ繁盛はしていたが…」

 先生は黙り込んでしまわれた。なにか思うところがおありか。

「おい、そこが二人。貴様、名はなんと云ったか!」

 いつの間にか戻ってきていた先の門番が先生に向けて言った。

 先生は考え事をやめ、お答えする。

「治元と申します。」

「小川先生が入れて良いと申された。付いて来なされ。」

 お、本当か。良かった良かった。

 言うやいなや、門番は中へ入っていく。

 先生と私は薬箱を持ってすぐさま、門番に付いて行った。

 すると、もうひとりの門番が私たちの後ろへ着いた。私たちは挟まれた形だ。

 どうにも、物々しいね、まったく。



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