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女「パンケーキ♪」男「そのノリで混浴をネットに載せるんじゃないぞ」


女「(世界に自分だけしかいないという慢心。それは、傍若無人とは異なる)」


女「(電車の中でお化粧をするのも、優先席に座りながら電話をするのも、子供の遊び場の近くでタバコを吸うのも、傍らに人無きが若き行為であるが、恥ずかしいことではない。少なくとも本人たちにとっては)」


女「(誰がいるとも思わなかった。その後悔こそが恥の元)」


女「(夜道を一人で歩いている時に歌を歌っていたら、すぐ後ろに人がいると気づいた時のように)」


女「(ノートに好きな二次元キャラの名前を書いていたら、友達がニヤニヤしながら見ていたことに気づいた時のように)」


女「(いや、大学4年生に至るまでの過去の思い出を全て遡っても、それ以上に……)」




女「ふぅー!!解放―!!」


女「最高―!!」


女「健康―!!」


女「ちんすこう!!」


女「ここ沖縄じゃないけどね!!ははは!!!」


男「韻を踏んでたのか」




女「背筋が凍りついた記憶はなかったな……あたたかい温泉なのに」


/


女「…………」


男「…………」


女「…………」


男「…………」


女「……おはようございます」


男「おお、話しかけてくるとは。おはよう」


女「……今日もお早いですね」


男「そちらこそ」


女「まだ5時ですよ?」


男「真冬なら大事件の寒さだな」


女「7月ですが、普通誰もこんな時間に混浴に来ませんよ」


男「日本で二人くらいか」


女「そうかもしれないですね」


男「そりゃあ油断もするわな」


女「……何の話でしょうか」


男「いやいや、案ずるな。そちらの話だ」


女「やっぱり私の話じゃないですか!」


/


女「いたならちゃんとアピールしてくれればよかったのに!!」


男「5時からここに来る女がいるとは思わなかったからな」


女「風呂なしアパートだからしょうがないんです」


女「ほら、山の麓にある別の温泉、この前の地震で片方の温泉が使えなくなっちゃったじゃないですか」


女「普段男性客ばかり来る場所だから、修理が終わるまで、ほとんどの時間を男湯しか解放しないんですよ?」


女「男女平等だなんだと言うつもりはありませんが、この付近の風呂なしアパートに住んでる女性は時間合わせるの大変なんですよ」


男「男女は平等ではないだろう。男湯と女湯はその象徴だ。であればこそ、混浴はその矛盾を超越した究極の存在だと言える」


女「いきなり何の主張ですか」


女「あっちの温泉だって早朝も開いてますし、行きやすいからあっちに行けばいいじゃないですか」


男「俺はあそこの温泉には入れなくてな」


女「何言ってるんですか。男湯はあいてますって」


男「…………」


女「あの、いつも長めのタオルで下半身すっぽり隠してますよね」


女「も、もしかして……」


男「触って確かめてみたいか」


女「え、あ、す、すいません!てっきりあの!だ、大丈夫ですので」


男「安心しろ。ちゃんと付いてる」


女「ちょっと!!警戒レベル引き上がりましたよ!!!」


/


男「こんないかつい女もいないだろう」


女「人生の途中で性を変えたのかと思ったんですよ」


男「牛丼のようにこう言われる。ごつい、でかい、こわい」


女「確かにそうですね」


男「俺もそう思う」


女「中身はどうですか?」


男「さぁな」


女「意外と乙女だったりして」


男「冷徹な怪物だよ」


女「小心者で、怖いものだらけみたいな裏設定は?」


男「すまんがもうあがる」


女「すいません、怒っちゃいました?」


男「のぼせやすいんだ」


女「恋愛にも?」


男「乙女にしたてようとするな」


/


女「おはようございます。今日は私より早いですね」


男「性転換、か」


女「え、なんですかいきなり。まだ5時ですよ。いや、夜でも驚きますけど」


男「俺が本気で女になろうと努力をしたら、誰も俺が俺だとはわからなくなるだろうな」


女「そうでしょうね」


男「女湯にも入れるようになる。楽しめるかはわからんが」


女「そうですね」


男「女性専用車両にも乗れる」


女「そうですね。私は極力乗りませんが」


男「トイレはなんとなく真ん中の多目的トイレを使ってしまいそうだ」


女「あの、何の話ですか?」


男「男女は平等にはなりえないという話だ」


女「朝からテーマ重すぎません?」


/


男「昔から不思議に思っていた。どうしてホームレスは男ばかりなのだろうと」


男「概して男のほうが稼ぐ意欲があり、女のほうが稼ぐ意欲がないとするならば、どうして貧乏の最たるホームレスに女はいないのか」


女「それこのご時世に絶対SNSに書き込んじゃだめですよ。住所から小学校の頃に好きだった女の子まで特定されてお祭り騒ぎになっちゃいますよ」


男「どんな調査能力だ。いずれにせよ携帯電話もパソコンも持ってないから心配は無用だ」


女「ええっ!?もってないんですか!?」


女「ええ!!?ええ!!?」


女「えぇーーー!!!?」


男「そんなに驚くことか」


女「綺麗な景色とかおいしい食べ物とか珍しい出来事があったらどうするんですか!どうやって周囲にシェアするんですか!!」


男「現代っ子だな。それでだ、俺が考えるに…」


女「俺ってばついつい街の中にある銭湯ではなく、山の中の温泉にわざわざ足を運んできてしまうんだよなぁ。ああー!5時は誰もいなくて最高だな!まぁ、こんな時間にこんな場所に来るようなもの好きはそうそういないか、かっこわら」


女「ってできないんですよ!!」


男「俺は今日も手を大きく広げて山の中で自由を叫ぶ女に遭遇してしまった。これが証拠の写真です」


女「今日はしてないです!あげないでください!盗撮は犯罪です!」


男「話を戻すとだな、おそらく」


女「うぅ……私の綺麗なお尻は二次元の男の子にも見せたことがないというのに……」


男「ろくに見てないと言っただろ。すぐ目をそらしたさ」


女「ほんとですかねぇ。まぁ前髪も長いですしね。ごついのに」


男「ごつい男が坊主じゃないといけない理由でもあるのか」


女「それで、パンケーキがなんでしたっけ?」


男「全く話を聞いてないなこいつ……」


/


女「冗談ですよ。さきほどの話ですが、女性は男のそばにいるだけで価値があるから、男が養ってくれるんじゃないでしょうか」


男「内容はありきたりだが、凄い言い方だな。まぁ、俺も似たようなことを考えていたが。その価値観は周囲の男友達にシェアしないでおくんだな」


女「女子大ですから大丈夫です―。心配ご無用です―。SNSで女性専用車両と女子大アップロードしますー」


男「誰が共感するんだ」


女「そういえば、男子大って存在しないですよね」


男「行きたいやつがいないんだろう」


女「女子大は楽でいいんですけどね。湯上がりの軽い化粧でも気にせずいけますから」


男「そうか」


女「ここにも男はいるんだがな……ってやきもち気味に意味深につぶやかないんですか?」


男「わるいがのぼせた。先にあがる」


女「めんどくさそうに!」


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