死に至る罠(The Death-Trap)
英国の作家サキ(Hector Hugh Munro, 1870-1916)の「The Death-Trap」を翻訳したものです。
サキの著作権保護期間が既に満了していることをここに書き添えておきます。
《登場人物》
ケダリア公国の君主……ディミトリ殿下
クラニツキー近衛連隊の兵士たち……シュトロネッツ医師
ギルニッツァ大佐
ヴォンティエフ少佐
シュルツ大尉
舞台:―ツェルンにあるディミトリの居城、控えの間。
時代:―現代、劇中時刻は宵闇のかかる十時頃。
調度品のやや疎らに立ち並んだ控えの間。壁にはバルカン産の毛織物が幾枚も提げられている。部屋の中央には細長いテーブルが一台。下手には窓があり、その傍には酒瓶と杯の並んだテーブルが一台。部屋のあちこちに高い背の椅子が数脚置かれている。上手にはタイル張りの暖炉。舞台の中央には一枚の扉。
緞帳が上がり、互いに話し合うギルニッツァ大佐とヴォンティエフ少佐、シュルツ大尉が姿を現す。
ギルニッツァ大佐
「若様のあの様子を見るに、どうにも感づいておられるようだ。」
シュルツ大尉
「まあ、勝手に怪しませておきましょう。どうせ、すぐに解ってしまうことですから。」
ギルニッツァ大佐
「ふむ、そろそろアンドリエフ連隊が城を出る頃か。これで事を進めることが出来るというわけだ。」
シュルツ大尉(小箱から回転式拳銃を取り出し、そこにはいない誰かに狙いを定めながら)
「大佐殿、その時が来ましたら、殿下のために道を少し開けていただけないでしょうかね? まあ、そう何発も弾が明後日の方向に飛ぶとは思いませんが。」
ギルニッツァ大佐
「だが俺はコイツでやらせてもらおう。(腰の剣を中ほどまで引き抜き、そのままカチリと鞘に戻す。) 如何せん拳銃というのは好きになれんものでな。」
ヴォンティエフ少佐
「ええそうです、やりましょう。やるならトコトンやりましょう。しかし、殿下はまだあんなにお若い。それを思うと、あまりにも可哀想で可哀想で……こんなことなら大人を手にかける方がまだマシでございます。」
ギルニッツァ大佐
「少佐よ、好機とは見つけたらすぐに掴み取らねばならんものなのだ。いいかね、人は誰しも大人になれば結婚をし、後継ぎをもうける。そうなると、我々はその一族全員を皆殺しにせねばならんのだよ。だがしかしだ、今、あの小僧を一人殺しさえすれば、以後脈々と続くはずのケダリア公家の血脈を絶ち切ることが出来るのだ。そうすればこそ、我々はカルル殿下のために綺麗な王道を築いて差し上げられるというものよ。もし、ケダリア公家の血を継ぐ者が一人でも残ってしまえば、我らが偉大なカルル殿下が玉座に就くことなど夢のまた夢。」
ヴォンティエフ少佐
「わかりました……これが絶好の好機なのですね。ですが、叶うことなら、あの子を王の道から葬り去ってくれるのは私どもの手ではなく、せめて神様の御指が天の御国へ連れて行ってくれればよいのですが……。」
シュルツ大尉
「しっ、静かに! 殿下が来たぞ。」
(中央の扉より騎兵隊の制服を脱ぎながらディミトリが現れる。ディミトリはすぐ部屋の中に入り、小箱から煙草を取り出し始める。それから三人の兵士に冷ややかな視線を向けるのであった。)
ディミトリ
「待たずとも良い、退がれ。」
(三人の兵士は一礼して控えの間を後にする。最後に部屋を出るシュルツ大尉は、横柄な態度でディミトリを睨みつけてから、扉の向こうへ消えた。中央のテーブルに腰を下ろし、扉が閉まった後もしばらく扉の方をじっと見つめるディミトリ。すると突然、頭を抱え込んで苦悶し始めた。その顔に浮かぶのは一面の絶望………その時、扉をノックする音が聞こえ、ディミトリは驚いて立ち上がる。扉を開けて入ってきたのは、普段着のシュトロネッツ医師であった。)
ディミトリ
「おお、シュトロネッツ! 何たる僥倖、よく来てくれた。これほど嬉しいことがあるか!」
シュトロネッツ医師
「そう仰いますが、私の来訪を好ましく思わぬ者もいるようですな。殿下に面会しようにも、一筋縄ではいきませんでな。まったく、お身体の様子を診て特別な薬を拵えねばならぬというのに。それに、あの連中ときたら『新たな規則』などと言って私の銃を取り上げる始末でして……。」
ディミトリ(軽く笑いながら)
「連中はね、何かにかこつけて、武器になりそうなものは全て僕から取り上げようとしてるのさ。剣は研ぎ直しの最中で僕の手元には無いし、銃の方は清掃中だそうだ。懐刀もどこかに置き忘れてしまった。」
シュトロネッツ(顔に恐怖を浮かべて)
「な、なんと! ディミトリ様、そ、それは本当でございますか?」
ディミトリ
「本当だよ。ああ、そうさ、嵌められたのさ。思えば三年前から……そう、14歳の僕がこの公国を継いだときからだ。今日のため、この時のために僕はずっと連中に監視されていたんだ。知らず知らずのうちに、僕は罠に嵌められていたというわけさ。」
シュトロネッツ
「し、しかし彼奴らは殿下の護衛でございましょう?」
ディミトリ
「気付かなかったのか? 連中の服、あれはクラニツキー連隊の制服だ。奴らはカルル老公の寵臣じゃないか。砲兵たちも離反してしまったし、奴らの唯一の懸念だったアンドリエフ連隊もつい先ほど夜営と言って城を出ていった。ロニヤディ連隊の助けが来るのは一時間も後の話だ。いや、もっと遅れるだろうな。」
シュトロネッツ
「そ、そのロニヤディ連隊というのは信用できるのでしょうな?」
ディミトリ
「もちろんさ。だが、言ったろ。彼らの忠誠心がここに届くのは、1時間以上も先の話だって。」
シュトロネッツ
「デ、ディミトリ様、ここにいては殺されてしまいますぞ! 早くお逃げ下され!」
ディミトリ
「なあ、シュトロネッツ。ずっともう長い間……父上の代よりも前からだ。カルル老公もその取り巻きも、この玉座に座る僕ら一族を踏み潰そうとしていたわけだ。だが、そんな宿命にも似た諍いも、僕の代で終わりだろう。連中は鋭い爪をこちらに向けているんだ。その隙間を潜り抜けるなんて出来ると思うかい? あいつらは馬鹿だけど、僕を逃がしてくれるほど狂れちゃいないさ。」
シュトロネッツ
「ああ、こんな残酷ことがありましょうか! 殿下がそこらの椅子に腰を下ろすのも、話をするのも、チェスの駒と同じように、彼奴らの掌で踊っていたにすぎないというのですか!?」
ディミトリ(立ち上がりざまに) 「ああ、その通りさ、シュトロネッツ! けどね、嫌なんだ。死にたくない! この気持ちを分かってくれるかい? 臆病風に吹かれたわけじゃない。生きたい……ただそれだけなんだ。若者にとって、人生というのは恐ろしいほどに魅力的なのに、僕はその愉しみの欠片すら味わっていない。(窓の方へと歩み寄る。) ほら、見てくれ。あの幻想的で美しい山並みを、あの至る処に茂る青々とした木々を。グロードヴィツの森が見えるかい? あそこだよ、あの左奥の山さ。毎年ね、秋の終わりにはあそこへ狩りに行くんだ。あの山のずっと向こうに、ウィーンがある。なあシュトロネッツ、君は行ったことあるかい? 僕はね、一度だけ、あの街に行ったんだ。まるで魔法みたいな街だった。けれど、世界には他にも、まだ見たことのない素晴らしい街があるんだろう。ああ、死にたくない。生きていたい! 考えてみてくれ。今、僕は生きて君と話をしている。今日の今日まで、この古びた灰色の部屋で僕たちは何度も何度も語り合ってきた。けれど、明日になってこの部屋に残されるのは隅の赤い染みだけ。太った馬鹿な召使がそれを消すために床を拭く……そうだな、きっとあの角の辺りだろうね。(上手にある暖炉の側の部屋の角を指さす。)」
シュトロネッツ
「……宜しい、分かりました。だがしかし、冷たい血溜まりの中で無惨な死を迎えることはございません。彼奴らと戦う意志が無いのなら 殿下にこの薬を差し上げましょう。この鞄の中に入っているのは死の薬でございます。殿下に指一本触れる間も無く、速やかな死をもたらす薬にございます。」
ディミトリ
「お気遣い感謝する、いや、ありがとう友よ。さあ、連中が動き出す前に逃げるといい。奴らの手に掛かる前に、だ。だが、シュトロネッツ、これだけは覚えておいてくれ。薬を飲むつもりはない。僕は今まで人が殺されるところを見たことがないんだ。そしてこれからも、僕の目の前でそんなことが起こるなんてあってはならないのさ。」
シュトロネッツ
「ならば、私はここを動きませんぞ。そうしているうちに殿下の御前には二つの死体が捧げられることでしょうな。」
(遠くの方で進軍喇叭や軍楽太鼓の音が聞こえてくる。)
ディミトリ
「アンドリエフ連隊だ! 進軍はもう始まったようだな。これで連中も無駄な時間を過ごすことは無くなったということか!(部屋の隅の暖炉の傍で、ディミトリは緊張した面持ちのまま身を固く強張らせる。) おい、静かに、奴らが来るぞ!」
シュトロネッツ(突然、ディミトリの方に駆け寄り始める)
「殿下、妙案がございます! 上着をお脱ぎください! 早く!(シュトロネッツ医師はディミトリの上着を脱がせ、心音を診るようにして胸に耳を当てた。間髪を入れず、扉が勢いよく開かれ、三人の軍人が乗り込んで来た。シュトロネッツ医師は手を振って三人に静止を命じ、そのままディミトリの鼓動に神経を傾けた。それを見つめる三人の軍人。)」
ギルニッツァ大佐
「やあ、軍医殿。大変申し訳ないが、ご退室願えますかな。殿下に少し用がありましてな。ああ、火急迅速の用件なのですよ、シュトロネッツ殿。」
シュトロネッツ(周りをぐるりと見回しながら)
「生憎ながら皆様方、どうも私の用件の方が大事なように思われます。ええ、大変悲しいことですが、これも私の責務。義務は果たさねばなりますまい。貴君らも、殿下のためには喜んでその命を投げ打つ覚悟があると思いますが、しかし、その勇気を以てしても避けることの出来ぬ危機というがあるのです。」
ギルニッツァ大佐(困惑しながら)
「軍医殿、一体何のことを仰っているのかな?」
シュトロネッツ
「近頃、殿下は、どうにも心が落ち着かぬと仰っておりました。ですから、こうして私が呼ばれ、お身体のご様子を診ておったですが……ハア、私に課せられた義務のなんと冷酷で重苦しいことか……。実を言うと、殿下のお命はもはや後六日も無いのです。ええ、もう手の施しようがない状態でございます。」
(崩れるように、ディミトリはテーブルの傍の椅子に沈み込んだ。三人の軍人は途方に暮れ、互いに顔を見合わせた。)
ギルニッツァ大佐
「本当なのか。もし真実ならば、貴様の言うておることは、酷く重大極まりないことではないか。な、何かの間違いではないのか?」
シュトロネッツ(王子の肩に手を下ろしながら)
「私だってそう信じたい!」
(三人は再び顔を見合わせ、互いに囁き合う。)
ギルニッツァ大佐
「火急の要件と申しましたが、思えばそれほど急ぐ必要もございませんな。」
ヴォンティエフ少佐(ディミトリに向けて)
「陛下、神様が御手を差し伸べてくれたのですね。」
ディミトリ(たどたどしく)
「ひとりに、してくれ。」
(敬礼をして、三人はゆっくりと立ち去り、部屋を後にする。すると、ディミトリはゆっくり頭を起こし、そして弾機のようにバッと立ち上がった。扉の方へと駈け出し、そして外の音に耳を傾ける。そして歓喜の声を上げながら、シュトロネッツ医師の方へ向き直った。)
ディミトリ
「連中を騙すなんて、いや、驚いた! 実に素晴らしい妙案だ! シュトロネッツ!」
シュトロネッツ(ディミトリを見つめながら、静かに佇む)
「全部が全部、咄嗟の思い付きというわけではありませんよ。今日、この部屋に入って殿下の眼を見たときから、何か感ずるものあったのです。思えば、同じような目を、私は今まで何度も見ておりました。死の病に侵された病人はそんな目をしていたのです。」
ディミトリ
「切欠なんて、この際どうでもいいじゃないか。君が僕の命を救ってくれた、それで十分。ロニヤディ連隊ももうすぐ到着する頃だ。そしたらギルニッツァ一味も敢えて危険を冒すことなんてしないだろうさ。シュトロネッツ、君は奴らを騙し通したんだ。ギルニッツァたちを欺いてやったんだ」
シュトロネッツ(悲しげに)
「若様、私は騙してなどないのですよ……(しばしの間、ディミトリはシュトロネッツを見つめる。)あの畜生どもが今に殿下を殺さんと待ち構えているときです。そのとき私は殿下の本当の病気に気づいてしまったのでございます。つまり、先ほど私が下した診断は、嘘偽りの無い真実なのです。そうです、殿下のお身体は病魔に蝕まれております。」
ディミトリ(ゆっくりと声を上げる)
「嘘偽りの無い真実? なら、連中に言ったのは全部、本当のことだって言うのか?」
シュトロネッツ
「本当にございます。殿下はあともう六日も生きられませぬ。」
ディミトリ(苦々しく)
「一晩で、二度も死が二度も訪れるとは。死神が本気になったとでもいうのか? 勘弁してくれ!(熱っぽく声を荒げて) おい、どうして連中を止めた! こんな『いつ迎えが来るかも分からない』ことになるくらいなら、いっそ一思いに殺された方が良かった。(下手の窓に歩み寄って外を見つめる。そして唐突に振り返る。) シュトロネッツ! さっき教えてくれたな。この残酷な死から逃れる方法を、僕に教えてくれたよな。お願いだ、この死から……あの冷酷極まりない死神の手から僕を逃がしてくれ。これでも僕は一国の主だ。ただ死を待つわけにはいかない。あの小瓶を、僕に渡してくれ。」
(躊躇いながらもシュトロネッツは鞄から小箱を取り出す。そして、その中から瓶を抜き取るとそのままディミトリに手渡した。)
シュトロネッツ
「四、五滴で、殿下のお望みの通りになります。」
ディミトリ
「ありがとう。そして、さようなら。長い付き合いだったが、これでお別れだ。早く行ってくれ。君も見たろ、ほんの少しの間なら勇敢な君主でいられる……でも、ずっと勇気を振り絞り続けるのは無理だと思う。だから、君の記憶には、勇敢だった僕の姿を残してほしいんだ。僕にとって君は一番の親友だったよ、さようなら。さあ、行くんだ。」
(シュトロネッツは手を固く握り締め、腕で顔を隠しながら駈け出した。シュトロネッツが部屋を出ると、扉が閉まる。しばしの間、ディミトリは友が去って行った扉を見続ける。そして、ディミトリはすぐさま隣のテーブルへ歩み寄り、酒瓶のコルクを引き抜いた。だが、ワインを杯に注ごうとしたとき動きが止まった。まるで何か名案でも思い付いたかのように。扉の方へと歩き出すとサッと扉を開け、外の物音に耳を澄ませた。そして「ギルニッツ、ヴォンティエフ、シュルツ!」と声を上げ、例の三人を呼びつけた。ディミトリは矢継ぎ早にテーブルに戻り、瓶いっぱいの毒薬を酒瓶に注ぎ入れる。薬の瓶はポケットの奥に押し込んだ。そして、三人の兵士が入室する。)
ディミトリ(四つの杯にワインを注ぎながら)
「さあ、君たちの若殿下が崩御なさるぞ……公国万歳!(席に腰を下す。) 古くから諍いが続いていたが、その傷も今に癒されることだろう。なにせ、僕には跡継ぎが無い。ケダリア公の血を継ぐ者は誰一人としていないわけだ。そう、カルル老公の勝ちというわけさ。カルル殿下万歳! さあ、クラニツキー近衛連隊の戦士諸君、未来の君主様に乾杯だ。」
(三人の兵士は互いに顔を見合わせ、酒杯に口をつけた。)
ギルニッツァ
「陛下、私どもは仕え人ではありますが、陛下ほど勇敢な主君に見えることは今後二度とありますまい。」
ディミトリ
「ああ、そうだな。うん、実にその通りだ。なにせ、君たちが他の君主に仕える日は二度と来ないんだからな。そら見ろ、きれいサッパリ飲んでやったぞ!(杯を飲み乾す。)」
ギルニッツァ
「別の主に仕えることが無いとは、どういう意味でございますかな?」
ディミトリ(立ち上がる)
「教えてやろう。僕はクラニツキー近衛連隊を従えて、あの世へと進軍するのさ。今日、お前たちが訪ねてきたのは、僕を殺すためだろう?(三人は目を見開き、驚きに身を震わせる) だがご存知の通り、死神に先を越されてしまったというわけだ。いや残念、今宵の計画はみんな無駄に終わってしまった。計画倒れついでに、お前たちも死んでもらおうじゃないか。ああ、これで終わりさ!」
シュルツ
「酒だ! 毒を盛りやがった!」
(ヴォンティエフ少佐は酒瓶を乱暴に掴み取って、中身を調べ始める。シュルツ大尉は空になった杯をしきりに嗅いだ。)
ギルニッツァ
「くそっ! 毒薬か!(ギルニッツァ大佐は腰の剣を抜き、ディミトリに喰ってかかるように一歩を踏み出す。ディミトリは中央のテーブルの端の方に腰かけていた。)」
ディミトリ
「ああ、ご名答だ。お望みならもう一杯どうだい? この期に及んでまだ悪足掻きをしたいのなら、好きにやってくれ。お前が手を下さずとも、僕は死ぬ運命にある。病魔のせいであと数日の命だったが、僕もその毒を飲んだんだ。これでもうあと数分の命というわけだ。
(ギルニッツァ大佐はよろめきながらテーブルの上に剣を落とし、呻き声を上げ、仰け反りながら椅子に崩れ落ちた。シュルツ大尉は覆い被さるようにしてテーブルに倒れ伏した。ヴォンティエフはふらつく足で壁に寄り掛かる。その瞬間、生き生きとした軍靴の音が、進軍喇叭の音が、次第に近づいてきた。ディミトリは剣を手に取り、頭上高く振り回す。)」
ディミトリ
「アハハ! ロニヤディ連隊が還って来たぞ! 天よ、忠節なるクラニツキー近衛隊が一緒に御国へ向かいます。アァ、公国万歳!(狂おしい笑い声。) おい、大佐………ギルニッツァ大佐……死がこんなにも……愉快なものだとは……思いもしなかったぞ……。」
(地に倒れ伏し、死が訪れる。)
終幕
原著:「The Works of Saki」(1926-1927, The Viking Press)の第八巻「The Square Egg, and Other Sketches, With Three Plays」所収「The Death-Trap」
原著者:Saki (Hector Hugh Munro, 1870-1916) …
翻訳者:着地した鶏
底本:「The Complete Saki」(1998, Penguin Classics)所収「The Death-Trap」
初訳公開:2013年8月4日
再訳公開:2016年9月22日~30日, 11月3日