愛情の欠如
家に帰って、海斗は、紙に書いてあった文章を思い出した。
―そう思えば、ニコは愛情で成長するとか、書いてあったな。
そう思った海斗は、帰るなり、背広も脱がずにニコの所に行った。
「ニコー」
「にーにー」
「あっ!」
―元に戻ってる……。
言葉と、背丈のどちらも……。
しまった、と思ったが、もう後の祭り。そこから、また成長してくれるしかなかった。
とりあえず、海斗は、ニコを抱き上げて、頭を撫でてあげた。
「にー」
嬉しそうなニコ。その様子に、海斗は、少し安心した。
「そうだ」
海斗は何かを閃いた。
ニコを肩に置くと、
「ニコ、外に行きたくないか?」
「にー」
「よし、行こう行こう」
ニコを肩に乗せたまま、海斗は外に出た。
外は、夏。
蝉がジージー鳴いている。これはジージー蝉か。
カンカンな太陽に付けて、湿度のせいで、かなり蒸し暑い。
人々は、真夏のノースリーブを着ている者 や、
日傘を差している者、色々な暑さ対策をとっていた。
「あっついなあー、なあ?ニコ」
「なあー」
「お、お前、成長してるのか?」
「かあー」
そんなニコを見て、海斗は日頃の喧騒を忘れていた。
一時間もしないで、海斗はニコを肩に乗せたまま家に帰ってきた。
「暑かったなー、ニコ」
「あつー?」
「暑い、だよ、ニコ。言ってごらん」
「あー」
「お、それより、俺の名前、思い出せよ」
海斗はそう言うと、ニコをかごに入れて、
「かいとだ、か・い・と」
「かー」
「そうだ、言ってみろ」
「……かーと」
「お、結構言えてるじゃねーか?」
海斗は、根気強く教えていた。そして、ついに、
「かいと」
とまで言えてきた。
海斗の喜びようは無かった。いい、リフレッシュになったようだ。




