7 3人のつぶやき ~戦争準備~
伊吹の乗った小型航空機は小牧飛行場に到着した。伊吹は、小型航空機を降り、新瀬戸市へ向かった。そして、滝ノ水池に着いた。滝ノ水池には、一人の青年がいた。そう、カインのことである。伊吹は、青年に声をかけようとした。だが、その前に、青年が伊吹に話しかけてきた。
「伊吹純香さん、ですよね?あなたを夢で呼び出した者です。詳しい話は地下でしましょう。とりあえず、こちらへ」
青年はこう言うと、壁を指差した。伊吹が、壁をどうやって通ればいいのだろうと困惑していると、急に壁が消えて、扉となった。カモフラージュをして、外から気付かれないようにしているようだった。伊吹は、地下空間へと入っていった。伊吹は、南木が見た光景と全く同じ光景を見た。そして、同じように驚いた。かなり高度な文明が地下で発展しているようだった。
伊吹は、青年についていき、ある部屋まで行った。伊吹は、そこでさらにびっくりした。その部屋に南木がいたからだった。南木も、夢で呼び出されたのだろうか・・・。そんなことを考えていた。しばらくすると、青年よりは少し年上の男性が現れた。そう、ノアのことである。まず、2人は自分の名前を言った。そして、自らの過去のこと、伊吹がやらなければいけないこと・・・など、南木にしたように説明した。伊吹は、だいたい理解できたようで、協力することを承諾した。
「これで、2人の救世主、伊吹純香と南木千早が揃った。エデンよ、そしてアダムよ、いつでも来るがいい・・・」
と、カインは言った。
「緊急避難警報を発令します。日本国民のみなさんは、すぐに地下避難所へ避難をしてください。ちなみに、緊急避難警報発令により、ただいまより緊急避難特別法の適用期間となります。緊急避難特別法に違反している方は、解除後、処罰される恐れがあります。緊急避難特別法を遵守してください」
日本では、緊急避難警報発令を受けて、全てのテレビ局が総理大臣である醍醐 尊の会見を流していた。これは、日本だけではなく、世界中のどこの国でも同じだった。そして、地下避難所に次々と住民は避難していった。日本特殊自衛隊・アメリカ特別軍など、各国の精鋭たちが集まり、地球防衛軍がつくられた。総帥は、アメリカ特別軍のトップであるサラトガ・フォレスタルで、副司令官は日本特殊自衛隊総司令の初瀬 保一だ。地球防衛軍の本拠は、三鷹(日本)に置かれた。また、北京(中国)・マサチューセッツ(アメリカ)・ベルリン(ドイツ)・プレトリア(南アフリカ)・ブラジリア(ブラジル)・ニューデリー(インド)・キャンベラ(オーストラリア)に方面軍の拠点が置かれた。それぞれの大陸・地域に1つずつ方面軍を設置することで、地球を侵略者から守ろうとしたのである。拠点では、訓練が行なわれていて、いつでも出撃できるようになっていた。
「占領できるもんなら、してみろ・・・」
とフォレスタルはつぶやいた。もちろん英語でつぶやいたということは、言うまでも無い。
「エデン軍先鋒は、第1分隊と第2分隊に任せる。その後、我々も地球に向かう。第1分隊長ハデス、第2分隊長クロノス、分かったらすぐに出撃しろ。第1分隊は南アフリカから侵攻、海岸線及び周辺の上空を防衛しつつ、北上。第2分隊はサハラ砂漠に着陸、ヨーロッパ・アジアの軍を牽制しつつ南下。とにかく、アフリカ大陸を占領しろ」
マルスの命令に、ハデスとクロノスが返事をした。ハデスは、口笛を吹きながら司令室を後にした。クロノスは、上機嫌なハデスを見て、苦々しい顔をしながら、ハデスの後を追った。
ハデス率いる第1分隊は、圧倒的な戦闘力を持った分隊だった。それは、ハデスの力量によるものだった。しかし、彼には1つ大きな弱点があった。彼は、自身の功績を自慢し、他の分隊に対して強い態度で接したり、敵を必要以上に侮ってしまう傾向があったのである。だが、部下への接し方はいたって普通で、部下からは慕われている。アダムとマルスは、ハデスの弱点を知りつつも、その圧倒的な強さを生かすために分隊長にしているのだ。口笛を吹くという不遜な態度を許している理由もこれだった。そのためか、他の分隊長や兵士の間からは、「贔屓男」とかいう類の通称がつけられていた。クロノスも、ハデスの実力は評価しつつも、性格の悪さを嫌っていた。
マルスの隣にいた、軍のナンバー2であるケルビムがマルスに小声でこう言った。
「あの二人で大丈夫でしょうか?せめて、ハデスだけでも外したほうが、よろしいかと・・・」
ケルビムは、慎重な男だった。彼は、先鋒の司令官2人はあまり仲がよくないことを知っていた。その仲の悪さが、アフリカ攻防戦に影響するのではないかと心配したのだ。しかし、マルスは首を振りながら、こう言った。
「大丈夫だ。こちらの軍備は充実している。敵が我々の100倍の兵力だったとしても、勝てるよ。技術力の差は大きいからね。それに、先鋒隊出撃の10日後には、我々が向こうに着いている。心配することはない、ケルビム」
マルスの顔は、自信で満ち溢れてた顔だった。ついに、地球とエデンの戦争が始まる・・・。
次回予告
「長い長い悲しみの始まり ~初戦闘、技術力の差~」
ついに、地球とエデンの戦争が始まる。エデンが最初に狙ったのはアフリカ大陸。サハラ砂漠・南アフリカに、ハデス・クロノス率いるエデン先鋒隊が出現。南アフリカで待機していた地球防衛軍アフリカ方面隊と戦闘。その結果は・・・。
作者より:次回予告を入れることにしました。タイトルは予定なので、変更する場合もあります。更新頻度を上げたいのですが、なかなかモチベーションが・・・。まあ、飽きない程度にマイペースでいきますので、よろしくお願いします。
追記:南アフリカからサハラ砂漠・南アフリカに変更。計画性がなくて、すみません・・・。