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人類の希望  作者: 深紅色の烏
第1章
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4 伊吹純香 Ⅱ ~新瀬戸市へ~

「伊吹さん、時間がありません。手短に言います。私たちアーテナーに力を貸してください」

 山本とアーテナー次長の涼月すずつき 隼人はやとが、頭を下げながら、伊吹に協力を頼んだ。2人は、伊吹よりも20歳以上年上だったが、まったく恥ずかしいとは思っていなかった。人類の危機とも言える状況で、プライドを守ろうとするのは、愚の骨頂。それが、2人の考えだった。伊吹は、承諾の返事をすると、「Gates」の操作をするため、浅井についていった。

 「Gates」の操作は、いつもは2人で行なっている。非常時には、4人に増やしていた。今は、非常宣言が発表され、4人で操作を行なっていた。浅井は、本来自分の席であるところを空けると、伊吹に座るよう促した。伊吹は、先輩である浅井の顔をみて、少しとまどっていたが、いすに座って操作を始めた。操作内容は、情報を入力することだった。「Gates」は、情報不足では答えを出せないからだ。

 「Gates」を操作している4人の作業速度は、かなりのものだった。さすがは、アーテナーのコンピュータ技術者というところだった。浅井は、臨時操作席に座って、情報のチェックを行っていた。伊吹は、山本から協力を頼まれただけあって、他の3人を遥かに上回るスピードだった。しばらくして、伊吹が最後の情報を入力した。あとは、解析をするだけだった。

「情報の入力、完了しました!情報解析モードに切り替え、解析予想時間は10分程度です」

と、浅井が「Gates」の状況が表示されているモニターを見て、言った。伊吹は、席で休んでいた。他の3人も休んでいた。山本と涼月は、少しほっとしたような表情を見せた。これは、アテーナーの職員のほとんどが、「Gates」を信頼し、解析を全て任せているからだった。「Gates」は、「Finestre SC-2025(イギリス・フランス・ドイツを中心としたヨーロッパ科学研究共同体によって開発されたもの、Finestreを開発したミクロの協力のもとで行なわれている)」や「垓」などのどのスーパーコンピュータよりも優れている。アテーナーの職員の全員が思っていることだった。

「現在、35%解析完了、残り予想時間約6分です」

浅井が、現状を読み上げた。


 午後5時12分38秒―。今度は、山口・福岡・広島・島根だった。パニックを防ぐため、報道が規制され、松本と箱根の件は「調査中」としかニュースでは出されていなかった。しかし、全国に松本と箱根が壊滅したというニュースは、広まっていた。一部では、兵器による攻撃という情報も漏れて、広まっているようだった。しかし、関西は無関係だろう―、そんな思いが関西に住んでいる人たちにはあった。そんな中での、大きな揺れは、パニックを引き起こした。さらに、大分県を衝撃で発生した波が襲った。地震の津波のような波。人や家は、抵抗できるわけもなく、飲み込まれていった。


「大変です!山口県宇部市、壊滅しました!北九州市・山口市・下関市・防府市との連絡が取れません!さらに、衝撃による波により、大分県が被害を受けています!」

 アテーナー本部に、報告の声が響く。その声は、悲鳴とも怒号ともとれるような大声だった。山本は、さらに考え込んでいた。宇部市に何があるというのだというのか・・・。なぜ、大都市である広島や福岡は狙わないのか・・・。全く分からなかった。でも、1つだけはっきりしていること。それは、敵は何かを破壊する必要があるということだった。それが、松本・箱根・宇部にあった。だから、3つの場所が狙われた。そう山本は考えていた。しかし、それが何なのか、それはさっぱりだった。

「何だ・・・?何を壊そうとしている?何を探している?」

と、山本はつぶやく。しかし、つぶやいてもひらめかない。謎だけが広まるだけだった。


「伊吹純香・・・、新瀬戸市の滝ノ水池に来い・・・、今すぐだ。時間がない・・・」

 伊吹は、こんな声が聞こえたような気がした。しかも、何度も。かなりはっきりとした声で、焦っている男性の声だった。かなり若く、20代くらいの声のようだった。伊吹は、少し迷ったが新瀬戸市に行くことにした。浅井に事情を説明し、山本と涼月にもあいさつをして、アテーナー本部を出ようとした。しかし、出ようとした伊吹は一瞬立ち止まった。そして、考えてみた。すると、どうやって、愛知県へ行くのか―。その問題があることに気付いた。

 まず、東海道新幹線は、小田原・三島・熱海の壊滅により、不通となっていた。名古屋と岡山間での折り返しで、運行されているだけだった。さらに、東名高速道路も同じ理由で、通行止めとなっていた。

 次に、中央新幹線リニアは、点検のため、運転を見合わせていた。中央本線・中央自動車道も松本・岡谷の壊滅により、不通となっていた。

 残るは、甲府・富士を経由するルートだが、関東甲信越の鉄道のほとんどは、点検で動いていないのだ。もちろん、身延線も例外ではなかった。

 となると―、伊吹は一つの方法を思いついた。アーテナーの高速移動用小型航空機を使うことだった。そして、山本に頼んでみた。声の様子からして、この危機に関することだろうということも付け加えておいた。もしかしたら、危機から脱出する方法が分かるかもしれないとも。山本は、いいだろうと首を縦に振った。そして、部下の一人に運転させ、小牧まで送ってもらえることになった。伊吹は、航空機に乗った。


「移動し始めたな・・・。さて、もう一人も呼ぶとするか・・・」

 新瀬戸の美青年は、モニターに表示された伊吹の位置を見て言った。そして、別のモニターを見た。そこには、「南木みなぎ 千早ちはや」という名前と顔写真があった。


「くそっ!宇部でもなかったか!」

「アダム、これで手掛かりはゼロだ。振り出しに戻ったぞ」

アダムと呼ばれた男は、しばらく黙っていた。しかし、すぐに不気味な笑みを浮かべてこういった。

「フン・・・、まあいいだろう。カインとも決着をつけなければならぬ・・・。カインの死をもってな・・・。本格的に行動を開始しろ、頼んだぞ、マルス」

「分かった・・・。まずは、アフリカからだな。ガードが弱い。そして、そこを拠点としていこう・・・」

「カイン、そしてノアよ・・・。コスモスで貴様らがした行為の罪・・・。それを知るがいい・・・。そして、貴様らは必ず後悔するのだ・・・」

アダムは、そう言うと、大声で笑った。

ついに、敵の幹部の名前が明らかになりました。アダムとマルスです。由来は、言わなくても分かりますよね?


山口・福岡・島根・広島・大分県の皆様にお詫びを申し上げます。特に、宇部市の方には。庵野秀明さん、すみません。別に悪気はないので・・・。

(アレスの矢による攻撃を受けたところは、全てエヴァ関係の場所です)


次回は、南木千早について。カインがしたことが分かるは、もう少しあとになるかな・・・。

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