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人類の希望  作者: 深紅色の烏
第1章
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3 伊吹純香 Ⅰ ~頭痛~

 愛知県新瀬戸市の地下にある巨大な空間。その中に、1つの建物があった。建物は、高層ビルのような形をしていた。かなり大規模な建物のようだ。だが、中にいる人は、1人だけだった。青年が一人いるだけだった。部屋の中には、機械がたくさんあった。そこには、松本・箱根のデータが映っていた。

「ついに、この時が来たか・・・。人と地球は、僕が守る・・・。それが、僕の懺悔でもあり、使命でもあるから・・・」

 青年がつぶやいた。青みがかった髪、整った顔立ち、なかなかの美青年だ。そして、机の上に置いた写真と名前などの個人情報を見ていた。そこには、「伊吹(いぶき) 純香(あやか)」と書かれていた。

「伊吹純香か・・・。早く接触する必要があるな・・・」


 新東都大学の校門に、1人の女性が立っていた。誰かを待っている様子だった。仕事の合間に寄ったような感じで、スーツを着ていた。胸には、Athenaのバッチがあった。彼女の名前は、浅井あざい レイ。Athenaの技術部 システム課 課長 兼 「Gates(ゲイツ)(Athenaが独自に開発したスーパーコンピュータ)」総合責任者を務めている。新東都大学で、機械学を専攻し、大学でもトップクラスの成績をおさめたこともある。かなり優秀なコンピューター技術者で、山本からも信頼されている。

 浅井は、校門の前でしばらく待っていた。しばらくすると、浅井のもとに1人の女性がやってきた。大学生だろうか。20歳くらいの女性だった。その顔は、青年が見ていた写真と全く同じだった。

「純香、少し力を貸してほしいけど、だめかな?」

と、浅井は純香に言った。純香は、もちろんと承諾した。そして、浅井が乗ってきた車の助手席に乗った。


 女子大学生の名前は、伊吹純香。あの青年が見ていた女性である。新東都大学 機械学部 コンピュータ技術科を専攻している。コンピュータ技術に関しては、新東都大学一と言っても過言ではないほどの能力を持つ。浅井は、彼女の能力を高く評価している。彼女を高く評価しているのは、浅井だけではない。超電子計算機開発機構やつくば未来的技術研究所など、さまざまな研究機関が彼女を技術者として入所させようとしている。Athenaも、伊吹には目を付けていて、現在交渉を進めている。伊吹は、まだ自分は未熟であるとして、断り続けているが、浅井の頼みは、ほとんど承諾している。伊吹にとって、浅井は一番頼りになる先輩なのだ。

「うっ・・・・」

 車の中では、伊吹が手で頭をおさえていた。浅井が、あわてて車を止めるが、伊吹は大丈夫だと言った。そして、頭痛のことについて話し始めた。

「最近、激しい頭痛がするようになったんです。そして、なぜか地図のイメージがそのときに浮かびあがるようになって・・・、おそらく愛知県の新瀬戸市あたりだと思います」

と伊吹は言った。苦しそうに手で頭をおさえる。歯をくいしばって痛みに耐えているようだった。浅井は、伊吹に頼んだ仕事をやめにしようかと悩んだ。だが、今さら、なかったことにするのも、面倒だったし、伊吹もそれを望んでいないだろう。そう考えて、車を再び走らせた。


「浅井課長からの連絡です!伊吹純香が到着するようです!」

 職員からの声を聞いて、山本は立った。伊吹を呼んだのは、山本と浅井だった。これから、松本・箱根への攻撃の目的を「Gates」で計算する必要があった。その計算作業は、かなり複雑だった。そのため、浅井やシステム課の職員だけで行なってもいいのだが、少し厳しい。そこで、優秀な伊吹が呼ばれたというわけだった。

「そうか・・・、奴らの目的を早く知らなければならぬ・・・。なぜ松本なのか・・・、なぜ箱根なのか・・・、くそっ!全く分からん!」

山本がつぶやいた。



「カインは、どこにいるんだ!」

「分からん・・・、しかし、現在は宇部市が可能性としては高い」

「仕方が無い、アレスの矢を宇部市に落とすしかないな」

「ああ・・・、それしかない。早くカインを殺さねば・・・、我らの邪魔になってしまう!」

 敵軍の会議室にほ、こんな声が響いていた。

新瀬戸市・・・尾張旭市・長久手町・瀬戸市が合併してできた市町村。市役所は旧瀬戸市にある。現在、名古屋市との合併を協議中。


一応、イメージ的には、浅井がリツコで伊吹がマヤ(そのまんまです・・・)という感じです。レイは、綾波レイから。純香は、小泉純一郎から(もともと、苗字を泉として使う予定だった)です。

次回は、カインの謎が少し分かるかもしれません。

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