2 謎の目的 ~箱根、壊滅~
「本当に、北派でも自然災害でもないんだな?」
秋山が重い口調で、部屋にいた全員に確認をした。希崎が秋山の質問に代表して答える。
「はい、ほぼ100%ないと思います」
秋山は、希崎の言葉を聞き、しばらく目を閉じて考えていた。そして、目を開けて、こう言った。
「では、この爆発は、『太陽系外に存在する未確認文明による攻撃行為』と判断する。すぐに、Athenaへ連絡しろ!」
秋山の命令に、数人の委員が返事をし、電話をかけた。
国連直属の組織、特殊機関Athenaとは、地球外の文明との戦争の全てを取り仕切る組織である。東都大学の教授である森崎 秀樹が地球外に文明がある可能性を92%、そしてその文明のうちの45%が地球への攻撃を考えるとした研究結果を発表したことで、できた組織である。地球外文明との戦争においては、国家をも動かすほどの権限も持つ。本部は、東京都旧三鷹市にある。(三鷹市は、アテーナー建設のため消滅、住民は八王子市などへ移住した)なぜ三鷹市にこだわったのかは、まだ明らかにはされていない。かなり、謎に包まれた組織である。
そして、アテーナーの最高責任者である、総長の山本 権太を先頭に、アテーナーの職員が部屋へ入ってきた。連絡を受けて、霞ヶ関にある本部へかけつけてきたようだった。
「秋山委員長、本件はこれより、アテーナーの指揮のもとで調査等の活動を行ないます。あなたたちは、アテーナーの指示に従ってもらうことになります。よろしいですね?」
と、山本が秋山に言った。秋山は、承諾の返事をした。
アテーナーの職員は、危機管理対策委員会本部にある資料をまとめてダンボール箱に入れると、部屋を出ていった。最後に、山本だけが残った。山本は、
「とりあえず、危機管理対策委員会は、情報収集をお願いします。何かありましたら、三鷹のアテーナー本部へどうぞ。」
と言うと、部屋を出て行った。秋山は、それを苦い顔をして見ていた。
午後2時21分02秒―。再び強い揺れが、今度は東京・神奈川・静岡を襲った。危機管理委員会はもちろんのこと、三鷹のアテーナー本部も大きく揺れた。
「おい、確認を取れ!大田区、横浜市、小田原市、富士市、静岡市、相模原市だ!急げ!」
と秋山が大声をあげていた。すぐに、報告がかえってきた。
「大田区、確認取れました!」
「横浜市、応答しています!建物の損壊等です、大きな異常はありません!」
「だめです!小田原市、応答しません!」
「富士市、確認しました!」
秋山は、これらの報告から、中心地は小田原市周辺と判断し、この周辺の市町村に連絡をするように命令した。
「熱海市・三島市・沼津市が応答なし、伊豆市・伊東市・厚木市が応答ありです」
と報告がかえってくる。そして、秋山が派遣したヘリからの連絡が入ってきた。
「箱根町を中心とした半径約25kmの範囲がほぼ壊滅状態です!」
今度は、箱根だった。ヘリから映像が送られてきた。その映像がコンピュータの画面に映し出される。委員の多くは、画面を見て愕然とした。芦ノ湖は、完全になくなっていた。小田原も熱海も三島も跡形もなく消えていた。関東有数の観光地が一瞬にして消滅したのだ。おそらく、かなりの威力を持つ兵器による物だろう―。本当に我々はこの文明に勝てるのか―。秋山も希崎も、その気持ちが心のほとんどを占めていた。危機管理対策委員会の本部を重い雰囲気が包み込む。秋山は、この情報をアーテナー本部へ連絡した。
アーテナー本部、山本は、秋山からの連絡を聞いて驚いた。文明の兵器が予想以上の威力を持っていたからだった。それと同時に疑問も浮かんだ。なぜ、松本と箱根なのか・・・と。東京や大阪、名古屋、横浜とほかに大都市はたくさんある。しかし、謎の文明は、松本と箱根を攻撃した。次は東京だぞ、という脅しなのか―。それとも、松本と箱根に何かあるのか―。いくら考えても分からなかった。
とある場所の会議室。
「くそっ!箱根も違ったか・・・」
「残るは、宇部だな・・・」
「しかし、このデータは信頼できるのか?カインは本当に宇部にいるのか?」
「分からん、しかしやるしかない。カインは絶対に殺さなければいけない」
こんな声が響いていた―。
「ああ、その通りだ。カインが地球人と接触したら、厄介なことになる」
箱根、小田原市、熱海市、沼津市などの市町村にお住まいの方、申し訳ありません。ここも仕方ないんですよ・・・。エヴァンゲリオンで第3新東京市があるというのが理由です。でも、この物語はエヴァの世界が舞台ではありませんが。
アーテナー、登場しました。エヴァでいうNERVみたいなものです。エヴァ色が濃くなっている気がしますが、気にせずにいきたいと思います。なぜ、三鷹なのかは、永遠の謎ということにしてください・・・。
カイン。彼は何者なのか、それはこれから分かります。お楽しみに。