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人類の希望  作者: 深紅色の烏
第1章
11/12

9 皆殺し ~血に染まる避難所~

※一部残酷な描写があります。後半部分です。別バージョンは後日掲載します。

「フォレスタル、ケープタウンが陥落したそうだ。敵の科学技術や軍事力は、我々以上のようだ。ここは、普通の戦法では勝てない。何か考えた方がいいのではないか?」

 山本がフォレスタルに言った。フォレスタルは、うなずきながら、こう答えた。

「分かっている・・・。しかし、様子を見ないことには何も始まらん・・・。とりあえずは、向こうに任せる・・・。こちらが動くのは、それからだ・・・」

 フォレスタルも、ケープタウンの予想より遥かに早い陥落に驚いていた。そして、敵は、侮ってはいけない相手だと確信した。下手に動けば、全滅してしまう・・・。そこまでエデン軍を警戒していたのだ。だからこそ、様子を見て相手の戦法や兵器を確認することに力を入れていた。しかし、敵の情報はそれほど入ってこない。フォレスタルは、焦っていたのだ。


「上陸に成功したか。よくやった、ハデス」

とマルスは喜びの声を上げた。司令室の雰囲気もいくらか良くなった。上陸の成功にほっとしたのだろう。特に大きな損害もなく上陸できたのだ。上機嫌なマルスに、ケルビムがこう言った。

「この際、思い切ってアレスの矢を使用すれば、一気に片付くのではないでしょうか」

 アレスの矢は、松本・箱根・宇部に落とされたエデンが発明した爆薬兵器だった。汚染のない核爆弾のようなもので、核爆弾を超える兵器として期待されている。しかし、この兵器の製造には、莫大な時間がかかる。さらには、特殊な鉱物を材料としているため、製造には限りがあるというのが現状である。強大な威力を持つが、これからのことを考えると、無駄遣いはできないのだ。

 ケルビムの意見にマルスは機嫌を悪くすることもなく、ただ首を振りながらこう答えた。

「アレスの矢の製造には、限りがある。これからを考えると、ここでたくさん使うわけにはいかない。それに、アレスの矢を使わなくても、地球は占領できる。おそらくな・・・」

ケルビムは、最後の言葉にマルスが持っている警戒の気持ちを感じた。それは、カインへの警戒だった。カインが地球の人と接触したことは、既に分かっていた。しかし、カインの居場所はつかめていなかった。カインが地球占領を邪魔する可能性は、100パーセント。しかも、カインはかなり手強い相手だった。アダムから受け継いだ特殊能力スペックを持っていたのだ。これは、人が持つ潜在能力に対する制限リミッターをなくし、潜在能力をそのまま力として出すことができる能力だった。そして、この能力は、科学では解明できない現象を引き起こす可能性が高かった。カインがこの能力を使い、エデンの計画を丸つぶしにする可能性は、ゼロではなかった。マルスは、この点で不安を感じていたのだ。

 司令室にいた軍の事務官や幹部が一斉に敬礼をした。それは、エデンのリーダーであるアダムが司令室に来たからだった。アダムは、マルスの方にやってきた。アダムの顔には、わずかだが笑みが見られた。上陸成功を喜んでいるようだった。そして、

「よくやった、マルス。流石だ。それと、新たな命令がある。地球の住民を皆殺しにしろ。生命の木に必要なのだ」

とマルスに命令した。マルスは、皆殺しという命令内容に驚いた。しかし、生命の木に必要という言葉を聞くと、命令を受け入れた。完全なる不老不死を手に入れるためには、生命の木の実が必要なのだ。そして、マルスは完全なる不老不死を求めていた。今の状況は、老化しない不老だけだったからだ。確かに、衰弱死や老化はないが、ウィルスや細菌による病気や出血だと死んでしまう。このような不完全な不老不死だった。

 マルスは、ハデスにアダムから命令されたことをそのまま話した。ハデスは、上司に忠実な男である。もちろん、この命令に従った。


「アダム様からの命令だ。地下避難所にいる住民全てを殺害しろ」

 ハデスは、第1分隊に向かってこういった。第1分隊の兵士は、威勢のよい返事を上げて、了解の意を示した。しかし、兵士の中には疑問を持っている兵士もいた。なぜ、住民を全員殺さなければならないのか・・・。ほとんど情報が入ってこない兵士には、アダムの真意が分からなかった。しかし、少なくともこの行動は正義の行動ではない。正しい行動ではない。そう考えて、皆殺しに反対する人もいた。だが、彼らはハデスを慕っていた。ハデスからの命令だと思えば、どんな命令だって聞けるのだ。例え、「死ね」という命令だとしても。それほどにまで、ハデスを信頼する兵士たちなのだ。だから、反対を強く主張する兵士はいなかった。兵士同士の会話で、反対の考えを話す程度だった。

 その結果、住民は一人残らず殺害された。銃による殺害だと弾薬がもったいないということで、毒ガスによる殺害となった。しかし、この毒ガスは地球の人の一部には効果がなかった。そういう人は、銃による殺害となった。そのうちの1人に、南アフリカ人の新聞記者がいた。彼は、毒ガスでも死なない体質だったのか、助かることができた。そして、最後の力を振り絞って、地下避難所の電話を使った。電話回線は切断されていたのだが、一般的には公表されていない予備回線があった。これは、まだ切断されていなかった。その新聞記者は、予備回線を使い、方面軍の司令室へ連絡をした。そして、このような言葉を残したのである・・・。

「どうやら、敵は我々を生かす気はないらしい・・・・。全員殺害された・・・。私も、もうだめだ・・・。」

 この電話の後、新聞記者はエデン兵士の銃撃で生涯を終えた。赤い血が避難所の床に広がっていった。避難所は、ペンキで塗られたかのように、ところどころが赤くなっていた。床を埋め尽くすほどの死体が、避難所での惨劇を物語っていた・・・。


 この言葉に、方面軍の司令室の雰囲気が一瞬にして変わった。住民を皆殺しにするという非人道的な行為を許しておけるものか。軍人は、エデンを絶対に倒すという決意を固めたのだった。

次回予告

 「絶たれた道」※サブタイトルは未決定、後日追加します

ケープタウンを占領した第1分隊は、南アフリカ占領に向けて動き出す。第1分隊を3つに分けて、アピントン、ブルームフォンテーン、ポート・エリザベスをそれぞれ攻撃したのだ。そして、ブルームフォンテーンで起こった出来事とは・・・?

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