境界線
ジャンル受付所の窓口がわからずに、二人はただ立ち尽くしていた。
空気は重く、淀んでいた。
そんな二人に向かって、突然、明るい声が響く。
「お兄さんと、お嬢ちゃんこっちこっちこっち!二人の窓口は、うちだよ!ヒューマンドラマ!」
手招きしながら、職員がこちらを呼ぶ。
レイトンとミキちゃんは、反射的にその方へ足を向けた。
「うんうん、あのね。今のお兄さんと、お嬢ちゃんのやり取り見てたんだけど……それだけ二人の歳が離れてるのに、仲が良い所とかね、うちのヒューマンドラマにピッタリ!うん、うちでやりますよ」
職員は書類を手に取りながら、優しげに続ける。
言葉は温かく、まるで家族の絆を讃えるような響きだった。
「レイトン先生やった!私達の話が物語になる!」
ミキちゃんの目が、ぱっと明るくなる。
「あぁ、ミキちゃん!僕達の話が物語になる!」
レイトンもまた、目を輝かせて答える。
これぞ、ヒューマンドラマだ。
――だが、しかし。
「……ちょっと待って。その二人の窓口、うちなんじゃないの?」
一人の職員が、横から割り込んでくる。
二人はそちらを見る。
「絶対、コメディでしょ?今、二人が受付に断られたの見て、面白かったよ?それに、今、俺が来た事も面白くない?これってコメディでしょ? うちが担当だよ」
コメディ職員は、ヒューマンドラマ職員に向かって、にやりと笑う。
「いや、うちだろ? 自分で面白くなるって言ったら、それはもうコメディではないんじゃないか……?」
ヒューマンドラマ職員が、静かに反論する。
「いや、メタコメディとして成立してるじゃん?今、読者も、俺達に突っ込んでると思うぜ……?」
二人の言い合いが、徐々に熱を帯びていく。
言葉は飛び交い、ジャンルの境界線を巡る小さな戦争が始まった。
う〜ん、これはどっちの窓口が正解なんだろ……?
コメディ寄りになってきたのかな……?
レイトンとミキちゃんは、ただ唖然と、二人の職員を眺めているだけだった。




