報告書番号:10102 : 「天竜川を渡れ」(2) (WIP)
俺達、新兵達は初めて見る戦場に圧倒されていた。
「総員、集合整列!」
班長の号令が聞こえ、俺達は我に帰る。
そして、慌ただしく班長の下に集合し、一列に整列する。
班長は現場指揮官と話をしているが、内容までは聞き取れない。
二人の会話が終わり、班長は俺の方に向かって来る。
「中村、お前は第13分隊に編入だ。急な変更ですまん。」
班長が俺は新兵隊とは別になれと告げる。
そして、手短に申し訳なさを示す。
「えっ・・・!?」
俺は、状況が理解できずに、小さく叫んだ。
「お前が中村か。こっちに早く来い!」
現場指揮官が俺の事を呼ぶ。
「はい!」
その声に慌てて返事をし、指揮官の下に駆けつける。
「初の配属先が前線とは災難だな。
しかも部隊が「狂犬」の下になるとはな・・・。」
指揮官は何故か、俺の事を憐れそうな目で見ており、
その口から「狂犬」という、不穏な単語まで出てくる。
「斉藤伍長!」
指揮官が誰かを呼ぶ。
「はい!」
返事を返した人物は、自分より少し年上の様な強面の男だった。
その姿は、見た目以上の風格があった。
「彼が補充要員だ。後は頼むぞ。」
指揮官は、斉藤伍長に一言伝え、その場を後にする。
「・・・お前、名前は?」
斉藤伍長が名前を訊ねる。
「中村悟、二等兵です。」
俺は短く返事をする。
「お前さん新兵の様やが、入隊は何時や?」
斉藤伍長が入隊時期を聞いてくる。
「今年の一月です。」
俺は返事をする。
「はぁ・・・。確かに猫の手も借りたい状況やが、
まさか、ひよっこの坊ちゃんを前線に送って来るとはのぉ・・・
まったく、上は何を考えているんやか・・・」
斉藤伍長は溜息をついた後、この状況に対して悪態をつく。
斉藤伍長の呆れた様な態度と、彼の口から出た「坊ちゃん」という言葉が、
新兵訓練の時、陰口として散々聞いてきた為、その事を思い出し、
一瞬、俺の眉間が寄ってしまった。
「なんや、おどれ(お前)。儂に文句でもあるんか?」
斉藤伍長の顔が、俺の顔の手前まで近づき威圧する様に話しかける。
「いえ・・・。」
俺は、その姿に恐怖を感じ、小声で返事をしてしまう。
「ほな、しっかりと儂について来いや。解ったな。」
斉藤伍長は、自分に付いてくる様に指示する。
「はい・・・」
俺は内心不満で、覇気の無い返事をした。
「・・・解ったな!!ほな、返事!」
斉藤伍長は、俺の不満を見透かす様に、俺を睨みつけ、再度返事を促す。
「はい!」
俺は慌てて、勢い良く返事をし直した。
斉藤伍長は後ろを振り返り歩き出す。
俺は、彼の後ろを慌てながら付いて行く。
皮肉にも、その姿は、親鳥の後に付いて行く「ひよっこ」そのものだった。




