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9.おいおい、オレは-今度はどこに潜ればいいんだ?-

全43話予定です


曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)

※特に告知していなければ毎日投稿です


 マタルは研究所に戻っていた。研究所、つまりは共和国である。そこで雇い主からもらった情報を主任へと素直に話したのだ。


「という訳で同盟連合からしばらく動く気はないみたいだ。まぁ帝国と戦闘をした訳だし、帝国だって被害が出てるみたいだから、どっちもしばらくは動かないんじゃあないかな」


 ――実際、仕掛けるったってそんなに数がある兵器でもないしな。


 それを聞いていた主任は[ふーむ]と一言言ってから、


「きみはその道で生きてきた人間だろ? じゃあ動向を探るのはそんなに難しい話じゃあないんじゃないか?」


 と真顔で言ってきた。


「おいおい、オレは」


 情報屋じゃあない、とまで出かけた言葉を飲み込んだ。今やっていることは情報屋そのものだからである。


 そんなマタルは勘が効く。直ぐに、


「今度はどこに潜ればいいんだ?」


 と言ってみる。


 主任は、


「きみも知ってのとおり、先回の戦闘で共和国の人型は打ち取られてしまった。もちろん代わりを製作しているし、今度は人が直接操るタイプのものを考えているのだよ。だけど、お恥ずかしながらそれを補佐するコンピューターが、脳みそがまだ作れないんだ」


 と一つ区切りつけて胸ポケットから煙草を取り出して[吸うか?]尋ねて、マタルが[いただくよ]と口にしたのを見たあとに、


「ではどうするか。我々だってこのまま技術の発展がないままではいけないのはご存じの通りだ。実際に帝国も同盟連合も人型を運用している。それでも、少ないながらも戦闘データを確認したところ、向こうは攻守ともに優れているみたいだな。特に同盟連合は素晴らしいものがある、と思っている」


 とまた一区切りするために火のつい煙草を吹かす。フーっと煙を吐きつつ、


「コンピューターの事は専門家に任せればいいのだが、それだけではラチがあかないのもまた事実。ではどうするか」


 と煙草をマタルに向ける。


 ――おいおい、流石に研究所とかは無理だぜ。


 そんな考えが思い切り表情に出たのだろう、主任は[ハハッ]と笑って、


「まさか研究室に侵入しろ、とは言わないよ。言わないが、ちょっと調べてくれないか。帝国も同盟連合も、どんな風なのかを。それは配備数でもいいし、噂のようなものでもいい。もちろん」


「実際の[ブツ]が分かればなお良い、か。わかったよ、ただ、少しばかり時間はかかるかもしれないぞ」


 ――まぁね、二重スパイになった時点で小間使いさせられるのは分かってた話だし。この主任だって今は弄る[現物]がないんじゃあオレを遊ばせておくのも勿体ないだろう。それに、オレは部外者。いつだって切り捨てられる、とくれば。


 いわゆる[外回り]をして来い、主任はそう言っているのだ。


「前にも話したが、この国の人間は本当に使えないのが多いんだ。現状に満足してしまっていて、もっと前に出ようという気概が感じられない。腐っているのが多いのもまた事実。それならいっそ、私たちで何とか出来るものなら何とかしよう、そう考えてるのだよ」


 という主任の言葉の裏に、


 ――おいおい主任さんよ。出世という、あんたの本心が見えてるぜ。


 と思わせるくらいには本音が漏れ出ているというところか。


 だが、これはマタルにとってはある意味ラッキーともいえる。雇い主からは帝国の現状も調べろと言われているのだ、ここで缶詰よりはよっぽど有意義に時間を過ごせるものだ。何しろ大手を振って調べ物ができるという話なのだから、それは彼の[雇い主]のもう一つの依頼ともつながる。


「帝国と同盟連合。それぞれの人型の様子を調べりゃいいんだろ? 時間は少しもらうぜ」


 と返して、相手が[もちろんだとも。その礼も]と笑みを作るのを確認してから、


 ――どこから手を付けますかね。とりあえず、今の話で共和国はほぼ裏がないと考えて良さそうだ。これは一つ大きな成果だ。問題は、帝国か……。


 マタルはカンも効けはハナも効く。主任と話していて[これはウソを言っていない]のが分かるからこそ、もらった煙草をフーっと吹かしながらその先にあるものを見ていた。


全43話予定です


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