8.で、さっきの話だけど-ああ、奇襲があるかって話?-
全43話予定です
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「で、さっきの話だけど」
と、所定の位置について装備を展開したレイリアがゼロゼロに話しかける。
――何もないのが一番。でもそんなの虫のいい話だよね。
とレイリアに思わせるほどには帝国というのは、帝国領グランピア基地というのは一つ農村を挟んでいるとはいえ目と鼻の先にあるのだ。
レイリアにしてみればつい先日[肉親]を失ったばかりである。それは敵レイドライバーからの精密射撃でコアユニット、生体コンピューターともに必中で狙われたのだ。今だって落胆の感情がないわけではない。もちろん悲しかったし、一目でも会わせてくれ、とカズに頼んだくらいだから。
レイリアは、
[お願いします、何でも言う事を聞きますから一目会わせてください]
そうカズたちに懇願したのだか、
[いいかいレイリア。敵の弾丸は徹甲弾だ。そしてそれは威力が高い。そんなものが装甲の隙間を縫って直撃したんだ。それをきみは直視できるかい?]
カズは静かにそう言ってレイリアに聞かせた経緯がある。もちろんそれに納得はしていないが、カズの言うことだ、それ程に損傷が酷かったのであろう。それにレイリアには別の感情が生まれていた。
カズを絶対視し、持っているものは捨てる。そんな思想に傾倒していたからこそ、以前に機体の改修を受ける、という話が出た際も[私だけ第一世代のままでいいのか]と意見した事もある。そこにジャズリンお姉ちゃんの、弟のアレックスの存在がチラつかなかったか、と言えばウソになる。
それを差し引いてのカズへの発言。そしてカズという人間への傾倒である。今のレイリアなら、もしかしたら姉や弟に対して銃口を向けられるのかもしれない。そしてそれはすべてカズの為なのである。
「ああ、奇襲があるかって話? もちろん当の帝国さんは何を考えているか、それは私たちには想像でしかないけれど、あれだけの損害を相互に出したんだから、そりゃあしばらくはないでしょうね。それに話によると相手の機体を拿捕したそうじゃあない。そんな状況で[いざ進軍]なんてやったらどうなるか。相手だってむざむざ機体を失うのは痛いでしょうに。でも可能性はゼロじゃあない。それに共和国と接しているこの地は帝国だけじゃあなく向こうさんも相手にしないといけない。だから」
とまで一気に話をしたゼロゼロに、
「こうして警戒してるのも、念のためってことだよね。まぁ、それなら良いんだけど」
――何もないのが一番。でもね、それは難しいよね。だってここは戦場なんだもん。
と、どこかしっくりしない様子のレイリアなのだ。
そんなレイリアに、
「カズ君からゼロゼロは引き続き隊長機を任されてるんだから。それにレイリアちゃん言われたでしょ?[きみが隊長機だ]って。もちろん指示はカズ君から出るはず。でも、現場の判断はレイリアちゃんに一任なんだから」
とゼロゼロが言って聞かせる。もちろん副長としてクリスは存在しているが、隊長機を任されたのはし他でもない、レイリアなのだ。そのゼロゼロをしたってゼロワンの機体の話はあれから一切してこなかった。それはもちろん気遣いというものなのだろう。
だから、
「これで……良かったのかなぁ」
という言葉が漏れた時にはお互いが黙ってしまう。
――もちろん家族は大事なもの。なんだけど、何だろうこの気持ちって。家族よりも今はカズの事を考えちゃう。それってやっぱり。
「貴方もカズ君に染められちゃっているんだね」
そんな沈黙をどう捉えたのか、ゼロゼロがそう言ってくる。
「そうなのかも。家族は大事だけど、確かにあの時[なんで]って思ったけど、それは直ぐに[ああ、あたしには仲間が、カズがいる]って考えちゃったんだ。それってやっぱりイケナイ事なのかなぁ」
そう話すレイリアに、
「レイリアちゃんは確かに変わったのだと思う。それは悪いことではないんじゃあないかな。もちろん家族がいるのが一番いいことだよ、でもね、それ以上に仲間を、カズ君を頼れるようになったんだから」
レイリアはふと思う。それ程に、自分の中でカズという存在が大きくなっているのに気が付く。今までの彼女なら、もしかしたら今頃立ち直れていなかったかもしれない。そうそう簡単に[あなたの家族はたった今、死んでしまいました]と言われて[はいそうですか]とはならないだろう。だが今はどうだ? 極端な言い方をすれば[あたしにはトリシャや、クリス、ゼロゼロ、それにカズがいる。一人じゃあないから大丈夫]だと。事実、そんな風に思える自分がいるのだ。
――あたしの心は、ううん、あたしたちの心はもうカズのものなんだね。
ふとそんなことを考えながら、
「そうだね、みんながいる。カズがいる。それで全部が良いわけじゃあないけど、そう考えるようにするよ。ありがとね」
自分でもつい先日に肉親を失って、こんな直ぐに冷静な考えができるという事実に少し戸惑いながらも、
――どこまでがカズの思惑なんだろうか。それでもあたしはカズに全部あげるって言ったんだ、今はそれだけを考えよう。
レイリアはそう考えながら持ち場についていた。
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