7.帝国は本当に襲ってこないのかなぁ-ちょっ、まっ、-
全43話予定です
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その頃のアルカテイル基地といえば、ワンワン、ワンツーを中心とした二十四時間体制での警戒が続いていた。昨日の今日での襲撃はないだろうと、誰もが予想はしているものの[絶対にない]とは言い難いのもまた事実である。現に今回の戦闘で純粋な数の戦力差があるのは露呈している。帝国だって一秒たりとも追加生産の手を止めたりはしないだろう。
だから、
「ねぇゼロゼロ、帝国は本当に襲ってこないのかなぁ」
レイリア・ルーデンバッハは交代の時間なので機体に搭乗しながらも、いつも通りの運用前点検をそれぞれ行いながらゼロゼロにそう話しかける。
「ちょっ、まっ、パイロットの神経系を切断、レイドライバーの神経回路に接続……待っ……完了、サブプロセッサーとのリンク……完了、起動しました、待ってって。こっちはこの音声は自動読み上げなんだから」
とゼロゼロに言われる。
………………
今や最後の第一世代型であったゼロワンからコアユニット、生体コンピューターと呼称されていた自我のない脳みそががいなくなり、すべての機体が[サブプロセッサー]と呼ばれる、自我の、意識のある脳みそに置き換わった。三五FDIはまだ自我のないものを使用しているが、これにしたって順次入れ替わってくる予定でいる。それはこのゼロゼロという機体も同様である。サブプロセッサー、と呼ばれるその脳みそたちにはそれぞれ、現在は生体コンピューターと呼ばれている小型のコンピューターが例外なく埋設されている。
この生体コンピューターというのは非常に便利である。何と言っても[これがしたい]とひとたび本体である脳が思考するだけで、その演算をすべて行ってくれるのだから。もちろんこの操作には[慣れ]というものがあるが、それこそ戦闘中に火器管制を行いつつもレイドライバーの細かな姿勢制御をし、仲間と連絡を取りつつも想い人に心をはせる、なんてのも出来たりする。
そう聞くと利点ばかりに見えるが、埋設されている当の脳みそたちにとっては弱みも握られている。
一つは、思考ログの記録である。それは反逆の前兆を、ほんの少しだけ考えただけでもそのログがアラートとして然るべき人間のところに伝わる仕組みが出来上がっている。まぁ、もっとも、そんな思考すら出来ないほどに孤児院で[調律]という名の教育をされて実戦に出ているのだが。
とはいうものの、このゼロゼロだけは少し違う。それは前述のとおり、彼女が現研究員であり、カズにとても近しいところにいて、自ら望んでサブプロセッサーになるという道を選んだ人物だからだ。その彼女をしても思考ログは、閲覧制限がかなりあるにせよ取られているのである。
そしてもう一つは、すべてのサブプロセッサーは生体コンピューターからの指示に逆らえないようにできている。だから先ほどの話ではないが会話の途中でも起動プロセスの読み上げを[してしまう]のである。直近でいえばスリーツーの起爆がそれに当たる。彼女は自分の声でカウントダウンしながら死んでいったのだ。これは、研究所の人間たちがひとたびやろうと思えば脳の思考回路に生体コンピューター側から侵入、その思考を浸食することだってできる。何せ、それだけの脳の各部位にプリントがなされているのだから。
………………
「ゴメンゴメン、あたしもせっかちなのは理解してるんだけどね。それで、今は大丈夫になった?」
とレイリアに聞かれたゼロゼロは[もうちょっと待って]と起動シーケンス後の各センサー系をチェックして、オールグリーンなのをコックピットの正面モニターに結果を並べて、
「うーん、流石に帝国さんも立て直しが必要だろうし、今どうこうはないだろうね。何と言ってもこの基地にはケンタウロス型のワンワン、ワンツーがいるからねぇ。撃ち合いになれはそれこそ固いよ、この娘[たち]は」
ワンワン、ワンツーはケンタウロス型のレイドライバーである。制御にサブプロセッサーが
搭載されているのは間違いないのだが、
「んじゃあ、オレらは上がらせてもらうぜ」
「お疲れ様です」
「よろしく頼みます」
と無線でそれぞれが挨拶をしてくる。パイロットのアイシャとミーシャ、それにサブプロセッサーのネイシャである。三人、とは呼ばず二人と一個の存在は名前しか持っていない。それも偽名である。パイロットの当人たちには名前の記憶もなければ父親、母親の記憶すらほとんどないのだ。
そう、この機体には少なくとも三人の命がが関わっているのである。
「お疲れさまー。さてと、じゃあ行きますか」
そう言いつつもレイリアは機体をドックから移動させる。それくらいならサブプロセッサーに任せてもいいのだが[あたしも働きたいから]という理由で操縦をしている。
そんな彼女たちはこれから夜間から夜明けまでの八時間、全周警戒という緊張を強いられるのである。
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