40.帝国に行ってもらう事になったんだ-きみはパイロットという扱いになる-
全43話です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
「私が呼ばれたのは、帝国に貸与されるレイドライバーに搭乗するからとお聞きしました」
ゼロフォーがそう告げると、
「そう、きみはこれから帝国に行ってもらう事になったんだ。おそらく捕虜、という扱いになると思う。そして捕虜という扱いをするために……いや、それだけじゃあない。今までの功績が認められて、これからはきみはパイロットという扱いになる。階級も付くし、下級士官には命令権も与えられるんだ。そして名前も与えられる」
とまでカズは言ってから、
「いや、すまない。与えられる、んじゃあないよね。返してあげられるんだ」
と付け加えた。
――それって、私の本名を知ることが出来るの?
ゼロフォーには疑問符しかつかない。それはそうだ、今までさんざん[モノ]扱いされ、あまつさえ名前すら奪われて、命令には絶対服従を徹底されてきたのだ。そして彼女には十歳以前の記憶がない。それは過去に研究所が施した施術の失敗が原因だった。
………………
元々頭の回転のいいゼロフォーの頭脳を更に生かそうと考えた研究所は、言語野と呼ばれる部位には手を付けずに残して、海馬を通じて記憶野である大脳皮質に消去命令を書き込もうとしていた。
それは、おそらく職員たちの余裕からくる油断だったのだろう。一期生を育てている間に脳科学は本当に飛躍的に進化した。
自我のあるサブプロセッサーはゼロゼロが初であるが、その成功のあと直ぐにネイシャ以下のサブプロセッサーが作成されたのだから。
急速な進化の途中のほんのひと時の油断、それが事故を招いたのだ。そうして気が付けば、十歳の[赤ん坊]が出来上がってしまっていた。
本来なら実験の失敗は基本、廃棄である。
だが、カズがそれを止めた。
廃棄を止めたその真意は何処にあったのか、それはカズが[逆にチャンスだ]と思ったからである。廃棄ならいつでもできる。しかしながらゼロフォーは非常に優秀な頭脳というポテンシャルを持っている。ならばそれを生かせないか?
そう考えたのである。
カズは孤児院にゼロフォーを戻す際[この娘を五年半で使える状態にしろ]と命を下したのだ。
そのあとの、孤児院に連れて来られた当初のくだりはそれは大変なものだったという。
何と言っても身体は十歳、記憶はなく、言葉もろくに喋られない。そんな、文字とおり[赤ん坊]同然の娘を五年半でパイロットと同等のモノにしろ、というのだから一筋縄では行くはずもない。だが、今になってみれば、それを差し引いても余りある彼女のポテンシャルだ、という事だったのだろう。
幸い生理機能までは消去されてはいなかった。つまりトイレは自分で出来る、という事である。なので、先ずは言語の習得から始まった。
孤児院の、カズからその命を言い渡された職員は、それはしばらく生きた心地がしなかっただろう。期限付きで[赤ん坊]を[パイロット]にしろ、というのだから。達成できなければ自分がどうなるか。
だが大方の人間の予想に反して、ゼロフォーは次々と言語を習得していった。苦労したのは第一言語を覚える辺りまでで、それがクリアできる頃には第三言語まで手を付けていたし、言語が、意思疎通が出来るようになればあとは加速度的に進んだ。
だが感情までは戻らなかったのだ。
………………
そんなゼロフォーは様々な戦線を生き抜き、戦績を収めていった。それが政府軍部上層部、いわゆる[向こう側]の目に留まったのである。
「そんなきみに、今回の命を下したのはオレだ。不満かも知れないけど……」
「マスターの命に不満などはありません」
即答である。
――もしかしたら、ルーツが分かるかも知れない。
そう考えたのは事実だ。そしてカズが次にいう言葉は、
「名前が分かればきみの事だ、ルーツを知ろうとするだろう。そしてオレはそれを止められない。何故ならきみは既にサブプロセッサーではないからだ。反逆行為がない限り、人権こそないけれどパイロットにはそれなりの自由が与えられる。だけどルーツを調べるのは待って欲しい」
という内容だった。
――それはつまり、マスターはある程度の情報を掴んでいる?
当然の帰結だろう。それに対してカズは、
「きみの情報はある程度まで把握している」
と告げた。
全43話です




