39.只今到着しました-さてきみには一仕事してもらうよ-
全43話です
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ゼロフォーが研究所に着いたのは[襟坂]から連絡を受けてから三日後の深夜だ。トレーラーはいつものように偵察衛星をかいくぐりながら右へ左へと寄り道をして最終的にこの研究所の搬入口とも呼べるダミー工場へと入っていく。そこからスロープで地下へと降り、正面の整備ドックと一体になったエントランスへ到着する。
そこで直ぐにトレーラーから降ろされ、自身で整備ドックまで移動をする。
「只今到着しました」
研究所に備え付けられている回線で到着の旨を伝えると、
「待ってたよ」
ゼロフォーがカメラをズームすれば、そこにはカズがアイザックと共に手すりのある中段の通路で手を振っていた。
この区画には工場などによく見られる、高さがだいたい十メートルくらいの位置に壁面に沿わして手すり付きの通路が設置されている。その用途は様々だが、カズは整備ハンガーのあるここに来ると必ずと言っていいほどこの手すりのある通路に上る。
「とりあえず、積もる話はあとだ。きみはこれから機体を乗り換えるから、ハンガーに移動して」
とカズに言われたので指示通り整備ハンガーへと向かう。そこで文字通り衣服をハンガーにかけるか如く四肢をロックされる。ハンガーといえば重整備にも使用する、文字通り[レイドライバーを吊っておける場所]なのだ。
四肢がロックされると背中にある固定具がドッキングされる。これで例え両腕、両脚を外しても姿勢は崩れずに維持できるのである。今回はサブプロセッサーの移動だけが目的なので、無人のコックピットを開いて整備士がパイロットの座席部を外す。それと同時にゼロフォーはレイドライバーをシャットダウンする動作を継続していた。
レイドライバーは電気で動く兵器である。その駆動には内臓バッテリーを使用している。つまりは電化製品の、パソコンのようなものなわけである。当然コンセントを引っこ抜くような極端な事をすれば壊れてしまう。なので一つずつ回路を安全にシャットダウンしていき、最終的に主電源を落とすという流れになる。それを脳に埋設されている生体コンピューターが指示を出して[読み上げて]いくのである。
整備士がちょうどコックピットシートを外した時にゼロフォーの無機質な声で[全シーケンスのシャットダウンが完了しました]という声が響く。そうなればあと稼働しているものはゼロフォーの生命維持装置だけである。この生命維持装置というのは主電源を落としても稼働するように設計されている。逆を言えばサブプロセッサーというのはレイドライバーに搭載されている生命維持装置さえも停止しないと取り出せないのだ。
どうするか。
サブプロセッサーの外殻にはちょうど下の部分に、最低限生命を維持できるだけのサブパックのようなものがある。レイドライバーの背中にある脳髄液用の栄養パックからきた液体は、一旦このサブパックに貯留されて脳へと巡っていき、しかる時間が経過したのち排出される仕組みだ。そしてレイドライバー側の生命維持装置を切るスイッチはこのサブプロセッサーの収められているシートと併設されている。レイドライバーの生命維持装置をシャットダウンするという事は、サブプロセッサーに何某かの操作をすることが前提になっているのだ。
だから整備士はそのスイッチを切るためにパイロットシートを外したのだから。
スイッチを切るとゼロフォーの無機質な声で[これから生命維持装置を停止します、よろしいですか]という音声が流れる。それを聞き終わってさらにスイッチを一段ひねると、一瞬だけ[ピピッ]と音が鳴ってサブプロセッサー本体に付属のLEDのパイロットランプがゆっくりと赤色の点滅を始める。そうやって完全にシャットダウンが完了するのだ。
ゼロフォーは今まで乗っていた機体から降ろされて移動式の生命維持装置へと繋がれる。形は、昔のスペースモノに出で来るアレそっくりになる。
その一連の動作を見終わってからカズは下へ降りていき、
「お疲れ様、ゼロフォー。さてきみには一仕事してもらうよ」
と声をかけた。
そしてその声にラグなしで、
「はい、マスター」
とゼロフォーは答えるのである。
「とりあえず、一つずつ説明していこうか。まずはここじゃあ何だから室内に」
と言われて付き添っていたアイザックがゼロフォーを押して動く。自走式ではないので、必然的に誰かが押していかないといけないのだ。
しばらく行くとパイロットの着替え室に着く。ここなら整備ドックから近いし、誰も近づかない。パイロットの着替えを覗くなどという人間は既にこの研究所にはいないのだから。
そしてカズは改まって、
「きみに色々と話さないといけないことがある」
と切り出したのだ。
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