38.何かの罠、なのでしょうか?-クラウディア君、これから忙しくなるぞ-
全43話です
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その場のやり取りを一部始終聞いていたクラウディアにしてみれば、あまりに話がとんとん拍子に進むのが気に入らなかったのである。
だから、
「何かの罠、なのでしょうか? あの策士がそうやすやすと最高機密を開示するとは思えないのですが」
という返しになったのである。
――何か裏があるように感じてならない。
普段からクラウディアはクロイツェルに対して何か意見をする、というのはほとんどしないのだ。それはクロイツェルの方が優れているからというのが一つある。自分が考えるよりは責任のある立場の人間が実行に移すべきだ、というのもある。
だか、ここは帝国だ。帝国で上司に対して反抗心を示したなら、それは粛清の対象になりかねない。意見は、時に反抗とみなされる事がある。それが分からないクラウディアではないからこそいつもは黙ってるのである。
しかし、
「これは参謀閣下の作戦勝ちという結論でいいのでしょうか?」
と少しばかりごちてみる。
とは言っても疑問をいくら呈してみても、一度決まったまつりごとは変えようがない。それに当の本人が[満額回答だよ]と笑みを浮かべているのだ、クラウディアは、
――これ以上は藪蛇だ。
直ぐに思考に蓋をする。そうして今までやってきたのである。それは上官がクロイツェルでなければもっと顕著だろう。帝国での上下関係は絶対だ、それなりに階級差が出ればそれこそあらぬ罪を着せて粛清すら可能なのだから。そしてクラウディアは女性である。それ以上は言わなくとも分かるだろう。
だからクロイツェルという非常に理知的、かつ合理主義者が上官で良かったのだ。
「クラウディア君、これから忙しくなるぞ。しばらくは休戦するつもりでいるが、互いに機体を返却したと同時に仕掛けようと思っている」
と来た時には[あぁ、この方が上司で良かった]とクラウディアは安どしたものだ。
「だが、その前に同盟連合の技術とやらをしっかりと拝んでおこうではないか」
と言わたのを[はい、そうですね]と返してから、
――彼の、カズと言ったか、彼の本心は何処だ?
と独り推論を巡らしていた。確かにこちらは拿捕という形で自国のレイドライバーを同盟連合に取られている。いわゆる人質ならぬ[モノ質]である。ここに、同盟連合からレイドライバーがくれば一対一のイーブン。確かに二国間協定というブラフは既に見破られている。しかし、もしも共和国へのレイドライバーの貸与を反故にして欲しいだけなのであれば、何もパイロットは必要ない。それこそ[ガワ]だけ渡して[さあどうぞどうぞ]で仕舞いのはずだ。パイロットを乗せてくる意味が分からない。もしかしたら。
クラウディアはそこまで考えてから思考を止めた。たら、ればでものは測れない。確かに作戦を立てる際にたら、ればは必要だ。楽観視して作戦を立てれば、失敗したときのダメージが酷い。だが何度も言うがここは帝国である。そしてクラウディアは先日中佐になったばかり。一介の中佐風情がこれ以上何か言ってもから回るだけである。
――それに、責任を取るのは私じゃあない。
そう、今まではレイドライバーの隊長という責任があった。しかし、今回に限って言えば責任者はあくまでクロイツェルである。その彼が[良し]と言っているのだ。それに疑いこそすれど、現状では情報不足なのは間違いない。それこそ[来てからのお楽しみ]というやつである。それくらいの勘定が出来ないほどクラウディアは世間知らずではない。
確かにクロイツェルには拾ってもらった恩義を感じている。もしもあの時に連れて行ってもらえていなければ、今頃はその躰を売りに出されていたかもしれない。現に十四歳のあの時までクラウディアは裸で生活していたのだから。床が汚いといっては木の棒で殴られ、水汲みが遅いといっては地面に正座させられ重しを乗せられた。それはまるでオモチャを扱うかごとくだったのだから。
そんな過去を持つ彼女だからこそなおさら[立場を超えた意見]というものに強力に蓋をするのである。そしてここは帝国。それだけの条件が揃えば、二十三歳を少し過ぎた女性にしてみれば十分すぎる。
――私はいつからこんな風になったんだろうか。軍に拾われて、必死でついて行ってレイドライバーの隊長になって。今では隊長というよりは秘書官をしている。それでも本当の責任の取り方が分からない。これって無責任なのか……でも。
クラウディアはそれ以上の思考を止めた。考えるだけ無駄である。今を生きていかねば自分の未来はない。それが分からない歳ではないのだから。
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