37.で、相手は誰だ-腹芸は要らんよ。対等に話そうではないか-
全43話です
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ゼロフォーがこちらに向かっている最中、具体的に言えばカズの案で行くという話が決まってから直ぐに帝国は同盟連合に対して対談を持ち掛けられていた。
「何、同盟連合からだと?」
クロイツェルはその知らせを執務室で聞いていた。隣にはすっかり秘書官としてなじんだ感のあるクラウディアが横に立っている。彼女は先日、一階級上がってクラウディア中佐へと昇進したばかりだ。その彼女がホットラインで相手と話をし、クロイツェルへ取り次いだという訳である。最近はそこまでクロイツェルはクラウディアに対して、ある意味入れ込んでいるのだ。それはまるで[次のこの席はお前が務めるのだぞ]と言わんばかりである。
「はい、参謀にぜひともお話がある、と」
――ほう、名指しで来たか。という点からすればこの国のまつりごとを司っているのが誰なのか、あるいは偶然か?
そんな事をクロイツェルは考えながら、
「で、相手は誰だ」
と尋ねた。クラウディアは、
「それが……例のカズという人物でして」
「だろうな、今回の交渉事には多分、彼が出てくるだろうと思っていたところだ」
とクロイツェルに言わしめるほどにはカズも名前が知れたのだろう。それもいい意味、悪い意味両方で。
「繋いでくれ」
とクロイツェルが指示すると、
「クロイツェル参謀閣下殿、お取次ぎありがとうございます」
と妙に低姿勢のカズが出た。
「腹芸は要らんよ。対等に話そうではないか」
とクロイツェルが促すと[ではそのように]と一言置いてから、
「貴国は相変わらず固いですね、情報を集めるのにそれはそれは苦労しましたよ。本題に入りますが、共和国にはご興味がないご様子で?」
と尋ねてくる。クロイツェルはふと今までの経過を思い出していた。二国間協定、その釣り餌を撒いて一体何人を粛清して来たか。彼の見立てではこれでほとんどの[モグラ]や[邪魔な人物]を排除できた、と思っているし、それだけの数をこの一、二週間で亡き者にしてきたのだ。
それをして相手は情報を掴んでいる。これは、
――ちょっとばかり楽しんでみるか。
クロイツェルはにっと笑うと、
「いやいや、貴国とてそれは同じだろう。特にレイドライバー関係はまったくと言っていいほどに情報がない。我々からすればそれは悔しい話だ」
どこまで食いついてくるか。そんなクロイツェルの思惑に、
「ではこちらも腹芸はなしで行きましょうか。帝国製のレイドライバーの供与、それを反故にして頂きたいのですよ。もっとも、まだそこまで話は進んでいないと信じていますが」
と来た。
――これは……おぉ、正確に情報を掴んでいるようだな。
「そちらには優秀な人材が多いようだな、羨ましい限りだよ。正直、この国は大きすぎる。共和国とは別の意味で腐っているんだ」
クロイツェルは歯に衣を着せない。ホットラインだから一対一なのは分かるが、誰が聞いているとも知れないこの回線で堂々と自分の国を批判するのだから。
「おっと、そんな話をするのはまた今度でもよさそうだな。で、そちらはどこまで掴んでいるのかね」
と尋ねてみる。そんな質問に、
「どこまでか、と言われると難しいですね。参謀殿の頭の中が覗ければ一番良いのですが」
と返ってくる。それに対して[それは私だって同じだよ]と笑って返してから、
「では反故にする見返りというものが必要なのは理解している、と考えていいのかね」
と答える。相手は、
「ええ、もちろん。我々同盟連合は帝国に対してレイドライバーを一体供出します。煮るなり焼くなりとは言えませんが、調べてもらって構いませんよ。ああ、ただし」
と言ってから、
「その機体には兵士が乗っています。それも脳核だけの兵士が。尋問は構いませんが、拷問の類はご遠慮願いたい。この意味は分かりますよね?」
と来た。
――下手なことをすれば我々の機体を爆破でもしようという魂胆だな。では、
「もちろんジュネーブ条約にのっとって正式な捕虜として扱うと誓おう。見分が終わったら、ちゃんと元通りにしてからお返ししよう。その際に」
「ええ、もちろんこちらも今お預かりしている機体を返還します。それで貸し借りは無し、いいですか?」
最終確認の質問。だが、クロイツェルにしてみれは満額回答だ。
――なに、大陸からの[道]はまたあとでもいい。それよりも同盟連合のレイドライバーに触れられる。これはとても大きな一歩だ。
クロイツェルは[具体的な日時、場所は後日また詰めようではないか]と言ってその場を切り上げて、
「クラウディア君、これで少しは帝国も前に進めそうだな」
と隣で一部始終を聞いていたクラウディアにそう尋ねた。
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