36.私に、ですか?-これは所長命令なんだ-
全43話予定です
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
ゼロフォーがその話を受けたのはそれから直ぐ、ちょうど皆で行っている警戒態勢の交代時間を過ぎで[ふーやれやれ]と、人間でいえばコーヒーの一杯でも飲んでいるころだった。事実、疑似信号で紅茶を飲んでいたところだったのだ。
「私に、ですか?」
――なぜ私が?
その場にはマリアーナもいた。何と言ってもその話は交代直後、まだレイドライバーは起動状態にあったのだ。
「わたくしはどうなりますの?」
と尋ねてみれば、これが不要だと言われてしまう。つまりは暇を言い渡されたのだ。
「でもっ」
とマリアーナが食い下がってみても、
「これは所長命令なんだ」
と会話の内容の主である[襟坂]に言われてしまう。では肝心のマスターは? と言えば準備に奔走しているとの事だった。
「分かりました、伺います」
とゼロフォーが返したので、
「レイドライバー本体ごとこちらに向かって」
という指示が出る。それは万一を考えての処置である。
万一、アルカテイル基地周辺で戦闘が起きたらどうなるか。もちろんアルカテイル基地を放棄というオプションは取らないだろうし、まずもってして取りようがない。しかし、そこは万一に万一を考えての処置である。
ゼロフォーの機体は是が非でも知られてはならないのである。それは、ゼロフォーの機体が最新型だからである。そんなシロモノを敵の手に渡らせるわけにはいかない。かと言ってゼロフォー抜きで満足な起動ができるほどこの機体は、第二世代型であるこの機体は甘くはないのだ。
「取り合えず、細かい打ち合わせはこちらでするから、ゼロフォーは直ぐにでも来てもらえないかな」
そう言われてしまえば二の句は告げない。呼ばれた旨を皆に説明し、マリアーナを機体から降ろしてトレーラーに積まれる。それは直ぐに出発となった。
研究所まで一直線に行ければどんなに楽なことだろう。だが、現実はちょっと違う。
ここアフリカ大陸は二〇五〇年現在、最もアツい地域の一種である。昔でいうアフリカ大陸と言えば、お世辞にもそんなに発展はしていなかった。だが、三国に集約、その戦闘が各地で激化、その余波がここにも浸透して行きアフリカ大陸は別物へと変化したのだ。原住民族は殆どが死亡、もしくは難民化していき、元々彼らのいた場所には基地やら工場などが次々と建設されていった。その最たるものがジュケーと呼ばれる帝国の一大軍需産業地帯である。ここでは大陸の人間が進出してきて、それこそ日夜働いている。帝国のレイドライバーもここで生産されている、という話だ。
そんなアフリカ大陸の東側の突き出た一角にエルミダスが、その一歩内陸に核兵器で街の大半がいまだに核汚染にさらされているミラール市が、そこから更に西に入ったところにアルカテイル基地が存在している。研究所はエルミダス基地の近くの[どこか]に存在していて、その場所は研究所職員でしか知らないのだ。[人員整理]をして精鋭が残りはしたが、裏を返せば人員をそこらかしこに割けるほど余剰人員は残っていない。なので必然的にゼロフォーは一路エルミダス基地に向かう。そこでエルミダス基地付きとなっているトレーラーの職員にバトンタッチされて研究所に向かう手はずになる。
必然的に目的地までは数日はかかってしまう。
そんな中、暗号通信で[襟坂]が事の次第を説明してくれていた。
「マスターは?」
とゼロフォーが尋ねれば[彼にしか出来ない仕事をしている]との返答だった。
「どこまで話したっけ? 帝国と話を付けてレイドライバーを同盟連合から供出して、そのパイロットに貴方が選ばれたところまで説明したよね」
「まず、私がパイロットというのが信じられません。それは」
とまで出た言葉を、
「これは所長が決断した事よ。貴方は[自ら志願して脳だけの存在になり、レイドライバーという兵器を操っている、れっきとした人間なんだ]という事になったの。これは無事に帰って来られてからも変わらない処遇よ」
――私が、人間?
その時点で分からないことだらけだ。だが、マスターが自分を指名し、自分はこれから人間として敵地に供出される事だけはよく分かった。
「で、相手と上手く交渉して、出来るだけの情報をかき集めてきてほしいの。それこそ、バレなければネット系も駆使してもらって構わない」
と言われたあとに、
「それから重要な話をひとつ。貴方にはこれから名前が付与されるの。そして階級も。扱いも[躰のない人間]という存在になるわ。階級差によっては下級士官に命令権も与えられるの」
無線越しの[襟坂]はそう告げたのだ。
全43話予定です




